リクと別れてから、しばらくは虚無モードだったわたし。
でも、人間ってずっと沈んでるわけにもいかない。そろそろ次に進まなくちゃ──そう思っていた矢先、別のメディアで編集をしている男性から食事に誘われた。
仕事ぶりは真面目、評判もいい。いわゆる「ちゃんとした人」ってやつ。
「今度こそ当たりかも」なんて、一瞬だけ期待した。
……まあ、期待なんてだいたい裏切られるんだけどね。恋って。
そして始まったデート。ここから、わたしが体感した「いい人だけど恋愛対象にならない男」の特徴をシェアしていくわ。ふふ、ちょっと辛口かもしれないけど、真実だから許して。
出会いと第一印象
待ち合わせ場所に現れた彼は、スーツ姿で清潔感もあって、笑顔もやわらかい。
第一印象?……うん、「お母さんに安心して紹介できそうなタイプ」ってやつ。つまり、減点はない。でも加点も、別にない。
彼「待たせちゃったかな?」
わたし「いえ、今来たとこです」
――うん、マニュアル通りのやりとり。
心の中で思わず突っ込む。「教科書から飛び出してきたの?」
その柔らかい雰囲気、どこかリクを思い出させた。リクも柔らかい優しい男だった。
でも、リクには心地よい“間”があったのよね。くだらない話でもテンポが合って、笑い合える呼吸があった。
この彼には……それがなさそう。テンプレ会話の波が淡々と続くだけ。
正直、優しそうではある。だけど、“優しさ”って時に致命的な退屈を生むのよ。
まあ、この時点では「悪くないかも」と思ってたんだけどね。まさか“退屈地獄”が待ってるなんて、知る由もなく。
いい人だけど恋愛対象にならない特徴
1. 優しすぎて物足りない
レストランに着いて、メニューを開いた瞬間から彼の“優しさ”が全開だった。
彼「何でも好きなもの頼んでいいよ」
わたし「じゃあ、これにしようかな」
彼「うん、いいね。僕もそれに合わせるよ」
……合わせるよ? いや、あなたは何を食べたいの。
こういう「なんでもいい」攻撃って、最初は優しさに見えるけど、続くと地獄なのよ。
自分の意志、どこに置き忘れてきたの? 財布と一緒に玄関にでも?
リクも優しい人だったけど、「ミサキには絶対このパスタを食べてほしい」なんて自分の好みを押し付けてきたことがあった。
でもその“押し付け”が意外と会話のスパイスになってた。
……そう思うと余計に、この「無風の優しさ」が物足りなく感じるのよね。
ミサキの教訓:
優しさは大事。でも“自分がない優しさ”は退屈を生む。
恋愛対象にならない男の第一条件、それは「何でもいい男」。
2. 褒めるポイントが浅い
食事が運ばれてきて、軽く世間話をしていると、また彼の“いい人セリフ”が炸裂した。
彼「ミサキさんって、ほんと気遣いできるよね。偉いなあ」
わたし「……ありがとう(偉い? 小学生の通信簿?)」
さらに彼は畳みかけるように言う。
彼「仕事もきっと丁寧なんだろうな。そういうところ、すごく尊敬する」
……ああ、この感じ。
褒められてるのに、なぜか退屈。心が1ミリも動かない。
だってそれ、人格じゃなくて「よくできました」スタンプじゃん。
リクだって褒めてくれることはあった。でも「ミサキ、妙に説教くさいとこあるよな」とか、「真顔で皮肉言うとこ好きだわ」とか、刺さる言葉だった。
だからムカつきながらも笑えたし、会話が熱を帯びたのよ。
この彼は、わたしの表面しか撫でてない。わたしの中身には、指一本触れてこない。
――そう、恋愛対象にならない人って、褒める言葉に“深み”がないの。
ミサキの教訓:
褒め言葉は「中身に触れてこそ効く」。
表面だけの優等生コメントでは、人の心は動かない。
3. 空気を読みすぎて距離が縮まらない
デートも中盤。少し打ち解けてきたかな、と思ったら――そう思ったのはわたしだけだったらしい。
わたし「これ、美味しいね」
彼「うん、美味しいね」
わたし「お店の雰囲気もいいよね」
彼「うん、いいよね」
……オウム返しロボット、爆誕。
いや、もうちょっと“自分”を出してよ。空気を読みすぎると、会話は空っぽになるのよ。
さらに彼は、わたしが話題を探して間を置くと、すかさず「無理して話さなくていいからね」と微笑んでくる。
……その優しさ、逆にプレッシャー。黙ってると、ますます気まずくなるじゃん。
わたしは別に、過激な冗談やボケを求めてるわけじゃない。
でもせめて、自分の意見や感情をぶつけてほしいのよ。
“波風立てない男”は、恋の風すら起こせないって、知ってる?
ミサキの教訓:
相手の様子を伺いすぎると、安心は与えられてもトキメキは奪う。
恋愛対象になりたければ、勇気を出して空気を少し乱すくらいでちょうどいい。
4. 安心はするけどドキドキしない
デートの帰り道。駅まで歩きながら、わたしは考えていた。
――彼は悪い人じゃない。むしろ、いい人だ。終始穏やかで、不快なところはひとつもなかった。
でも、その「不快がない」が同時に「刺激がない」に直結してるんだよね。
ずっと無風状態のデートって、例えるならぬるい白湯を延々と飲まされるようなもの。身体にはいいかもしれないけど、心は渇く。
彼「今日はありがとう。またぜひご飯行こうね」
わたし「うん、ありがとう(社交辞令返し)」
……その一言にも特にトキメキはなく。心拍数はずっと安定。
わたしが欲しいのは「心電図がピッ!」と振れる瞬間なのよ。
安心だけじゃ、恋は育たない。ドキドキがなきゃ、恋愛対象にはならないの。
ミサキの教訓:
いい人で終わる人は「刺激」を忘れてる。
安心は基盤。でも恋には、心を揺さぶるスパイスが必要不可欠。
ハウツー:いい人止まりにさせないために
ここまで散々辛口で語ったけど、「いい人」が必ずしも恋愛対象外ってわけじゃないのよ。
ただ、“いい人で終わる人”には共通点がある。そして、そこに気づけるかどうかで未来は変わる。
1. 自分の意志を見せる
「何でもいいよ」は優しさに聞こえて、実は逃げ。
決めてほしいときは決める、意見があるなら出す。それができないと、永遠に「退屈な優男」で終了。
2. 褒めるなら深く切り込む
「気遣いできるね」じゃ響かない。
「人の愚痴を聞くときの冷静さが好き」とか、「皮肉混じりの笑い方がツボ」とか、その人だけの“クセ”を褒めるのが効く。
3. 空気を読みすぎない
空気を読むのは社会人として正解。でも恋愛では不正解。
ちょっと乱すくらいの勇気があったほうが、ドキドキが生まれる。
4. 安心+刺激の両立を意識する
恋は安定だけじゃ育たない。
安心感を与えつつ、「でも今日は違う一面を見せる」みたいなギャップを仕込めば、“ただのいい人”から一歩抜け出せる。
――まあ、ここまで言っても実践できる人は少数派。だから「いい人だけど…」っていう存在が世の中にあふれてるんでしょうね。
ふふ、皮肉じゃなくて現実のお話。
まとめ:いい人で終わらせない、恋愛のリアル
「いい人なんだけどね」――その言葉、だいたい「恋愛対象にはならない」の裏返し。
もちろん安心感は大事。でも、恋愛には安心だけじゃ足りない。ドキドキ、刺激、ちょっとしたスパイスがなきゃ心は動かない。
今回の彼は、優しいし、礼儀もあるし、非の打ちどころはなかった。
でも“悪くない”と“好き”の間には、果てしなく広い海があるのよ。
そこを渡るには、無風のヨットじゃダメ。風――つまり感情を揺らす一手が必要。
恋は勝ち負けじゃないけど、舞台に立つなら主役を演じなきゃ愛されない。
「いい人」で終わりたくないなら、少しの勇気と少しの癖を武器にして。
だって、無味無臭の白湯よりも、時にはスパークリングの刺激のほうが人を酔わせるんだから。
――以上、ミサキからの辛口レポートでした。ふふ、ちょっと毒っぽかった?でも、真実はいつだって少し苦いものなのよ。

