失恋と書いてミサキ
リクとの恋? ええ、終わったわ。
でもね、わたしがいつまでも未練タラタラで泣きわめくタイプだと思ったら大間違い。
だって強欲と書いてミサキ。
失恋ごときでストーリーが終わる女じゃないのよ。
たしかに胸の奥はちょっとチクっとしたけど、涙でマスカラが落ちる前に気づいたの。
「これ、ぜんぶネタになるじゃない♡」って。
恋も夢も記事も、わたしは全部食べ尽くす。
──そういう女の後日譚が、ここから始まるのよ。
新しい遊び場発見
最近ね、やたらとデートのお誘いが多いの。
「よかったらご飯でもどうですか?」とか「相談に乗ってください」なんて、男どもはだいたい同じパターン。
──はいはい、わたしが魅力的なのは知ってるわよ。
でもさ、ただ食べるだけのタダ飯に付き合うほど、わたしの胃袋は安くないの。
わたしが欲しいのは、もっとスパイシーで効率的な“利用価値”。
見栄えだけのイケメン? 写真撮る以外の用途なし。
お金だけ持ってる男? 財布は厚いけど話が薄いんじゃ記事にもならない。
逆に、人脈があってネタ提供してくれるタイプ? 最高。いますぐアポ取るわ。
こうやって一人ひとりを“リソース表”みたいに仕分けしてるとき、わたしは思うの。
ああ、やっぱりわたしって編集部向きだわって。
だって世の男たちが、取材対象にしか見えなくなってるんだから。
もちろん「リクが一番落ち着く」とか言ってた時代もあったけど、あれはあれ。
今は新しい遊び場を開拓するターンなの。
こいこと。に正式加入した以上、ネタに困る生活なんて許されないでしょ?
だから宣言するわ。
──これからわたしは、利用価値のある男をハンティングする!
恋か、記事ネタか、はたまた両方か。
結論はどうあれ、ぜんぶミサキ様の糧にしてやるのよ♡
恋活すら記事に
気づいたのよ。
わたしの恋活、これ自体が最高のエンタメじゃない?って。
男を選ぶ視点も、突撃デートの顛末も、失敗談すら笑い飛ばせる。
──つまり、わたしが恋をするだけで記事が一本仕上がるのよ。
だってさ、世の女の子たち、みんな恋活してるでしょ?
でも「これはネタだ!」って鼻息荒く大胆に楽しめるのはミサキ様くらいよ。
普通の子は「フラれたらどうしよう」って泣くけど、わたしは「フラれたらタイトルどうしよう♡」って悩むの。
利用する? 利用される? そんなの関係ないわ。
恋だって戦場だし、編集部に持ち込めばそれはもう武器になる。
そう考えたら、
「リクを利用して記事を書いてた過去」すら、今となっては最高の予行練習にしか見えないの。
だから覚悟して。
これからわたしの恋活、全部あなたたち読者にお届けするわ。
ネタにされる男どもには悪いけど……フフフ、それもまたエンタメでしょ?
ミサキ様が通る!
さぁ、そろそろ本題に入りましょうか。
わたしが新しいシリーズの幕開けを飾るにふさわしいタイトル──考えたの。
名付けて「ミサキ様が通る!」
どう? 完璧でしょ?
だって、どこをどう切り取っても、わたしが主役。
恋も、記事も、編集部のざわめきすら、ぜんぶ私のステージの彩りになるのよ。
「ちょっとミサキの記事、毒強すぎじゃない?」とリクに言われたとき?
──あれすらもう演出。観客にサービスしてるだけ。
「最近デート多くない?」って噂される?
──ええ、そりゃそうよ。ミサキ様が通れば男たちは振り返るんだから。
わたしは完璧なヒロインなんかじゃない。
強欲で、計算高くて、たまに失敗してドジも踏む。
でもそれすら愛嬌に変えるのが、わたしの芸風なの。
だから覚悟しなさい。
これから始まる連載は、ミサキ様が街を歩き、恋を狩り、笑い飛ばし、泣き顔すらネタにする物語。
甘いロマンスを期待してる読者?
残念! ここからはブラックジョークと笑いと、時々ほんとの胸キュンで満たしてあげるわ。
わたしは欲しいものを全部取りに行く。
恋も、夢も、アクセス数も。
ついでに「読者の心」なんていう面倒なものまで、根こそぎ持ってってあげる♡
──そう、強欲と書いてミサキ。
今度は泣き虫ヒロインじゃなくて、ダークコミカルな主人公として。
わたしの新章、堂々開幕よ!
「ミサキ様が通る!」──あなたも目撃者のひとりになるの。覚悟して、ついてきなさい♡

