【ミサキ様が通る!】かきあげロング爆誕♡強欲ヒロイン、新章スタート!

目次

旧ミサキから新ミサキへ

「さぁ、新連載『ミサキ様が通る!』開幕よ♡」
鏡の前で、わたしは自分にウインクしてみせた。
だって新章が始まるなら、ビジュアルだって刷新しないと。

「さて……新しい物語にふさわしく、髪型でも変えようかしら」
そうつぶやきながら、頬の横に垂れる髪を指でくるくる遊ぶ。
今のままでも悪くない。けど……なんだか“リクの恋日記のミサキ”を引きずってる気がして、シャクなのよ。

「ワンレンボブにしようかしら? ……いや、待って。ナナさんとかぶるじゃない」
編集部のライター陣、キャラ立ちが激しいのよ。ナナさんは姉御肌、アカリちゃんは青春ギャル、ミユは妄想天使。
そこでわたしが髪型まで被ってどうするの。強欲女は、姿かたちまでオンリーワンでなくちゃ♡

鏡の中の自分に向かって、ニヤリと笑った。
「フフ……差別化こそ、わたしの正義。次のステージに上がる準備はできてるの」

美容室にて──強欲女の注文は一択

美容室のドアを開けた瞬間、シャンプーの甘い香りとドライヤーの轟音が耳に飛び込んできた。
「お待ちしてました〜」と担当の美容師さんが笑顔で迎えてくれる。
……ええ、今日のわたしは客じゃないわ。舞台に立つヒロインよ。

「今日はどうされますか?」
椅子に座ってクロスをかけられるや否や、あの定番の質問が来た。
普通の女なら「ちょっと軽くしてください」とか「毛先そろえて」って言うんでしょうね。
でもわたしは、凡庸な女じゃない。強欲と書いてミサキ。欲しいものは全部取りにいく女よ。

「かきあげ前髪でロング。
大人っぽくて、強気で、できれば“この人、絶対悪女だわ”って言われる髪型でお願いします♡」

……カットサロンが一瞬、静まり返った気がした。
隣の席の女子高生がスマホをいじる手を止め、美容師さんのハサミがカチリと鳴る。
いいのよ、わたしはいつだって主役。注目されてナンボなんだから。

「えっと……はい(苦笑)」と美容師さんはプロフェッショナルな笑顔を崩さない。
でも、その目の奥で「とんでもない注文が来た」って言ってたわね。
大丈夫、わたしは本気。中途半端な変化じゃつまらない。髪型すらネタにして記事にするつもりなんだから。

鏡越しに映る自分を見ながら、わたしはニヤリと口角を上げる。
「ふふ……ほかのライターとかぶるなんて屈辱、絶対にごめんだわ。
この髪で、あの編集部に登場して──みんなの度肝を抜いてやるの」

美容師さんのハサミがシャキシャキと鳴り、ドライヤーの熱風が髪を舞い上げる。
その音さえ、わたしの凱旋のファンファーレに聞こえるから不思議。
──これが、新しいミサキ誕生の瞬間よ。

鏡の前の新しいわたし──かきあげロング爆誕

仕上げのブローが終わり、美容師さんが一歩下がった。
鏡の前に座るわたしの姿──そこには、見慣れたはずの自分とはまるで別人が映っていた。

「……フフフ。やればできるじゃない、さすがわたし」


ワンレンボブも捨てがたかったけど、ナナさんと少しかぶっちゃうから、こっちで正解。
“姉御肌ナナ”と“強欲ミサキ”が同じ髪型だなんて、絵面的に面白くないじゃない。
だから思い切って──かきあげ前髪のロング。悪女全開、強気全開に仕上げたわけ。

髪を指先でかきあげると、サラリと流れる長い黒髪。
光を受けて艶めくその毛先に、自信と挑戦のオーラが宿ってる気がする。
悪女? 強欲? 上等よ。そう見えるなら計画通りだもの。

「これでもう“ほかのライターと見分けつかない”なんて言わせない。
わたしはわたし。唯一無二のミサキ様よ」

そう口にしながら、鏡越しの自分にウインク。
その瞬間、わたしは確信したの。
──この髪型こそ、新連載『ミサキ様が通る!』にふさわしいビジュアルだって。

だけど、ほんの少しだけ胸がきゅっとした。
「この髪、チョロ助も見たらなんて言うかしら……」
頭の中に、失恋の残像がちらりとよぎる。
……いやいや、そんなの関係ない。吹っ切れたの。わたしはもう前に進んでる。
そう、自分に言い聞かせながら、わざと大きく笑ってみせた。

「いいじゃない。恋も夢もネタにして、全部まとめて踏み越えてやるわ」

わたしは椅子から立ち上がり、堂々とした足取りで美容室をあとにした。
──次の舞台は、もちろんあそこ。こいこと。編集部よ。

編集部に登場──ミサキ様が通る!

新しい髪型に気分を乗せて、わたしは「こいこと。」編集部のドアを押し開けた。
カツ、カツ、とヒールの音が響く。
──さぁ見なさい、このかきあげロングの誕生を。主役は誰か、すぐにわかるでしょ?

「おっ、ミサキちゃん! なんか雰囲気変わった?」
最初に声をかけてきたのはアカリちゃん。目を丸くして、ぱちぱちと拍手までしてくれる。
「え〜イメチェンじゃん! 似合ってる〜♡」

「……フフ、ありがとう。そうでしょ? 自分でもそう思うわ」
わざとドヤ顔で答えてやると、奥からナナさんが苦笑しながら突っ込んできた。
「アンタさぁ……最初は控えめで“はじめまして〜”とか言ってたのに、最近すっかり素が出てきたじゃん」

わたしは肩をすくめて、グラスの水を一口。
「まぁ、隠すのも飽きたのよね。猫かぶるより、ミサキ様を見せたほうが早いでしょ?」
編集部のみんなが笑い声を上げる。
……ほら、場を回すのも、笑いを取るのも、もうわたしの得意技になってるじゃない。

マリさんが静かに頷いて言った。
「でもね、ミサキちゃん。そうやって素を出せるのは、ここが安心できる場所だからよ」

……一瞬だけ胸がチクリとした。
そう、ここは夢の舞台。わたしが狙って飛び込んだ戦場であり、今や仲間がいる場所でもある。
でも、その舞台にリクの顔がある限り──気持ちがざわつくのも、事実なのよ。

「まぁいいわ。これからも、ミサキ様をよろしくお願いするわね♡」
軽口を叩いて笑いながらも、心の奥底では──新しい自分を見せる不安と、どこか切ない予感が入り混じっていた。

次なる獲物はどこに?

編集部での一幕が終わり、わたしはひとり帰り道を歩いていた。
夜風にロングの髪をかきあげながら、口元に小さな笑みを浮かべる。

「さて……どんな恋愛を見せていこうかしら」

頭の中には、いくつもの候補が浮かんでくる。
最近やたらと食事に誘ってくる取引先の男。
マッチングアプリでマッチしたけど、まだ会ってないイケメン風プロフィールくん。
それに、話のネタには事欠かない婚活パーティー。

──どれもわたしなら、面白い物語にできるに決まってる。
だって、強欲と書いてミサキ様。恋も夢もネタも、全部いただく女だから♡

「フフフ……次はどんなドタバタを見せてやろうかしらね」
わたしは自分にそう言い聞かせると、ヒールを鳴らして夜の街に消えていった。

──新連載『ミサキ様が通る!』は、まだ始まったばかり。
次のターゲットは誰かしら? お楽しみに♡

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