青春とはなんぞや?アカリがワニと詩人にあえて聞いてみた

編集部のソファで、アカリがスマホをいじりながら首をかしげていた。

さっきまで笑っていたのに、急に真面目な顔になる。
こういう切り替えの速さも、彼女らしい。

アカリ「ねえ……青春ってさ、結局いつからいつまでなんだろ

唐突な問いに、近くで新聞を読んでいたワニオが、ゆっくり顔を上げた。

ワニオ「ずいぶん大きなテーマですね。
年齢の話ですか? それとも、状態の話でしょうか」

アカリ「そこ! そこがわかんないんだって。
高校生まで? 大学生まで? それとも恋してたら全部青春?」

アカリは笑いながら言うが、どこか本気だ。
いまの自分は青春なのか、それとももう過去なのか。
そんな疑問が、ふと頭をよぎったようにも見える。

ワニオは少し考える素振りをしてから、穏やかに答えた。

ワニオ「人間は、はっきりしないものに名前をつけたがる生き物です。
“青春”も、そのひとつかもしれませんね

――と、そのとき。

いつの間にか、部屋の隅に見慣れない影が増えていた。

ナツメ「青春いうのはな、
終わったあとに“あれは青春やった”って気づく幻や

唐突に放り込まれた関西弁と詩みたいな言葉に、アカリが目を見開く。

アカリ「ちょ、なんでナツメがいるん」

ワニオ「……説明が難しい存在ですが、
考え方の参考にはなるかもしれません」

こうして、
ギャルの疑問と、恋をしないワニの観察
そして謎の詩人の不条理が交差する、少し変わった座談会が始まった。

テーマは――
「青春とは、いったい何なのか?」

目次

青春って、年齢のことなの?それとも状態のこと?

アカリ「やっぱさ、青春=若い時期ってイメージ強くない?
高校生とか、大学生とかさ」

ワニオ「一般的には、そう捉えられることが多いですね。
ただ、それは“分かりやすく区切るための基準”に過ぎない気もします」

ワニオはいつも通り、落ち着いた声で続ける。

ワニオ「年齢で考えると、
ある日を境に青春が終わることになります。
それは少し、不自然ではありませんか」

アカリ「たしかに。
誕生日迎えた瞬間に“はい終了”とか、ちょっと雑だよね」

その横で、ナツメが何も言わずに椅子をひっくり返した。

アカリ「え、なにしてんの?」

ナツメ「青春はな、たいてい裏返って落ちとる

意味は分からないが、妙に納得したような気もする。

ワニオ「……状態として考えるなら、
青春は“心が前のめりになっている時間”とも言えそうですね」

アカリ「前のめり?」

ワニオ「失敗してもいいと思っていたり、
結果よりも“いまの気持ち”を優先していたり

アカリ「あー……それ、ちょっと分かるかも。
恋してる時とか、まさにそんな感じだし」

ナツメは頷くでもなく、首を傾げるでもなく、天井を見上げて言った。

ナツメ「青春いうのはな、
賢くなる前に一回だけ落ちる穴や」

アカリ「相変わらず言い方ひどいけど……
でも、なんか分かるのが悔しい」

どうやら青春は、
年齢だけで決められるものでも、完全に定義できるものでもないらしい。

青春って、恋がないと成立しないもの?

アカリ「でもさ、正直な話。
青春って、恋ありきって思ってる人、多くない?」

アカリ「部活! 友情! って言いつつ、
結局みんな恋の話ばっかりしてるし」

ワニオ「なるほど。
では確認ですが、青春に恋は必須条件なのでしょうか

アカリ「え、そこ疑う? だって青春=甘酸っぱいじゃん」

ワニオは少し考えてから、静かに言った。

ワニオ「観察している限りですが……
人は“恋をしていた時間”より、“恋に振り回されていた時間”を、
青春として記憶しやすい傾向があります」

アカリ「あ……それ、ちょっと分かるかも」

ワニオ「恋そのものより、
自分が不器用になっていた状態が、後から輝いて見えるのかもしれません」

その横で、ナツメが急に床にしゃがみ込んだ。

ナツメ「恋はな、
青春を加速させる装置であって、本体やない

アカリ「ちょいちょい機械っぽく例えるのやめて」

ワニオ「ただし――
恋があると、判断力が落ちる
その結果、行動が増え、記憶が濃くなる」

アカリ「ひどい言い方だけど、否定できないのがムカつく」

ワニオ「つまり、青春とは
恋をしているかどうかではなく、理性が追いついていない時間とも言えそうです」

ナツメは立ち上がり、ぽん、とアカリの肩を叩いた。

ナツメ「賢くなりすぎたら、青春は見えへん」

アカリ「……それ、いまの私に言う?」

恋は青春の条件ではない。
でも、青春を“青春っぽくする力”は、たしかに持っている。

じゃあ今の自分は青春の真っ最中? それとももう通過済み?

アカリ「でもさ……それ言われると逆に迷うんだけど」

アカリ「今の自分って、青春してる側なのか、振り返る側なのか、正直わかんなくて」

ワニオ「興味深い疑問ですね。
多くの人は、青春を“終わってから定義”しようとします」

アカリ「え、じゃあ今は判断できないってこと?」

ワニオ「はい。
青春の最中にいる人ほど、“青春かどうか”を気にします

アカリ「うわ……それ、今の私じゃん」

ナツメはいつの間にかベンチに腰を下ろし、空を見上げていた。

ナツメ「青春はな、
ラベル貼ろうとした瞬間に、ちょっと逃げる

アカリ「逃げるってなに」

ナツメ「気づいたら終わってて、
後ろから『あれ青春やったで』って声かけられる感じや」

ワニオ「つまり、
“いま青春かどうか”を気にしている時点で、条件は満たしているとも言えます」

アカリ「……ちょっと救われるんだけど」

ワニオ「青春とは、
“これでいいのかな”と確認し続けている状態なのかもしれません」

アカリ「あー……それなら、ずっと青春じゃん」

正解がないこと。
迷いながら進んでいること。
それ自体が、もう青春の中にいる証拠なのかもしれない。

大人になっても青春っぽい人の正体

アカリ「でもさ、正直ちょっと思うんだけど」

アカリ大人なのに、ずっと青春してる人っていない?」

アカリ「学生じゃないし、無理して若ぶってる感じでもないのに、
なんか楽しそうで、キラッとしてる人」

ワニオ「いますね。
ああいう方は、だいたい時間の使い方が独特です」

アカリ「え、そこ?」

ワニオ「はい。
意味があるかどうか分からないことに、
まだ時間を使ってしまう癖があります」

アカリ「それ青春っぽいの?」

ワニオ「効率だけで生きていると、
人は“青春っぽさ”を出す余地がなくなりますので」

ナツメは急に立ち上がり、意味もなく一回転した。

ナツメ「青春残ってる大人はな、
人生の余白、わざと掃除してへん

アカリ「汚い部屋みたいに言うじゃん」

ワニオ「近いです。
感情をきれいに整理しすぎない、とも言えます」

アカリ「なるほど……」

ワニオ「多くの大人は、
『まあ、こんなもんだろう』と感情を固定します」

ワニオ「一方で青春っぽい人は、
自分が今、何に引っかかっているのか
ちゃんと放置します」

アカリ「放置するんだ」

ワニオ「はい。
考えきれない感情を、
無理に答えにしない、という意味で」

アカリ「それ、ちょっと分かるかも」

アカリ「じゃあ青春って、
若さじゃなくて“向き合い方”なのかな」

ワニオ「ええ。
人生をまだ決めきっていない態度
と言ったほうが近いかもしれません」

ナツメは空を見上げて、ぽつりと言った。

ナツメ「青春はな、
答え出すのをサボってる時間や」

アカリ「それ言い方ひどいけど、嫌いじゃない」

アカリ的まとめ

アカリ「なんかさ、今日の話聞いてて思ったんだけど」

アカリ「青春って、特別なイベントとか
恋してるかどうかじゃない気がした」

アカリ自分の気持ちを雑に扱わないで、
ちゃんと引っかかって、悩んで、考えてる時間」

アカリ「それが残ってる人が、
“大人になっても青春っぽい人”なんじゃないかなって」

アカリ「だったらさ、
ちょっと迷ってる今は、青春ってことでよくない?

ワニオは静かにうなずき、
ナツメは意味もなく拍手をしていた。

青春は、どうやら年齢ではなく、
気持ちの扱い方に宿るものらしい。

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