「ねえ、保護猫活動ってさ、なんか尊いよね」
編集部のソファでスマホを見ていたアカリが、ふと顔を上げた。
アカリ:「タイムラインでさ、保護猫カフェとか、譲渡会とか流れてくるじゃん。ああいうの見ると“いいことしてる人たちすごいな〜”って思うんだけど……正直、何してるのかちゃんと知らないかも」
その向かいで、湯気の立つマグカップを両手で持っていたワニオが、ゆっくりまばたきをする。
ワニオ:「だいたいの人は、“なんとなく尊い”で止まっています」
アカリ:「え、冷たっ。でもわかるかも。保護ってさ、見つけた猫を全部おうちに連れて帰るってことじゃないの?」
ワニオ:「それは映画の中だけです」
アカリは「えっ」と声を上げる。
かわいい写真の向こう側で、
実際に何が起きているのか。
尊さの裏側には、どんな現実があるのか。
“全部助ける”以外の選択肢はあるのか。
今日は少しだけ、
保護猫活動と、地域猫活動について話してみることになった。
保護猫活動って何をしているの?
保護=家に迎えることだけじゃない
アカリ:「保護ってさ、拾って飼うことだと思ってた」
ワニオ:「それも一部ですが、活動はもっと地道です」
ワニオは、テーブルの上のメモ帳に、静かに指を置いた。
保護猫活動と呼ばれるものの多くは、
医療ケア・一時預かり・里親探しの積み重ねだ。
外で暮らしていた猫は、すぐに譲渡できる状態ではないことが多い。
- ノミやダニの駆除
- ワクチン接種
- 不妊去勢手術
- 健康チェック
その間、ボランティアが一時的に預かり、
人に慣れるようケアをする。
アカリ:「え、そこまでやってから譲渡なんだ」
ワニオ:「“かわいいから飼う”では終わらせないためです」
保護とは、衝動ではなく準備。
そしてその準備には、
時間もお金も、根気も必要になる。
尊さの裏にある“現実”
アカリ:「でもさ、インスタとかだと、めっちゃ幸せそうじゃん。ビフォーアフターとか」
ワニオ:「あれは完成形です。過程はあまり映りません」
実際の現場は、もっと静かで、もっと大変だ。
医療費は決して安くない。
慢性的に人手も足りない。
譲渡会を開いても、必ずしも新しい家族が見つかるとは限らない。
アカリ:「なんか……想像よりずっと現実的」
ワニオ:「尊さだけで続く活動は、ほとんどありません」
それでも続いているのは、
“かわいそうだから”だけではなく、
命を減らさないための仕組みを作ろうとしているから。
アカリはスマホをそっと伏せた。
画面の向こうの笑顔の裏に、
こんな地道な時間があるなんて、考えたことがなかった。
地域猫活動ってなに?
“飼う”でも“追い出す”でもない選択
アカリ:「地域猫って、聞いたことはあるけど…なんとなくしか知らないかも」
ワニオ:「外で暮らす猫を、地域で見守る仕組みです」
地域猫活動は、飼い主のいない猫をその地域で管理する取り組み。
ポイントは、不妊去勢手術を行い、これ以上増えないようにすること。
そして、決められた人が決められた時間にエサをあげ、
食べ残しや排泄物の掃除まで行う。
アカリ:「え、ちゃんと片付けまでセットなんだ」
ワニオ:「“かわいがるだけ”では、近隣トラブルになりますから」
地域猫活動は、猫のためだけではなく、
人と猫が共存するための調整作業でもある。
TNRという考え方
アカリ:「TNRってやつ?」
ワニオ:「はい。Trap(捕獲)→Neuter(不妊去勢)→Return(元の場所に戻す)」
耳の先が少しカットされている猫を見たことがあるだろうか。
あれは手術済みのサイン。
“もう増えません”という目印だ。
アカリ:「知らなかった…。なんか、ただの傷かと思ってた」
ワニオ:「知らないと誤解が生まれます」
地域猫活動は、
“かわいそう”という感情と、
“迷惑”という現実の間で、バランスを取ろうとする試み。
派手ではない。
バズりもしない。
でも、確実に命を減らさない方向へ進めている。
アカリ:「なんかさ…思ってたより、ちゃんとしてる」
ワニオ:「感情だけでは回らない活動ですから」
アカリは少し黙った。
“助けたい”って気持ちは大事。
でも、それだけじゃ足りない世界もある。
興味を持ったら、何から始めればいい?

① いきなり保護しない
アカリ:「もし“助けたい!”って思ったら、どうすればいいの?」
ワニオ:「まずは、落ち着きましょう」
保護猫活動に興味を持ったとき、
一番やりがちなのが「とりあえず家に連れて帰る」こと。
しかし――
衝動保護は危険。
- 医療費が想像以上にかかる
- 先住猫がいる場合は感染リスクがある
- 家族の同意がないとトラブルになる
- 終生飼養(最期まで責任を持つ)覚悟が必要
ワニオ:「“かわいそう”だけで始めると、後で猫も人も困ります」
アカリ:「うっ…耳が痛い。でも大事だね」
② 地域の団体を調べる
次にやるべきは、地域の保護団体やボランティアを調べること。
多くの自治体やNPOは、
- 譲渡会の開催
- 地域猫活動のサポート
- 不妊去勢手術の助成制度
- 一時預かりボランティア募集
などを行っている。
アカリ:「いきなり全部背負わなくていいってこと?」
ワニオ:「ええ。“参加する”という選択肢もあります」
③ お金や物資で支える
保護猫活動は、正直に言うと資金との戦いでもある。
- 医療費
- フード代
- トイレ用品
- ケージや消耗品
アカリ:「寄付って、ちゃんと意味あるんだ?」
ワニオ:「とてもあります」
直接保護ができなくても、
フードを1袋送ることも、
クラウドファンディングに参加することも、
立派な“支援”。
④ SNSで拡散も立派な活動
最近では、SNSでの情報拡散が命をつなぐこともある。
里親募集の投稿をシェアする。
譲渡会の告知を広める。
アカリ:「え、それなら私でもできる」
ワニオ:「できることから、で十分です」
保護猫活動は、
“全部やる人”だけが偉い世界ではない。
関わり方は、人それぞれ。
それが、長く続けるコツでもある。
それでも大変。それでも尊い理由
アカリ:「正直さ、大変そうだよね…」
ワニオ:「ええ。大変です」
保護猫活動は、きれいごとでは続かない。
- 病気の子もいる
- 人に慣れない子もいる
- 里親がなかなか見つからないこともある
- 心ない言葉をかけられることもある
そして何より――
すべての命を救えるわけではないという現実がある。
アカリ:「それ、つらいね…」
ワニオ:「はい。つらいです」
けれど。
小さなケージの隅で震えていた猫が、
少しずつ人の手を受け入れ、
やがて新しい家族の腕の中で眠る。
その瞬間を知っている人は、言う。
“それでも、やってよかった”と。
アカリ:「救えた命がある、ってことだよね」
ワニオ:「はい。すべては無理でも、ゼロではありません」
保護猫活動の尊さは、
世界を全部変えることではなく、
目の前の一匹の未来を変えることにある。
そしてそれは、
たしかに世界の一部を変えている。
保護猫活動が教えてくれること
この活動を通して、多くの人が学ぶのは――
- 命は軽くないということ
- 感情だけでは続かないということ
- 小さな積み重ねが社会を変えるということ
アカリ:「なんかさ、恋愛にも似てるね」
ワニオ:「……唐突ですが、少し分かります」
勢いだけでは続かない。
でも、続けることで見えてくるものがある。
保護猫活動は、
“優しさの体力”を育てる活動なのかもしれない。
アカリ:「優しさって、鍛えるものなんだ」
ワニオ:「はい。筋肉のように」
ワニのくせに妙に真面目なことを言う。
でも、きっと本質だ。
まとめ|保護猫活動は「かわいい」だけじゃない。でも、だからこそ尊い
保護猫活動は、ただ「猫が好き」という気持ちだけで始められるものではありません。
命を預かる責任。
医療や費用の現実。
時間や労力。
そして、ときには割り切れない別れ。
きれいごとでは済まない現場があります。
それでも。
一匹の未来が変わる瞬間を知っている人は、やめられないと言います。
世界を全部救うことはできない。
でも、ゼロをイチにすることはできる。
それが保護猫活動の本質です。
アカリのひと言
アカリ:「なんかさ、“尊い”って言葉、軽く使ってたかもって思った。
ちゃんと知ると、ほんとに重みあるよね」
ワニオ:「尊さとは、手間の裏側にあります」
ワニオが言うと、なぜか少し説得力がある。
もし保護猫活動に興味があるなら、まずは知ることから。
- 地域の保護団体を調べる
- 譲渡会を見学してみる
- 寄付や物資支援という形で関わる
- 地域猫活動について学ぶ
できることは、思っているよりたくさんあります。
優しさは、無理のない範囲で続けること。
それが、命と向き合うための第一歩なのかもしれません。
※保護猫活動にはさまざまな考え方や方針があります。
今回の記事はあくまで一例であり、すべての団体や活動を代表するものではありません。
大切なのは、自分の価値観に合った関わり方を見つけることです。

