好きな人にだけ、うまく話せない。
話しかけられると、なぜかそっけない返事をしてしまう。
本当は嬉しいのに、目も合わせられない。
そんな自分にあとから落ち込む。
「また避けちゃった……」
この行動、実は“好き避け”と呼ばれるもの。
好きな気持ちが強いほど、相手を避けてしまう。
でも――
「このままだと、恋が始まらない」
そう思っている人も多いはず。
今回は、好きな人を好き避けしてしまう心理と、少しずつ治す方法を、こいこと。編集部の座談会と実践エピソードで紹介します。

「好き避け、治したい」──カフェでの相談
休日の午後。
駅前のカフェで、アカリは友達のチカと向かい合って座っていた。
チカは、ストローをくるくる回しながら言った。
チカ:「アカリさ、相談いい?」
アカリ:「いいよ。恋のやつ?」
チカは少しだけ笑った。
チカ:「……うん、恋のやつ」
少し間をおいて、続ける。
チカ:「好きな人いるんだけどさ」
アカリ:「お、ついに?」
チカ:「でも、わたし……好き避けしちゃうんだよね」
アカリが、ストローを持つ手を止めた。
アカリ:「あー、それか」
チカ:「話しかけられると逃げちゃうし、LINEもそっけなくなるし」
チカ:「あとで毎回後悔する」
チカは苦笑いした。
チカ:「嫌いって思われてるかも」
アカリは少し考えてから言った。
アカリ:「それ、完全に好き避けだわ」
チカ:「やっぱり?」
アカリ:「うちの編集部、恋愛エキスパート多いからさ」
アカリ:「“好き避け治す方法”聞いてみる?」
チカは、ちょっと驚いた顔をした。
チカ:「え、そんな会議するの?」
アカリ:「するする。恋の悩みは編集部案件だから」
好き避けする理由
アカリは編集部のテーブルで、チカの相談を共有した。
アカリ:「友達がさ、好きな人にだけ冷たくしちゃうんだって」
ミユ:「あー、それ“好き避け”だね」
リク:「恋愛ではわりとよくある現象です」
アカリは少し意外そうな顔をした。
アカリ:「え、そんなよくあるの?」
リク:「はい。好きな人ほど避けてしまうのは、心理的には自然なんです」
リクは指を折りながら説明した。
①緊張してしまうから
リク:「好きな人って、普通の人より緊張しませんか?」
ミユ:「するする。心臓うるさくなる」
リク:「その緊張を避けるために、人は距離を取ろうとします」
アカリ:「つまり逃げてる?」
リク:「無意識の“緊張回避”ですね」
②嫌われるのが怖いから
ミユ:「あとさ、“嫌われたくない”ってやつもあるよね」
アカリ:「それは絶対ある」
リク:「好きな人ほど、失敗したくない」
リク:「だから普通に接するより、距離を取る方を選んでしまうことがあります」
ワニオ:「防御反応ですね」
③好きな気持ちが強すぎるから
ミユ:「あとさ、単純に好きすぎるパターンもある」
アカリ:「好きすぎて話せないやつ?」
ミユ:「そうそう」
リク:「好意が強いほど、普通の行動ができなくなることがあります」
アカリ:「恋ってめんどくさいね」
ワニオ:「恋愛は人間のOSにバグを起こす機能です」
編集部のテーブルで小さく笑いが起きた。
アカリ:「つまりチカは…」
ミユ:「ちゃんと恋してるってことだね」
好き避けを治す方法
アカリは腕を組んだ。
アカリ:「理由は分かったけどさ」
アカリ:「どうすれば治るの?」
テーブルの上で少し沈黙が流れる。
そのあと、リクが静かに言った。
リク:「ポイントは“ハードルを下げること”です」
ミユ:「いきなり仲良くしようとすると無理なんだよね」
ワニオ:「巨大な恋愛イベントにしている可能性があります」
アカリ:「巨大イベント?」
ワニオ:「文化祭のメインステージのようなものです」
ワニオ:「失敗できないと思うほど、人は固まります」
アカリ:「チカそれだわ」
①まずは挨拶レベルで接する
リク:「好き避けを治す最初の一歩は、とても小さくて大丈夫です」
リク:「まずは普通に挨拶する」
ミユ:「“おはよう”とかそれだけでOK」
アカリ:「それくらいならできそう」
リク:「いきなり距離を縮めようとすると、また避けてしまいます」
リク:「まずは“避けないこと”が目標です」
②1秒だけ目を見る
ミユ:「あとね、目線」
アカリ:「目?」
ミユ:「1秒でいいから目を見る」
ミユ:「それだけで、相手の印象は全然違うよ」
リク:「人は“目を見て話す人”を好意的に感じやすいです」
③会話は短く終わらせる
リク:「長い会話をしようとすると緊張します」
リク:「だから最初は一言で終わる会話がいい」
ミユ:「“今日寒いね”とかね」
アカリ:「それならできそう」
リク:「恋愛は“距離を一気に縮めるもの”ではなく、“少しずつ慣れるもの”です」
④好き避けしても自分を責めない
ミユ:「あと大事なのこれ」
ミユ:「好き避けしても、自分を責めすぎないこと」
アカリ:「それ難しいんだよね」
ミユ:「でも恋してるときって、みんな多少おかしくなるから」
ワニオ:「恋愛は人間のOSに一時的なバグを発生させます」
アカリ:「またIT例えきた」
ワニオ:「好き避けとは」
ワニオ:「スマホの画面を割るのが怖くて、ポケットから出さない人と同じです」
アカリ:「え?」
ワニオ:「大事すぎて使えない」
ワニオ:「その結果、何も始まらない」
アカリはスマホを取り出した。
アカリ:「よし」
アカリ:「この作戦、チカに伝える」

好き避けを治す作戦を実践してみた

その日の夕方。
アカリは、チカとまたカフェに来ていた。
チカ:「編集部会議ってほんとにやったの?」
アカリ:「やったやった」
アカリはストローを回しながら言う。
アカリ:「で、結論」
アカリ:「好き避けは“巨大イベント”にしすぎ」
チカ:「巨大イベント?」
アカリ:「文化祭のステージくらい構えてる」
チカは思わず笑った。
チカ:「それは…ちょっと分かる」
アカリは指を立てた。
アカリ:「だから作戦」
アカリ:「恋愛だと思わない」
チカ:「え?」
アカリ:「挨拶するだけ」
アカリ:「目を見るだけ」
アカリ:「会話は一言で終わり」
チカは少し考えてから言った。
チカ:「……それならできるかも」
そのとき。
カフェのドアが開いた。
チカの表情が一瞬で固まる。
アカリ:「え?」
チカが小さくつぶやいた。
チカ:「……来た」
アカリ:「え?」
チカが視線を入口に向ける。
そこにいたのは――
ソウタだった。
アカリ:「え、ソウタくん?」
ソウタはふわっとした顔で二人に気づいた。
ソウタ:「あれ、アカリじゃん」
そしてチカを見る。
ソウタ:「チカもいる」
チカは一瞬だけ視線を落とした。
でも――
アカリの言葉を思い出す。
「挨拶だけ」
チカは顔を上げた。
チカ:「……おつかれ」
ソウタは少し驚いた顔をした。
ソウタ:「おつかれ」
ほんの一秒。
チカは目を合わせた。
それだけで、心臓が速くなる。
ソウタ:「今日、逃げないんだ」
チカは苦笑いした。
チカ:「ちょっと練習してる」
ソウタ:「練習?」
チカ:「秘密」
ソウタは少し笑った。
ソウタ:「そっか」
そして手を振る。
ソウタ:「じゃあまた」
ソウタが店の奥へ歩いていく。
テーブルに静かな空気が戻った。
チカは大きく息を吐いた。
チカ:「……できた」
アカリが笑う。
アカリ:「できたじゃん」
チカは少し照れた顔をした。
好き避けは“恋している証拠”かもしれない
好きな人にだけ冷たくしてしまう。
話しかけられると、なぜか逃げてしまう。
あとで「またやってしまった」と落ち込む。
そんな“好き避け”は、決して珍しいことではありません。
むしろそれは、好きな気持ちが強い証拠でもあります。
大切なのは、いきなり完璧に振る舞おうとしないこと。
恋は、大きく踏み出すものではなく、少しずつ慣れていくものだからです。
・まずは挨拶する
・1秒だけ目を見る
・短い会話で終わる
そんな小さな一歩でも、恋の空気は少しずつ変わっていきます。
カフェの帰り道。
チカは少し照れながら言った。
チカ:「好き避け、ちょっとだけ治ったかも」
恋は、いきなり進展するものではありません。
でも、逃げずに一歩踏み出した瞬間から、少しずつ動き始めるのかもしれません。



