けれどそのやりとりが、彼女の心に何かを残していきます。
目次
ミカコとヒロキ、静かな偶然の再会
ヒロキ:……ミカコ、だよね?
ミカコ:……うん、ひさしぶり。ヒロキも、変わらないね。
ヒロキ:君がその雑誌に手を伸ばしてるの、ちょっと懐かしかった。……あの頃も、いつもチェックしてたよね。カルチャー欄。
ミカコ:覚えてたんだ。まぁ、相変わらずよ。無駄に全部読もうとして、情報に酔って帰るの。
ヒロキ:……なんか、それ聞いて安心した。僕はちょっと……東京、久しぶりで。
ミカコ:へぇ、今は地方暮らしだっけ? 文章書くには、そっちのほうが向いてそう。
ヒロキ:そう思う?……でもたまに、こっちのざわざわした空気も恋しくなるんだ。
ミカコ:……ねぇ、覚えてる? この棚の前で喧嘩したこと。
ヒロキ:あぁ……僕が勝手に君の原稿に赤を入れて、「それは“添削”じゃなくて“侵入”だ」って怒られた時。
ミカコ:ふふ、よく覚えてるじゃん。……今思えば、あの時の私、ちょっと尖ってた。
ヒロキ:いや、それがミカコだったよ。自分の領域を守れる強さが、羨ましかった。
ミカコ:……じゃ、そろそろ行くね。懐かしい話、ありがと。
ヒロキ:ああ。……元気で。
ミカコ:うん、そっちも。……次に会うときは、たぶんもっと他人っぽくなってる気がする。
コメント