編集部のソファで、ミユがスマホをいじりながら首をかしげていた。
ミユ「ねえ、ちょっといい?」
近くの椅子に座っていたワニオが、ゆっくり顔を上げる。
ミユ「愛情表現が苦手な人って、なんでなんだろ」
ミユ「好きならさ、
『好き』とか『大事』とか、言えばいいじゃんって思っちゃうんだけど」
その言葉に、少し離れた机からミカコが反応した。
ミカコ「あー、それ言われがちだよね。
でもさ、言えない人=冷たい人ってわけでもないでしょ」
リク「うん。
愛情があることと、それを表に出せるかどうかは、別の話だと思います」
ミユは少し不満そうに唇を尖らせる。
ミユ「でもさー、
何も言われないと、本当に好きなの?って不安にならない?」
そのやりとりを、ワニオは静かに聞いていた。
ワニオ「人は、
感情を持っていても、表現方法を持っていないことがあります」
ミユがぱっと顔を上げる。
ミユ「え、どういうこと?」
こうして、
「愛情表現が苦手な人って、何を考えてるの?」という、
少し素朴で、少し切実なテーマの座談会が始まった。
愛情表現が苦手な人は、何がしんどい?
ミユ「正直さ、
言うだけじゃん?って思っちゃうんだよね」
ミユ「好きなら好きって言えばいいし、
大事なら大事って言えばいいし」
ミカコ「その“言うだけ”が、
一番ハードル高い人もいるんだって」
ミユ「えー、そんなもん?」
リク「ありますよ。
愛情表現って、感情+行動+勇気が必要なんです」
リク「特に言葉で表現する場合、
相手にどう受け取られるかを想像しすぎて、
動けなくなる人は多いです」
ミカコ「下手に言って、
重いって思われるのも嫌だしね」
ミユ「あー……それはちょっと分かるかも」
そこに、ワニオが静かに割って入る。
ワニオ「愛情表現が苦手な人は、
愛情が少ないのではありません」
ワニオ「多くの場合、
失敗コストを高く見積もりすぎているだけです」
ミユ「失敗コスト?」
ワニオ「はい。
言葉を出すことで、
関係が壊れる可能性を想像してしまう」
リク「なるほど……
好きだからこそ慎重になるってことですね」
ミカコ「皮肉だよね。
大事にしてるほど、何も言えなくなる」
ミユ「じゃあさ、
何も言わない=どうでもいいってわけじゃないんだ」
ワニオ「むしろ逆の場合もあります」
ワニオ「言葉にしないことで、感情を守っている」
ミユは、少し考えるように視線を落とした。
ミユ「……難しいね、愛情」
愛情表現が少なくても、愛情がちゃんとある人の特徴
ミユ「でもさ、
言わない人って、どこで愛情感じればいいの?」
ミユ「だって、
好きって言わない、スキンシップ少ない、
記念日もスルーとかだったらさ」
ミユ「……それもう、無じゃない?」
ミカコ「無ではない。
省エネモードなだけ」
ミユ「省エネ!」
リク「分かりやすく言うと、
愛情表現の出力が低めなタイプですね」
ミユ「性能はいいのに、音小さいみたいな?」
リク「そうです。
中身はしっかり動いてる」
ワニオが、ゆっくりうなずく。
ワニオ「このタイプは、
言葉ではなく行動にデータが残ります」
ミユ「データ?」
ワニオ「迎えに来る、
体調を覚えている、
嫌がることを繰り返さない」
ワニオ「これらは、
愛情表現を“ログとして残す行為”です」
ミカコ「言わないけど、
やることはやってるタイプね」
ミユ「あー……」
ミユ「そう考えると、
めっちゃ地味だけど優しい人じゃん」
リク「派手な表現がない分、
継続性が高いのも特徴ですね」
ミユ「毎日は言わないけど、
ずっと一緒にいるみたいな?」
ミカコ「そうそう。
愛情をイベント化しない人」
ミユ「なるほど……」
ミユ「じゃあさ、
愛情表現少ない人って、意外と当たりくじ?」
ワニオ「派手さを求めなければ、
安定資産です」
ミユ「急に投資の話!」
編集部に、少し笑いが起きた。
愛情表現が苦手な人と、どう付き合えば楽になる?
ミユ「でもさ、
分かったとしても、やっぱりちょっと寂しいときもあるじゃん」
ミユ「こっちは好きって言ってるのに、
相手は何も言わないとかさ」
ミカコ「まあね。
期待すると苦しくなるのは事実」
リク「だから大事なのは、
表現の量を揃えようとしないことだと思います」
ミユ「量を揃えない?」
リク「はい。
“自分は言葉派、相手は行動派”って分かっていれば、
同じ土俵に立たせなくていい」
ワニオ「翻訳を挟むと、関係は安定します」
ミユ「翻訳?」
ワニオ「相手の行動を、
自分の理解できる言語に変換するのです」
ワニオ「連絡が少ない=興味がない、ではなく、
連絡が少ない=平常運転」
ミユ「あー……」
ミユ「勝手に不安になって、
勝手に落ち込んでたパターンだ」
ミカコ「あるある」
リク「それでもどうしても寂しいなら、
責めずに伝えるのが大事ですね」
リク「“もっと言ってほしい”じゃなくて、
“言ってもらえると嬉しい”って」
ミユ「あ、それ全然違うね」
ワニオ「要求ではなく、
希望として提示する」
ミユ「ワニオ、ほんと恋愛興味ない?」
ワニオ「ありません」
ミユ「嘘でしょ。
一番詳しいじゃん」
ワニオは少し考えてから、答えた。
ワニオ「観察はしています。
感情の仕組みとして」
ミユ「なるほど……」
ミユ「じゃあさ、
愛情表現が苦手な人って」
ミユ「分かろうとした人だけが見える優しさを、
持ってる人なのかもね」
誰かが、静かにうなずいた。
まとめ|愛情表現は、得意不得意があるだけ
座談会が終わるころ、
ミユは少しだけ肩の力が抜けた表情をしていた。
ミユ「なんかさ、
愛情表現って“する・しない”じゃなくて、“出し方の違い”なんだね」
ミカコ「そう。
言わない人が冷たいわけでも、
言う人が重いわけでもない」
リク「どちらも、
自分なりの伝え方をしているだけなんですよね」
ワニオ「愛情は、
表現の多さでは測れません」
ワニオ「分かろうとする行為そのものが、
愛情表現になる場合もあります」
ミユは、少し考えてから笑った。
ミユ「そっか。
“言ってくれない”って悩むより、
“どう出てるか”を見ればいいんだ」
愛情表現が得意な人もいれば、苦手な人もいる。
それは欠点ではなく、性格の違いだ。
大切なのは、
自分と相手の“表現の形”を知ろうとすること。
言葉が少なくても、
行動が不器用でも。
ちゃんと向き合おうとする姿勢は、
それ自体が、十分な愛情表現なのかもしれない。

