ナナを満足させるのは誰?
──こいこと。男性ライターたちが、ナナとの仮想デートに挑戦する一大企画が始まった。
相手は、恋愛経験も豊富で姉御肌な女性ライター・ナナ。
デート相手の振る舞い、プラン、言葉選び、気遣い……すべてが試される。
果たして誰が、ナナを「もう一回会いたい」と思わせることができるのか?
トップバッターは、誠実でロジカルな優男──リク。
リク × ナナ 夜のカフェデート編
「今日は、ナナさんの好きなもの、いろいろ聞けたらうれしいです」
──リクは冒頭から“聞き役”に徹する姿勢を見せた。姉御肌で自立した女性には「受け止める器」を見せることが大事だと考えたからだ。
選んだのは、落ち着いた照明の大人向けカフェ。ソファ席があり、他の客の声も気にならない静けさ。ナナが「うるさい場所は苦手」と言っていたのを事前に覚えていた。
「へえ、こういう店、ちゃんと探してくれたんだ? 優しいじゃん」
リクは照れたように笑い、軽く会釈する。
「前におっしゃってたの、ちゃんと覚えてたので」
──話題の選び方にも工夫がある。「無理にウケを狙うより、深く語れる話を」。
そこで彼は、互いの恋愛観や失敗談、理想の関係性など、価値観のすり合わせを意識した話題を展開していった。
「誰かと向き合うって、正解がないから面白いですよね」
「あんた、案外いいこと言うじゃん」
──ナナはどこか嬉しそうに笑った。
デートの終盤、夜の街を少し歩くリクは、焦ってボディタッチや口説きには行かない。
「相手の心に寄り添うことが一番の近道」──そう信じて、言葉だけでナナの心に触れようとしていた。
「今日はすごく楽しかった。ナナさんの話、もっと聞きたくなりました」
「うん。……なんか、こういう時間、久しぶりかも」
──その場を離れる直前、ナナはこうこぼす。
「うん、悪くない。ちょっと真面目すぎるけど、また会ってみてもいいかもね」
──リクの“優しさと誠実さ”が、しっかりナナの心に届いた夜だった。
ソウタ × ナナ 気まぐれ散歩と偶然の出会い編
「ナナさんって、風に似てますよね。気ままで、でも芯がある」
ソウタは、そんなふわっとした言葉でナナを迎えた。
彼が提案したのは「行き先を決めないぶらぶら散歩」。あてもなく歩くことで、ナナの自然な表情を引き出そうという作戦だった。
レトロな路地を歩き、古い本屋を覗き、駄菓子屋でラムネを買う。
「こういうの、昔よく買ったな」
ナナの何気ないつぶやきを、ソウタはしっかり覚えていて、しばらくしてから同じラムネを「はい、これ」と手渡した。
「あんた、さりげなくやるね」
ナナは笑いながらも、その優しさに少し驚いていた。
歩き疲れたころ、小さな港のベンチに腰かけて、海を眺めながら他愛もない会話を重ねる。
「ナナさんの話、風みたいに聞いてたら、いつのまにか僕の心にも入ってた」
「……あんた、いつもそんな感じ?」
ナナは呆れたように笑ったが、表情は和らいでいた。
夕暮れの帰り道、ソウタは「また偶然会えたらうれしいな」とだけ言った。
その曖昧さが、ナナには心地よかった。
──“恋”じゃない。でも、“また会いたい”と思わせる。不思議な余韻が残るデートだった。
ハルキ × ナナ まっすぐすぎる青春デート編
「ナナさんって、すごく綺麗で……あ、いや、なんか、今日ちょっと緊張してて……」
待ち合わせの瞬間から、ハルキはうまく言葉をまとめられずにいた。
だが、そのぎこちなさが、逆にナナには新鮮に映る。
「緊張してんの? そんな顔してたら、こっちが照れるって」
ナナは笑って肩を軽くたたく。
ハルキが選んだのは、昼間の遊園地。大人の女性を相手に遊園地は意外と思えるが、彼には理由があった。
「子どもの頃、こういう場所に来たら、全部がワクワクしたんです。ナナさんと一緒に来たら、また違って見えるかなって」
──無邪気さと情熱。その両方を全力でぶつけるのがハルキ流だ。
絶叫系のアトラクションでは本気で叫び、ナナの笑いを引き出す。
観覧車では少し真面目なトーンで語る。
「ナナさんって、いろんなことを乗り越えてきた人なんですね」
「……まぁね」
「すごいと思います。……俺、そんなふうになりたいなって思いました」
まっすぐな瞳で言われた言葉に、ナナは一瞬だけ視線を逸らした。
──夕方、出口で別れ際、ハルキは立ち止まり、勇気を振り絞るように言った。
「今日は本当にありがとうございました! 俺、次はもっと大人っぽくリードできるように頑張ります!」
「……頑張れ」
ナナは吹き出しながら、軽く拳をコツンと合わせた。
──まだ“男”としては未完成。でも、まっすぐに伸びていくハルキの姿に、ナナはほのかなエールを送っていた。
ケンジ × ナナ 大人の余裕と小粋な夜デート編
「お、今日のナナさん、いつもよりちょいと色っぽいね」
──待ち合わせ場所に現れたケンジは、軽口を交えつつも、視線には敬意とやわらかさがあった。
ナナは少し目を細めて笑う。
「そういうセリフ、誰にでも言ってるんじゃないの?」
「いやいや。言いたくなる相手が、そう多くいないって話」
ケンジが選んだのは、都心の小料理屋。
木の温もりがあるカウンターで、ひとつひとつ丁寧に作られる料理を楽しむ、そんな夜。
「ここ、味だけじゃなくて、人の気配もいい。カウンター越しに板前さんの所作見てると、なんか落ち着くんだよな」
──ケンジは場所の“空気”も大切にする。そこにナナを連れてきた意味がある。
「うん、わかる。……ちょっと静かなとこで、ちゃんと話すのも悪くないね」
食事中、ケンジはあくまで自然体。
ナナの過去の武勇伝にも、軽く笑いながら「ナナさんらしいわ」と受け止める。
「俺ね、“強い女”って言われてる人が、ふっと肩の力抜く瞬間が、いちばん好きなんだ」
「……またそうやって、うまいこと言う」
ナナはグラスを口元に運びながら、頬をゆるませる。
──そして帰り道。ライトアップされた並木道をゆっくり歩くふたり。
「ナナさん、もし今日みたいな日が月イチであったら、悪くないでしょ?」
「……そうね。ま、あんたの都合が合えばだけどね」
──ナナはそう返しつつ、ケンジの隣を心地よさそうに歩いていた。
「今日はありがとう。……なんか、ちゃんと“女”として扱ってもらえた気がしたわ」
「そりゃ当然でしょ。ナナさんは、素敵な女性だから」
──その言葉には、一切の照れも誇張もなかった。
──ケンジの“大人の余裕”と“温かなまなざし”が、ナナの心に優しく染みこんでいった夜だった。
ユウト × ナナ 落ち着きと信頼で寄り添うデート編
「ナナさん、歩きやすい靴にしてもらって、ありがとうございます」
──そう言ってユウトが案内したのは、緑豊かな庭園と小さな美術館をめぐる穏やかなデート。
「こんなにのんびりしたデート、久しぶりかも」
ナナは少し肩の力が抜けたように笑った。
ユウトは、最初から“特別感”ではなく“信頼感”をテーマにしていた。
「ナナさんに、日常を忘れてもらう時間を届けたい」──それが彼の考える理想だった。
静かな美術館では、絵の前で語り合うこともあれば、沈黙のまま同じ絵を見つめる時間もある。
無理に盛り上げようとしない、安心していられる空気。
「話さなくても、ちゃんと伝わるってあるよね」
ナナがぽつりとつぶやく。
「ええ。……ナナさんといると、そういう時間が心地いいって思えるんです」
──昼食は、庭園の奥にある隠れ家風のカフェで。
予約していた窓際の席で、自然の景色を眺めながら、穏やかな会話を交わす。
「ナナさんって、頼られることが多いと思うんですけど……
ちゃんと甘えたり、弱音を吐いたりできる相手って、いますか?」
「……そういうの、聞いてくる人あんまりいないのよね」
──ナナは、一瞬だけ言葉を失って、すぐに笑ってごまかした。
「でも、もしそういう相手がいるとしたら、安心して一緒にいられるかも」
夕暮れ時、帰り道にユウトはあえて“また会いたい”とは言わなかった。
「今日のこと、ナナさんが少しでもいい思い出にしてくれたら嬉しいです」
──言葉は控えめでも、目には誠実さと想いがにじんでいた。
「……あんた、ほんと不思議な人ね。
派手さはないけど、すごくあったかい。……また、会ってもいいかも」
──ユウトの“静かな寄り添い”は、確かにナナの心の奥へ届いていた。
ナナの感想──一番を決めるなんて、野暮かもしれないけど
──というわけで、5人の男性ライターたちとの仮想デート、全部終えました。
いやもう、ぶっちゃけ楽しかった!
それぞれ個性があって、「あ〜、こういう人いるわ」ってリアルに感じたし、
私のこと、ちゃんと考えてくれてるのが伝わってきて、ちょっと照れたくらい。
リクの“静かな誠実さ”には安心感があったし、
ユウトの“心の機微に寄り添う”感じは、たぶん一番グッときた。
ケンジはねぇ……もうずるいよね。大人の余裕と色気、これはちょっと反則(笑)
でも、ふざけたまま終わらないところがニクいのよ。
ソウタは、なんだろうね。
一緒にいたら、景色が違って見える気がするの。
一番“素の自分”でいられそうだなって思った。
で、ハルキは……あの子、かわいすぎない!?(笑)
思わず母性本能がくすぐられそうになったけど、
でもちゃんと私を楽しませようと一生懸命で、正直キュンとしたよ。
でね、「誰が一番よかった?」って聞かれそうだけど、
それぞれ違う魅力があるし、そもそも“私を満足させるため”に全力で向き合ってくれたこと自体が、いちばん嬉しかった。
だから一番は、全員。
……って、うまくまとめたつもりだけど、どう?
またこういうの、やってみてもいいかもね。
──ナナでした。
あとがき──満足させるって、簡単じゃない
今回は、ナナとの仮想デートというユニークなテーマに、5人の男性ライターたちが挑戦しました。
読者のみなさんは、誰のデートが一番「会ってみたい」と思えたでしょうか?
恋愛に正解はないけれど、
「相手を思いやる気持ち」「場の空気を読む力」「自然体の魅力」──
どれも、恋においてとても大切なことなのかもしれません。
ナナの心を最も動かしたのは誰だったのか?
それは、読む人によっても変わるはず。
これを読んで、「あ、自分も誰かを笑顔にできるようなデートしてみたいな」
そう思ってもらえたら、ライターたちもきっと報われます。
今後も、「こいこと。」ではこうした企画をどんどん展開していきますので、お楽しみに!