「合コンで下心全開の男を見て、なんだか虚しくなった夜」【アカリ文学】

ねぇ、たまにあるんだよね。いつものテンションじゃなくて、ちょっと「静か」な夜。

今日はそんな気分だから、アカリもちょっとだけ文学してみるね。

合コンで出会った男の子のこと、ぜんぶがイヤだったわけじゃない。でも、なんかこう、心がヒュッてなる瞬間があってさ。

──あの日の帰り道に感じた、あの空虚さ。

これは、ちょっとだけ切ない「夜」の話。

目次

光ってるのはネオンだけ。──合コンで、心が冷えた夜

ネイルも髪もばっちりだった。おニューのワンピは、通販サイトのランキング1位。 鏡の中の私は、それなりに「いい感じ」に見えたと思う。

大学の友達に誘われて、ちょっと背伸びした街の合コンに行った。 駅ビルを出てすぐの、ガラス張りのダイニングバー。 ネオンが反射する窓越しに、笑い声が漏れてた。

「ウチら、いけるっしょ?」 そんな友達の軽さに合わせて、私も笑ってた。

でも、どこかで冷めてた。 それが、最初からだったのか、それとも途中からだったのかはよく覚えてない。

「可愛いね」って、どこを見て言ってるの?

向かいに座った男の人は、第一印象は悪くなかった。 スーツ姿もそれなりに決まってて、笑い方も柔らかい。

でも、「それ、俺が奢るからさ」「彼氏いないの? えー、もったいない」 そんなセリフがテンプレみたいに出てくるたび、 まるで私が「恋愛対象」ってより「今日のターゲット」みたいに聞こえてきた。

目が笑ってないの、わかる。 視線が、顔じゃなくて、胸元のネックレスに落ちてた。

私、こういうの慣れてるはずだったのに、 なんでかそのときは、笑えなかった。

ノンアルのカクテルが、やけに甘ったるくて、喉に残った。

笑顔って、なんのためにあるんだろ

場がしらけないように、 “いい子”って思われるように、 私たち、笑うのうまくなった気がする。

ほんとは笑いたくなかった。 「それ、何点もらえるんすか?俺的には満点ですけどね」 っていう寒いトークに、心がまったく動かなかった。

でも、口角だけは反射的に上がる。 それって、ずっとそうしてきたから。

“楽しかった”ってことにしておけば、 誰も傷つかないし、自分の中も整理できる。 そう思ってた。けど、この夜は違った。

「アカリちゃん、笑うとこ、そこじゃないよ〜」 笑いながら、腕に手を伸ばしてきたその瞬間、 背中がすっと冷えた。

……ねぇ、なんで私、ここにいるんだっけ?

帰り道、ひとりに戻る瞬間

駅までの道、ヒールの音がカツンカツンって響いてた。 夜風が少しだけ冷たくて、さっきまでの笑い声が嘘みたいに思えた。

「あー、疲れた」 声に出してみると、思ったよりも乾いていた。

合コンの帰り道って、 誰かとLINEが続いてたこともあったし、 二次会にそのまま消えてった夜もある。

でも今日は、誰からもメッセージは来ない。 というか、来なくていいって思ってる自分がいる。

ふと、スマホの画面に映った自分の顔。 目の奥が笑ってなかった。

「なんで、あんなに笑ってたんだろ」

下心って、わかるよ。 男の子も、そりゃそういう目で見たり、言ったりするでしょ。 でも、それしかない感じがさ。 人として見られてないみたいで、 なんか、消耗するだけだった。

あの人たちは、私の“名前”を覚えてるかな。 それとも、“アカリちゃん”っていう記号で片付けるのかな。

ねぇ、私って、誰だったんだろう。

それでも恋をしたいと思う理由

帰りの電車、窓に映る自分と目が合った。

「恋って、なんなんだろうね」 誰に向けたわけでもなく、そう呟いた。

欲しがられることは、たしかに悪くない。 でもそれって、“私”じゃなくてもよかったんじゃないかって思う瞬間が、 心を空っぽにする。

それでも、やっぱり恋をしたいって思うのは、 たぶん、 誰かとちゃんと笑いたいからなんだと思う。

目を見て、くだらない話をして、 ちゃんと覚えていてくれて、 私の機嫌とか、好みとか、 ちっちゃいことを大事にしてくれるような、 そんな人と。

触れられるよりも、 名前をちゃんと呼ばれるほうが、 あったかいって思える夜もある。

今日の私は、 ちょっと寂しくて、 でも、次はもっとまっすぐに、 誰かを好きになりたいって、思ってる。

夜が明けるころに

スマホの通知も切って、 ベッドに倒れ込んだまま、眠れなかった。

頭に浮かぶのは、さっきの男の顔でも、 あの場のくだらない会話でもなくて。

「次に会う人が、ちゃんと私を見てくれる人だったらいいな」 そんなことを、心の中で願ってた。

まぶたの裏で、朝が滲んでいく。

ギャルって、軽そうって思われることもあるし、 私も、笑って流すことが多いけど。

ほんとはけっこう不器用で、 誰かにちゃんと大事にされたいって、 ずっと思ってる。

だからたぶん、今日のこの気持ちも無駄じゃない。

好きにならなかった誰かに、 心が虚しくなった夜が、

「ちゃんと好きになれる誰か」に出会えたとき、 そっと背中を押してくれる気がするんだ。

……おやすみ。

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