夏休みって、なんとなく8月が本番って思われてるけど。
俺は、7月中がいちばん“夏休み”してる気がする。
8月ももちろん暑いし、海とか花火とかあるけど、お盆すぎたらもう、夏は実質終わりなんじゃないかって、毎年思う。
そんなことを、コンビニの帰り道でアイス溶かしながら考えたりする。
誰にも言わないけど、夏ってちょっと寂しい。
7月の夏って、自由だった
7月って、まだ何も終わってない感じがして、無敵だった。
部活のあと、制服のまま友達とコンビニ寄って、アイス食べながら歩いた道とか。 部室の汗くさい空気も、蝉の声もうるさくて、でも全部ひっくるめて「夏!」って感じだった。
太陽の下にいる時間が長くて、夜の8時でもまだ外が明るいのが、なんか嬉しかった。
あと、なんとなく“恋の予感”みたいなものが、ふわっと空気に混ざってるのも、7月だった。
LINEの通知が鳴るだけでちょっとドキッとして、 「もしかして」「いや違うか」って思う、その時間も悪くなかった。
あの子と話したのも、たまたま同じタイミングで登校日だった7月の朝だった。 2回くらいしか話してないのに、やけにその時間が長く感じたのを、今も覚えてる。
7月は、全部が可能性でできてた。 まだ終わらない。まだ始まってもいない。 ただただ“今”が広がってた。
お盆をすぎると、空気が変わる
8月に入っても、最初のうちはまだ「夏、続いてるな」って感じがある。
でも、お盆をすぎたあたりで、急に空気が変わる。
夜の風がちょっと冷たくなるし、夕方の空がやけに高く感じる。 セミの声も少なくなって、代わりにコオロギの声が混ざってくる。
コンビニに並ぶアイスの棚も、ちょっとずつ秋モードに切り替わってるのに気づいて、 「うわ、やめてくれ」って、心の中で叫ぶ。
友達のグループLINEも静かになる。 部活の練習試合も減って、急に「宿題やばくない?」みたいな現実の話が増える。
“あと半分ある”って思ってた夏休みが、“もうあとちょっとしかない”に変わる。
なんていうか、あの感じがいちばんきつい。
会えるかもって思ってた人にも、なんとなく連絡できなくなって、 「また会えたらいいな」って思ってたのに、結局何もしないまま、お盆が過ぎる。
気づいたら、夏がこっちの背中を追い越してる。
あの子のことを思い出す
7月に、ほんの少しだけ近づけた気がした子がいた。
たまたま登校日がかぶって、靴箱の前で少し話して、 そのあと「暑いですね〜」って笑いながら校門を出ていった。
それだけなのに、なんかずっと印象に残ってて。
その日の帰り道は、意味もなく同じアイスを買って、 ベンチに座って、スマホ見ながら「また会えるかな」とか考えてた。
連絡先は、共通のグループLINEにいるだけ。 個別で送る勇気はなかった。
8月に入ってからも、何回か「どうしてるかな」って思ったけど、 理由もないのにメッセージを送るのは、なんだか怖くて。
“なんとなく会えたらいいな”って思ってた。
でも、会えなかった。
お盆をすぎて、気づいたら夏の空気が変わってて、 「今さら連絡してもな……」って思ったら、もう全部が遠くなってた。
何かがあったわけじゃないのに、終わってしまったような感じ。 でも、なにも始まってなかったから、終わったって言うのもおかしい。
夏って、そういう“曖昧なまま終わるもの”を、いっぱい抱えてる。
夏って、ずるい
夏ってさ、ちょっとずるいと思う。
一番いい景色を見せてくるのに、それが一番早く終わる。
空が青くて、光が強くて、匂いが濃くて、 全部が「今しかない」って言ってくるくせに、 こっちがその気になった頃には、もうフェードアウトしていく。
あの子のことも、そうだった。
思い出したら、また会いたいなって思うくせに、 日付が進むごとに、連絡しづらくなって、 気づいたら「もういいか」って思ってる自分がいる。
でもたぶん、それって「もういい」んじゃなくて、「もう戻れない」だけなんだ。
夏って、記憶に残るものが多いけど、それ以上に“逃したもの”も多い気がする。
あのとき、ちょっとだけ勇気を出せば。 その一歩があれば、何か変わったのかもしれない。
でも、夏のスピードに、俺の心が追いつけなかった。
でもやっぱり、7月が好きだ
いろいろ思い返して、ちょっと苦しくなることもあるけど。
それでもやっぱり、俺は7月の夏がいちばん好きだ。
全部がこれからで、まだ失うものもなくて。 意味もなく笑えたり、何気ない会話がやたら嬉しかったり。 そんな時間を一度でも過ごせたら、それだけで夏に感謝したくなる。
来年もまた、あの空気が来るなら。 また同じアイスを買って、同じ場所を歩いて、 「もしかしたら」って思える誰かと出会えたら。
そのとき、今年の夏のことも、ちゃんと笑って思い出せる気がする。
あの子にはもう連絡できないかもしれないけど、
でもあの時間があったことは、本当に嬉しかった。
7月の夏が好きだと思えるかぎり、 俺はきっと、また何度でも恋ができる。