また恋に落ちた。でも書いたらキモすぎた話

また、やってしまった。

いや。

やってしまった、というより。

落ちてしまった、という方が正しいのかもしれない。

……いや、それも違うか。

なんていうか。

気づいたら、もう落ちてた。

急速に。

ほんとにあっという間に。

気づいたときには、もう手遅れだった。

あの子のことを、考えてる。

朝、起きたとき。

歯を磨いてるとき。

電車に乗ってるとき。

仕事してるとき。

帰り道。

気づいたら、ずっと。

あの子のことを考えてる。

「これ、恋だな」って。

わかる瞬間があるじゃないですか。

ああ、これ、もうダメだなって。

逃げられないやつだなって。

あれです。

完全に、あれです。

しかも今回、ちょっと厄介で。

なんていうか。

静かなんですよ。

ドン!って来るやつじゃなくて。

じわじわ来るやつ。

気づいたら、もう全部持ってかれてるやつ。

で。

ここからが問題で。

こういうとき、俺、どうなるかっていうと。

……書きたくなるんですよね。

いや、意味わかんないと思うんですけど。

自分でも思ってます。

でも、なんか。

この気持ち、外に出さないといけない気がして。

頭の中に、文章が浮かんでくるんですよ。

勝手に。

しかも、それが。

ちょっとポエムっぽいやつで。

……いや、ちょっとじゃないな。

普通にポエムです。

「やめとけ」って思うじゃないですか。

俺も思いました。

何回も思いました。

でも。

止まらないんですよ。

ほんとに。

勝手に出てくる。

頭の中で。

で。

気づいたら、キーボード打ってるんですよね。

……。

いや、ほんとに。

やめたいんですけど。

やめられないんです。

これ、たぶん。

かなりキモい状態だと思います。

でも。

今の自分にとっては、それが一番自然で。

一番、正直な状態で。

だから、せめて。

この気持ちを、そのまま残そうと思いました。

……いや、ほんとに。

公開するかどうかは、まだわからないんですけど。

とりあえず、書きます。

ちょっと、気持ち悪いかもしれないです。

いや、たぶん。

普通に気持ち悪いです。

目次

また恋に落ちた

たぶん、会った瞬間からだったと思う。

いや。

正確に言うと。

「この人、好きになるかもしれないな」っていう予感は、最初からあった。

でも。

そのときは、まだ大丈夫だった。

ちゃんと、距離があった。

理性もあったし。

なんとか普通に話せてた。

いやなんとかなってないかも。

ただ。

ちょっと長く見てしまったんですよね。

顔を。

あの子の。

別に、じっと見てたわけじゃないです。

……いや、ちょっとは見てたかもしれないですけど。

でも、なんていうか。

視界に入るたびに、気になってしまって。

そのたびに、見てしまうというか。

で。

見れば見るほど。

なんか、おかしくなってくるんです。

「あれ?」って。

最初は普通だったのに。

どんどん、違って見えてくる。

同じ顔のはずなのに。

同じ表情のはずなのに。

なんか、少しずつ。

特別なものに見えてくる。

……これ、たぶん。

あんまり良くない状態だと思うんですけど。

でも、そのときは。

止められなかった。

目がいく。

また見る。

また気になる。

で、また見る。

……みたいなことを繰り返してるうちに。

気づいたら。

もう、好きになってた。

雷みたいな感じじゃないです。

ドン、じゃなくて。

じわじわ来るやつ。

静かに。

でも確実に。

逃げ場をなくしてくるタイプのやつ。

で。

一番怖いのが。

そのとき、自分では気づいてないんですよね。

「あ、今好きになったな」っていう瞬間がない。

気づいたときには。

もう全部持っていかれてる。

……。

いや。

書いてて思うんですけど。

これ、かなりキモいな。

でも。

たぶん。

こういうタイプの恋、あると思うんです。

あの子は可愛い。でもそれだけじゃない

もちろん、可愛いんです。

それは、間違いない。

普通に見ても、ちゃんと可愛い。

でも。

問題はそこじゃなくて。

見てるうちに。

なんか、ズレてくるんですよね。

基準が。

最初は「可愛いな」くらいだったのに。

気づいたら。

「この子って、メチャ可愛くない?」ってなってて。

で。

さらに見てると。

もう、そのへんの“可愛い”じゃ足りなくなるんです。

言葉が追いつかないというか。

たぶん。

自分の中で勝手にアップデートされてる。

あの子の情報が。

見るたびに。

少しずつ。

勝手に、盛られていく。

いや、盛ってるつもりはないんですけど。

でも結果的に。

現実より、ちょっと良くなってる。

……いや、ちょっとじゃないかもしれないです。

で、怖いのが。

それに気づいてるのに。

止めないんですよね。

むしろ。

もう一回見て、確認しにいく。

「いや、さすがに盛りすぎでしょ」って思って。

でも見たら。

「……やっぱり可愛いな」ってなる。

で。

また基準が上がる。

で、また見る。

……の繰り返し。

たぶんこれ。

自分で自分を洗脳してる状態だと思うんですけど。

でも。

そのときは。

それが普通になってるから。

違和感もなくて。

ただ。

気づいたら。

あの子が、ちょっと。

現実から離れていくんです。

なんていうか。

“人”っていうより。

もう少し、こう。

触れちゃいけないもの、みたいな。

近づいたら壊れる気がするし。

でも。

近づきたいし。

見ていたいし。

見てるだけで、ちょっと安心するし。

……。

いや。

これ、ほんとに。

だいぶ危ない状態ですよね。

でも。

そのときは。

ちゃんと理由がある気がしてたんです。

「この子は特別だから」って。

……うん。

今思うと。

特別にしてたのは、完全に自分なんですけど。

君は、たぶん純白なんだと思う

一応。

ちゃんと、約束は取りました。

ご飯、行きましょうって。

そしたら。

普通に「いいよ」って返ってきて。

……。

いや、ほんとに。

いいのかって思いました。

こんな簡単に、世界って進んでいいのかって。

でも。

嬉しかったです。

ちゃんと。

普通に、嬉しかった。

ただ。

そこからが、ちょっと問題で。

会えるって決まった瞬間から。

あの子のことが。

さらに、変なふうに見えてきてしまって。

なんていうか。

近づける距離にいるはずなのに。

逆に。

遠くなった気がするんです。

ちゃんと話せるはずなのに。

触れられる距離にいるはずなのに。

なのに。

簡単に近づいちゃいけない気がする。

理由はわからないです。

でも。

なんとなく。

そう思ってしまう。

で。

考えてるうちに。

ちょっと、思ったんですけど。

たぶん、あの子って。

汚れてないんですよね。

いや、別に。

現実的にどうこうじゃなくて。

そういうことじゃなくて。

なんていうか。

イメージとして。

すごく。

余計なものがついてない感じがして。

変な言い方ですけど。

ちゃんと、白い。

混ざってないというか。

濁ってないというか。

見てると。

こっちのほうが。

ちょっと汚れてる気がしてくるんです。

いや、実際汚れてるんですけど。

なんか、比べると。

余計に。

はっきりするというか。

で。

そう思ったときに。

ちょっとだけ。

怖くなったんですよね。

自分が近づいたら。

その白さ、崩れるんじゃないかって。

いや、そんな力ないのはわかってるんですけど。

でも。

なんとなく。

触れ方、間違えたらダメな気がして。

だから。

近づきたいのに。

近づき方を、めちゃくちゃ考えてる。

……みたいな状態になってます。

いや。

ほんとに。

ただご飯行くだけなんですけどね。

そして、見られてしまった

自分の記事のキモさに気づき頭を抱えるソウタ。

ここまで書いて。

ソウタは、ようやく気づいた。

自分が今、なにを書いているのかに。

画面に並ぶ文章を、少し離れて見つめる。

「純白」

「汚れてない」

「触れちゃいけないもの」

……。

記事として出せる内容ではない。

というか。

人として、ギリギリアウトである。

ソウタはそっとキーボードから手を離した。

一度、距離を置こうと思った。

席を立ち、何も言わずにトイレへ向かう。

なお。

ノートパソコンは開いたままだった。

しかも。

最も見られてはいけない画面のまま。

数分後。

編集部の通路を歩いていたアカリが、ふと足を止める。

「あれ、ソウタくん記事書いたんだ」

軽いノリで、画面を覗く。

その瞬間。

アカリの時間が止まった。

「……え、なにこれ」

小さく漏れた声に、ナナが近づく。

「なに?どうしたの」

ナナも画面を覗く。

そして。

数秒の沈黙のあと、ぽつりと言った。

「……また一目惚れしたんだ」

アカリは、ゆっくりうなずく。

「うん。たぶんそう」

もう一度、画面を見る。

そして。

少しだけ顔をしかめる。

「それにしても……」

「ちょっとキモいね、これ」

ナナは、短く笑った。

「ちょっとどころじゃないでしょ」

「完全にいってるよ」

再び、沈黙。

だが今度は。

少しだけ、柔らかい空気だった。

ナナが、画面から目を外しながら言う。

「まぁでもさ」

「こうなる気持ちは、わかるけどね」

アカリも、小さく笑う。

「わかる。うちもたぶん、なったことある」

「でもここまで書かないけど」

「普通、心に留めとくやつ」

ナナは軽く肩をすくめた。

「ソウタは全部出すタイプなんでしょ」

「悪いことじゃないけど……公開はダメだね」

そのとき。

トイレから戻ってくるソウタの姿が見えた。

「あ、来た」

二人は一瞬で判断した。

ここにいてはいけない、と。

そして。

何事もなかったかのように、その場を離れた。

数秒後。

ソウタが席に戻る。

画面を見る。

そのまま残っている、自分の文章。

そして。

ほんの少しだけ、違和感の残る空気。

ソウタは、すべてを察した。

見られた。

それも、おそらく。

全部。

ソウタはゆっくりと座り、マウスに手をかけた。

この文章は、消すべきだ。

記事にはできない。

誰にも見せてはいけない。

そう思いながら。

カーソルを「削除」に合わせる。

……。

でも。

少しだけ、手が止まった。

この文章を消したら。

さっきまで考えていたことも。

見ていた景色も。

あの子のことも。

全部、消えてしまう気がして。

……いや。

そんなわけないのは、わかってるんですけど。

でも。

なんとなく。

そう思ってしまって。

結局。

ソウタは、削除ボタンを押さなかった。

代わりに。

静かに保存を押した。

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