2月の夕方。
外はまだ寒いのに、空の色だけが少しずつ春に近づいている。
ファーストフード店の窓際席。
学校帰りの高校生、仕事終わりの社会人、いろんな時間が交差する中で、
アカリ、ハルキ、シュウは並んで座っていた。
特別な集まりじゃない。
「なんとなく寄った」だけの、いつもの3人。
でも、2月というだけで、
なぜか話題は少し先のことに向かってしまう。
まだ終わっていないのに、
もう「終わり」を意識してしまう季節。

2月なのに、もう「3月」を考えてしまう理由
アカリ: ねえ、まだ2月なのにさ。
なんかもう「3月っぽい空気」ない?
ハルキ: わかる。
終わってないのに、終わる前提で話し始める感じある。
シュウ: それな。
カレンダー見て「あとちょっとだな」って思った瞬間、
もう気持ちが先行するんだよね。
アカリ: 別れの季節って言われるの、3月なのにさ。
実際しんどいのは2月じゃない?
ハルキ: まだ一緒にいるのに、
頭のどこかで「この時間、有限だな」って考えちゃう。
シュウ: 2月って、
「まだ大丈夫」と「もうすぐ終わる」の間なんだよね。
ポテトの湯気が少し冷めてきて、
3人の会話も、自然と静かになっていった。
別れって、泣く瞬間より「じわじわ来る」
シュウ: 別れってさ、
ドラマみたいにその場で号泣するより、
あとから来るタイプじゃない?
アカリ: あー、わかる。
そのときは意外と普通で、
帰り道とか、次の日に急にくるやつ。
ハルキ: 夜とかヤバいよね。
スマホ見て、もう連絡できないんだって思った瞬間。
シュウ: 「明日また話せばいいや」が、
もう存在しないって気づく瞬間。
アカリ: だから2月ってさ、
まだ一緒にいられるのに、もう失う準備をしてる感じ。
ハルキ: 別れは3月だけど、
心は2月から片付け始めてるんだと思う。
紙コップの中の氷が溶けきって、
ドリンクの味が少しだけ薄くなっていた。
3月は、好きな人と離れる季節でもある
アカリ: 3月ってさ、
卒業とか異動とか退職とかで、
好きな人と物理的に離れちゃう人、多いよね。
シュウ: うん。
付き合ってなくてもキツいやつ。
ハルキ: 片思いでもさ、
「また会える」がなくなるの、結構くる。
アカリ: わかる。
告白してなくても、
心の中ではちゃんと恋してたから。
シュウ: 逆に恋人同士でもさ、
環境変わると一気に現実くるよね。
ハルキ: 遠距離とか、時間合わなくなるとか。
好きだけじゃ足りなくなる瞬間。
アカリ: 3月って、
「続ける」か「手放す」かを選ばされる月なのかも。
テーブルの上で、ストローの袋をくるくる回しながら、
3人はそれぞれの「名前のない恋」を思い出していた。
告白しなかった人、告白して別れた人
シュウ: 3月ってさ、
「言わなかった人」と「言って終わった人」、
両方いる季節だと思う。
アカリ: あー……わかる。
言わなかった人は、ずっと心に残るし。
ハルキ: 言った人は言った人で、
結果がハッキリ残るんだよな。
シュウ: でもさ、
どっちが正解とかじゃないよね。
アカリ: うん。
あのときはそれが精一杯だったってだけ。
ハルキ: 告白できなかったのも、
怖かったからだし。
シュウ: 告白して別れたのも、
好きだったからだし。
少し沈黙が落ちる。
店内のBGMと、ポテトが揚がる音だけが流れる。
アカリ: 3月の恋ってさ、
どれも未完成のまま終わる感じがする。
ハルキ: でも、その未完成さが、
あとで思い出になるんだよな。
シュウ: 「あれは青春だったな」って、
何年か後に気づくやつ。
3人はそれ以上深掘りせず、
それぞれの飲み物に口をつけた。
3月で終わって、4月でまた始まる
アカリ: でもさ、
3月って別れの季節って言うけど、
4月は出会いの季節でもあるよね。
シュウ: うん。
環境が変わるだけで、
急に世界が広がる感じある。
ハルキ: クラス変わったり、
職場変わったり、
バイト先変わったり。
ハルキ: 正直、最初はめんどいけど。
アカリ: わかる(笑)
でもさ、
その「めんどい」の中に、
新しい人とか、空気とか混ざってくるんだよね。
シュウ: 3月の恋が終わった直後って、
もう恋とかいいかなって思うけど。
シュウ: 4月になると、
知らないうちに、
誰かを目で追ってたりする。
ハルキ: それ、めっちゃある。
「もういい」って言ってるのに、
全然よくないやつ。
アカリ: 別れた恋があったから、
次の出会いがちょっとだけ大人になるんじゃない?
シュウ: うん。
前より慎重だったり、
前より素直だったり。
ハルキ: 同じ4月でも、
去年とは違う自分で迎えてる感じ。
店内の窓から、
少し冷たい2月の夕方が見える。
アカリ: 3月で終わった恋も、
無駄じゃなかったって思えるのって、
4月が来るからかもね。
シュウ: 別れがあるから、
出会いがちゃんと響く。
ハルキ: ……青春って、
ずっと続くんじゃなくて、何回も始まるんだな。
ずっとじゃなくても、いまが楽しい
ハルキ: でもさ、
こうやって3人でダラダラ話すの、
いつまで続くんだろうなって思うときある。
アカリ: え、急にどうした(笑)
シュウ: まぁでも、わかる。
この感じが当たり前じゃなくなる日は来るよね。
ハルキ: 別にネガティブじゃないんだけどさ。
ずっとこんな風につるめたらいいのになって。
アカリ: それは思う。
でもさ、
「ずっと」って言葉にすると、
急に重くならない?
シュウ: うん。
だから今くらいがちょうどいい。
シュウ: 連絡しなくても気まずくならないし、
会えば普通に戻れるし。
ハルキ: それな。
無理して続けなくても続いてる感じ。
アカリ: たぶんさ、
この先それぞれ忙しくなって、
会う頻度も減るかもしれないけど。
アカリ: それでも、
「あの頃楽しかったよね」って笑える関係なら、
それでよくない?
シュウ: うん。
青春って、
続けることより、覚えてることなのかも。
ハルキ: じゃあ今は、
ちゃんと覚えとかなきゃな。
アカリ: 写真撮る?(笑)
シュウ: いや、それは違う。
3人で笑って、
また他愛もない話に戻る。
「ずっと一緒」じゃなくても、
「いま一緒」が楽しいなら、それでいい。
夕方のファーストフード店に、
そんな軽やかな青春が、静かに流れていた。




