土曜の午後、街の喫茶店。
ソウタは学生時代の友達・サチオと久しぶりに顔を合わせていた。
気づけば会うのは2年ぶり。お互いに少し大人びたけれど、
笑い方やテンポは昔と変わらない。
コーヒーを飲みながら、近況報告の流れで自然と話題は“恋バナ”へ。
久しぶりの再会、恋の話になった
ソウタ:「いや〜最近、全然出会いがなくてさ。職場もほぼ男ばっかだし、
学生のときみたいに自然に恋する感じがなくなったんだよね。」
サチオ:「わかるわ。でも俺、この前ついに彼女できたぞ。」
ソウタ:「え、マジで!? いつの間に?」
サチオは少し照れたように笑って、スマホを取り出した。
サチオ:「実はさ、マッチングアプリで出会ったんだよ。」
ソウタ:「え、アプリ? なんか意外。そういうの、やるタイプだったっけ?」
サチオ:「いや、全然(笑)。最初は興味本位だったんだけどさ。
なんか思ってたより普通で、ちゃんとした人多いんだよ。
趣味とか考え方とか、意外と合う人もいて。」
ソウタ:「へぇ〜。なんか、“出会い系”ってちょっと怖いイメージあったけど…」
サチオ:「わかる。でも今のアプリって、わりと健全だよ。
たとえば共通の趣味とかでマッチできたりしてさ。
自然に“友達っぽく”話せるから、ガツガツ感もない。」
ソウタ:「なるほどね…。でも、どうなん? 本当に付き合えるの?」
サチオ:「うん、付き合える。むしろ、“出会いに真剣な人ほどアプリ使ってる”気がする。」
コーヒーの湯気がゆらめく。
ソウタは少しだけスマホに視線を落とした。
“出会いがない”とぼやいていた自分に、何か小さなヒントが灯った気がした。
サチオが語る“アプリ恋愛”のリアル
サチオ:「最初はさ、ちょっと怖かったよ。なんか“ネットで恋人探す”って、
少し抵抗あるじゃん? でも、使ってみたら普通に“人として話せる”空間だった。」
ソウタ:「へぇ〜。どういう感じなの? メッセージ送りまくる感じ?」
サチオ:「いや、意外と落ち着いてる。プロフィールとか趣味で繋がるから、
話題が自然に生まれるんだよ。『映画好きなんですね』とか、
『猫飼ってるんですか?』みたいに、会話の始まり方が軽い。」
ソウタ:「あ〜、なんか“無理にナンパ”みたいな感じじゃないんだね。」
サチオ:「そうそう。それに、アプリって“出会いを求めてる人”が集まってるから、
遠回しな探り合いが少ない。目的が一緒だから、最初から話が早いんだ。」
ソウタ:「なるほど。確かに“出会いの前提”があると、変な駆け引きいらないもんな。」
ソウタは軽く笑いながらも、どこか真剣な顔で聞いていた。
アプリという単語に少し偏見があったけれど、
サチオの話を聞いているうちに、それが“恋を始めるきっかけ”のひとつなんだと感じ始めていた。
サチオ:「ちなみに、俺が彼女とマッチした時も最初は“雑談”から。
趣味のカフェ巡りが同じで、『今度おすすめ教えてください』って流れで、
自然にごはん行くことになった。」
ソウタ:「へぇ、めっちゃ健全じゃん(笑)。
なんか、もっとドライな感じかと思ってた。」
サチオ:「いや、意外と真剣な人多いよ。
もちろん軽い人もいるけど、そういうのは話してればすぐわかる。
大事なのは、“どんな人と繋がるか”を自分で選べるってこと。」
ソウタ:「なるほどなぁ…。それって、日常よりもチャンス多そうだね。」
サチオ:「うん。職場とか友達の紹介だけが“出会い”じゃない。
アプリの世界にも、ちゃんとリアルな恋はあるんだよ。」
その言葉に、ソウタは静かに頷いた。
恋が遠ざかっていた時間の中に、少しだけ風が吹き込んだような気がした。
恋を始める勇気は、アプリの“軽さ”からでもいい
サチオ:「あとはね、アプリって“恋に不器用な人”にも向いてると思う。
リアルで声かけるの苦手な人とか、恋愛ブランクがある人とか。」
ソウタ:「たしかに…。いきなり飲み会とか街コンとか、
テンション高い場所ってちょっと疲れるんだよな。」
サチオ:「そうそう。アプリなら、自分のペースでやりとりできるし、
“いきなり会う”じゃなくて“まずは話してみる”って距離感がちょうどいい。
恋を始めるハードルが低いんだよ。」
ソウタ:「なるほどね。
“軽い気持ち”で始めても、ちゃんとした出会いになることもあるってことか。」
サチオ:「そう。むしろその“軽さ”が大事かもしれない。
真剣すぎると、相手にもプレッシャーかけちゃうし。
『いい人に出会えたらいいな』くらいが、ちょうどいい温度感。」
ソウタは、テーブルの上に置いたスマホを眺めた。
画面に映るのは、使い慣れたSNSのアイコン。
その横に“マッチングアプリ”という見慣れない言葉が頭をよぎる。
ソウタ:「なんかさ、恋って“始めよう”って決めた瞬間に動く気がする。
ずっと待ってても、誰かが勝手に現れるわけじゃないもんな。」
サチオ:「そうそう。
恋って、チャンスを“掴みにいく”かどうかで全然違う。
たとえ最初は半信半疑でも、行動すれば世界が広がるから。」
ソウタ:「……ちょっと、やってみようかな。」
そう呟いたソウタの声に、サチオはにやりと笑った。
「その気になったら、まずプロフィール写真だな」と冗談交じりに言うと、
二人の笑い声が、夕方の喫茶店に静かに響いた。
新しい恋が始まる音は、思っていたよりも静かで、あたたかかった。

