あの日の恋が、ページの隙間から顔を出した──静かな再会

忘れたつもりだった。きちんと終わったはずだった。でもある日、何気ない日常の中に、過去の恋がふいに立ち現れたら──。ミカコが遭遇したのは、数年前に別れた元恋人・ヒロキ。都会の静かな書店で交わされたのは、数分間のごく短い会話。

けれどそのやりとりが、彼女の心に何かを残していきます。

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ミカコとヒロキ、静かな偶然の再会

ヒロキ:……ミカコ、だよね?

ミカコ:……うん、ひさしぶり。ヒロキも、変わらないね。

ヒロキ:君がその雑誌に手を伸ばしてるの、ちょっと懐かしかった。……あの頃も、いつもチェックしてたよね。カルチャー欄。

ミカコ:覚えてたんだ。まぁ、相変わらずよ。無駄に全部読もうとして、情報に酔って帰るの。

ヒロキ:……なんか、それ聞いて安心した。僕はちょっと……東京、久しぶりで。

ミカコ:へぇ、今は地方暮らしだっけ? 文章書くには、そっちのほうが向いてそう。

ヒロキ:そう思う?……でもたまに、こっちのざわざわした空気も恋しくなるんだ。

ミカコ:……ねぇ、覚えてる? この棚の前で喧嘩したこと。

ヒロキ:あぁ……僕が勝手に君の原稿に赤を入れて、「それは“添削”じゃなくて“侵入”だ」って怒られた時。

ミカコ:ふふ、よく覚えてるじゃん。……今思えば、あの時の私、ちょっと尖ってた。

ヒロキ:いや、それがミカコだったよ。自分の領域を守れる強さが、羨ましかった。

ミカコ:……じゃ、そろそろ行くね。懐かしい話、ありがと。

ヒロキ:ああ。……元気で。

ミカコ:うん、そっちも。……次に会うときは、たぶんもっと他人っぽくなってる気がする。

思い出は、都合のいい順番で再生される。でもそれは、いまを崩さないように脳が気を利かせてるだけ。書店を出たミカコは、バッグの中でスマホが震えるのに気づく。それは、次の“今”からの着信だった。
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