【恋日記】座談会潜入成功♡恋も仕事も完璧……のはずだった?【ミサキ視点】第4話

目次

これまでのミサキ視点まとめ

こいこと。に入りたい──その一心でリクという男に近づいた私。
お人好しで恋活中のチョロ助ことリク。こんなチャンス、逃す手はないでしょう?
電源タップと市販クッキーで偶然を装い、LINEで釣って、デートに誘わせる。
「手をつなぐ」「脈ありサインを出す」「美味しいものを奢らせる」──あらゆるテクニックを駆使して、ついには告白させたわ♡

そして今、私はリクの“彼女”。この肩書きさえあれば、こいこと。に侵入する道はもうすぐそこ
もちろん、チョロ助のことも楽しませてもらってるけどね。
だって私は、欲しいものは全部手に入れたい女。
強欲と書いてミサキと読むのよ♡

さあ次の作戦は、リクに私の文才を見せつけて、編集部に“推薦”させること
可愛いだけの彼女じゃないってこと、教えてあげるわ──。

こいこと。座談会にミサキ降臨

──ついにこの日が来たわね。
“こいこと。”編集部、潜入ミッション、開始。
リクの「みんなに紹介したい人がいるんだ」なんてセリフに、緊張してるふりして隣を歩く私。
でも内心では、100メートル先の勝利を見据えてるハンターの目よ。

扉の向こうには、キラキラした笑顔たちがいた。
──マリ。上品で物静か、大人の余裕オーラむんむん。でも堅いわね、ああいうのは懐に入りづらい。
──アカリ。天真爛漫そのもの。「初めまして〜!」って笑顔がまぶしすぎる。眩しいけど……可愛さ対決なら負けないわ。
──ナナ。落ち着いたツッコミ役。全体の空気を読むタイプ。つまり、油断ならないわね。

──あ、いたいた。ミユ。なるほど……この子が“妄想コラムの姫”ね?
ぱっと見は大人しそうだけど、話し始めると止まらないタイプ。内に秘めた情熱ってやつ。
でもそのギャップが、たぶん読者にはたまらないのよね。

くすっと笑いながら、テンション高くトークを回すその姿。
ふむ……地味に強敵かもしれない。
“無自覚な無敵タイプ”って、いちばん厄介。

でも、わたしには“外面という武器”がある。
ミユが妄想なら、私は策略よ♡


……ふふふ。冷静に観察、分析、把握。これぞ戦略家ミサキ。

「リクの彼女さん?」「会いたかった〜!」なんて声をかけられて、にこっと微笑む私。
演技じゃないわよ? ちゃんと嬉しいの、嬉しいけど……でもね?

「この中で一番輝いているのは──どう見ても、私。」
心の中では確信してる。だって自信って、可愛い女のアクセサリーでしょ?

ソファに座って出されたコーヒーを一口飲む。ふふ、落ち着いて。
ここでガツガツしてはダメ。あくまで“控えめな素敵彼女”で通すのよ。
……そう、本性はしばらく隠しておく♡

会話の中で、「こいこと。の記事、ずっと読んでました」なんて言ったら、アカリちゃんが「え、嬉しい〜!」って照れてた。
可愛いなぁ、ほんと。だから陥れるなんてできないのよ♡

そのとき、マリさんが静かに言ったの。「もう仲間みたいだよね」って。
その言葉に、私ちょっと驚いちゃって──思わず「わたしが……?」って聞き返しちゃった。
うん、今思えばあれは、“ターゲット”の包容力に一瞬ほだされた瞬間だったかも。

でも私は忘れない。
ここは戦場。
私は“こいこと。”を手に入れるためにここに来た。

コーヒー飲んでほっこりしてる場合じゃないのよ、ミサキ。

──ここが私の新天地。
待ってなさい、“こいこと。”──ミサキが来たわよ♡

座談会で外面フル稼働

初参加の座談会──といっても、緊張なんてしていない。
いえ、している“フリ”はちゃんとするけど。

「ミサキちゃんって落ち着いてるね〜」
「言葉の選び方が丁寧で、大人っぽい感じ」
はいはい、そう思ってくれて結構です。
媚びてるんじゃないわ。印象操作よ。
こういう場所では、“控えめで気の利く彼女”を演じるのが正解。

リクの隣で、にこにこしながら話を聞く。
ちょっとだけ自分の恋愛観も話す。共感力、ちゃんと出しておく。
「また座談会来てね!」と言われた瞬間──

(やったわチョロ助、ナイスアシスト♡)
心の中でガッツポーズ。
「ええ、またぜひ」なんて微笑んで返したけど、本音はこうよ。
“ようやく編集部へ地盤、踏み固まってきた”ってね。

ちなみに「読者だった」って話は本当。
でも“ちょっと読んでた”レベルじゃない。徹底的に読み漁って、分析した。
筆致のクセ、キャラ設定、言い回し、ウケるテーマ。全部頭に入ってる。

こいこと。って、素敵なメディア。
……だって、好きなテーマで記事が書けて、
時にはタダで飲み食いして、それがギャラになるんでしょ?
今回は“彼女枠”だからノーギャラだけど、
次からはしっかり稼がせてもらうつもりよ♡

編集部もちで旅行して、恋バナして、青春して──
それを記事にすれば、ちゃんと仕事になる。
こんな美味しいメディア、ほかにないわ。

だからこそ──わたしは絶対にその一員になってみせる。
あのソファに座るのは、わたし。
純粋無垢なフリをしてるけど、もう一歩ずつ進んでるのよ。

勝手にリライト。私は有能ライターなの

こいこと。編集部の座談会に初参加したあと、リク──いや、チョロ助はかなり満足げだった。
そりゃそうよね。美人で可愛くて空気も読める、パーフェクト彼女を連れてきたんだもの。
周囲からの好意的な視線にも気づいてたわ。
ミユやマリさんにも挨拶できたし、アカリちゃんには「また来てね〜♡」とハート付きで言われちゃったし。

──ふふふ。
これで“こいこと。”という城に、私は華麗に一歩踏み込んだというわけ。

それから数日後。私は何食わぬ顔で編集部に顔を出すようになった。
チョロ助とデートがてら、ちょこちょこ立ち寄っては
「こんにちは〜。おじゃましてます♡」なんて言いながら、ちゃっかりアピール活動を続けていたの。

ミカコさんやナナさんにもすっかり可愛がられて、
「ミサキちゃんって、物怖じしないね」って。うふふ、持ち前の“感じの良さ”が炸裂してるわね。
アカリちゃんには相変わらず「かわいい〜♡」と連呼されてるし、
ミユともちゃんと会話してみたら「あれ?この子、わりといいやつじゃん」って印象に変わった。可愛い枠は私のポジションだけどね♡

と、まぁ……人間関係は順調よ。
で、問題は“ライターとしての私”をどうやって印象づけるか、よね。


──あ、そうそう。
チョロ助の記事、わたしちょっとだけ手を加えたのよね。ふふふ、今さらだけど白状するわ。

あの日、リクのパソコンに表示されてた入稿前の原稿。
「ちょっと見てもいい?」って聞いたら「もちろん!」って快諾してくれたの。チョロい。ほんとチョロ助。そこが可愛い。
内容は悪くなかったけど……うーん、少しだけ惜しいのよね。
だから、わたしがちょこっとだけ直してあげたの。言い回しとか、表現とか。リズム感とか。

「焦らず、少しずつ歩み寄ることが大切」って書いてたところ、
わたしは「焦りすぎて相手を見失わないよう、優しさのペースで歩もう」に書き換えた。
ね?ちょっといい感じでしょ?
自分でもうっとりしちゃったくらい。

もちろん、リクには何も言ってないわよ。
でも、これは善意よ?チョロ助のためにやってあげたの。愛ってそういうものよ。


そしてその記事が──やっぱり大好評!
「読みやすくてすごくよかったです!」
「リクくん、めっちゃ文章上手くなったね!」
と、編集部は大絶賛の嵐よ。

リクも鼻高々で「ありがとう〜」なんて調子に乗っちゃって、
わたしも「ふふ、よかったね」って微笑んであげた。

……でもね?

褒められたポイント、書いたのはほぼ私よ?
ねぇ、それわかってる?チョロ助。

まぁいいわ。あなたが舞い上がってる間に、私はもっと深くこの“編集部の輪”に潜り込ませてもらうから。

だって……ライターとしての私の才能、あの子たちにも知ってもらわなきゃ♡

こいこと。攻略──順調すぎるわ。

リクの“違和感”に気づく or 気づかないフリ

その日の夜、スマホがバイブ音を立てた。

“ねえ、昨日の記事、編集部に出す前に見せたっけ?
もしかして修正してくれた?”

──きたきた。チョロ助、ようやく気づいたのね。

わたしは数分だけ間を置いてから、しれっと返信を送った。
“うん。ちょっとだけ、読ませてもらって、直した方がいいかなって思ったから”

だって、実際にそうだったんだもの。悪意なんて一切ナシよ。
むしろ善意100%、感謝されるべき行為でしょ?

でも、返ってきたメッセージにはこう書いてあった。

“ありがとう。でも、できれば勝手に直すのはやめてほしい”

あら?ご立腹……なの? チョロ助のくせに生意気ね。

“すごくいい記事だったから、もったいないなって思って。もっと伝わるようにしたかっただけ”

そう返した私に、“もし直したいと思ったら、事前に教えて。できればアドバイスという形で”
と、また真面目な文面が届いた。

──はいはい、チョロ助くん、ごもっとも。

少しムッとしながらも、内心では反省してた。
……確かに、勝手に手を入れるのは、よくなかったかも。

私だって、自分の文章を誰かに勝手に変えられたら不快だもの。

だから素直に“本当にごめんなさい”って返した。
ちゃんと反省できる女なのよ、わたし。優秀なだけじゃなくて、可愛げもあるんだから。


でもね?
あのリライト記事、めちゃくちゃ評判よかったのよ?
編集部でも「感動した」「読みやすくなった」って褒めちぎられて、
チョロ助もその時は超うれしそうにしてたじゃない。

ちょっとの文章で空気感を変える力。
──それ、わたしの才能よ?
むしろ感謝してくれても良かったのに。

なのに、あれ以来──チョロ助のLINEの返信、ちょっと遅くなった気がする。

通知が鳴らない夜も増えてきて、
「ごめん、ちょっと仕事でバタついてて」なんて言い訳が続く。

ふーん……って、わたしは思ったわ。

チョロ助ごときが、生意気な。
私がいなきゃ、ただの冴えない恋愛ライターじゃない。
あんたの武器は、彼女にわたしがいるってことなんだから。

……でも。

ほんの一瞬、胸の奥がチクリとした。

(……嫌われた?)

──そんなはずないわ。
わたしは彼女よ?
恋人で、こいこと。の未来のライターで、才能あふれる最強の女なんだから。

今はちょっとすれ違ってるだけ。
大丈夫。この恋も、夢も、わたしがぜんぶ手に入れてみせる。

だって私は、強欲と書いて──“ミサキ”と読むのよ♡

─第5話へつづく

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