奢り奢られ論争?――じゃあ、わたしが試してみるわ
奢るべきか。
割り勘にするべきか。
こいこと。編集部でも、しっかり話題になっていた。
ええ、例にもれず。
「奢るのが気遣い」
「割り勘のほうが対等」
「奢られて当たり前な態度はどうなの」
……うん。
言いたいことは、だいたいわかる。
でもね。
こういう論争って、
だいたい“自分がされた側の気分”だけで語られるのよ。
奢った側の不満。
奢られた側の違和感。
割り勘だった日のモヤモヤ。
全部、主観。
――だから。
今回は、
ミサキ様が実際に試してみることにした。
奢る男。
割り勘の男。
どっちが正しいか、決める気はない。
知りたいのは、ただひとつ。
どっちが、気持ちよく過ごせたか。
さて。
まずは素材探しから、始めましょうか。
ミサキ様が通る!


さて、奢る男と割り勘男を見つけなくちゃ
とはいえ。
「奢る男と割り勘男を探します」なんて、
看板を下げて街を歩くわけにもいかない。
恋活アプリを開いて、
メッセージをいくつかやりとりして、
いつもより少しだけ、相手の言葉をよく読む。
ここで重要なのは、条件じゃない。
年収でも、肩書きでも、
「奢ります」って書いてあるかどうかでもない。
会話の中で、
お金の話をどう扱う人か。
たとえば。
「ご飯どうします?」の一言に、
さらっと選択肢を出せる人。
「高いところでも大丈夫ですよ」って、
わざわざ前置きする人。
逆に、
お金の話を完全にスルーする人もいる。
……うん。
奢るか、割り勘か、というより、
その人がお金を“どう扱うか”が、もう見えてくる。
今回は、ちょうどいい素材がそろった。
一人は、
会う前から「今日は俺が出すよ」と言う男。
もう一人は、
「割り勘で大丈夫ですか?」と確認してくる男。
どっちが正解かは、まだ決めない。
大事なのは、デートのあと。
わたしの気分が、
どうなっているか。
――というわけで。
まずは、奢る男とのデートから。
ミサキ様、行ってきます。
実際にデートしてみた結果
① 奢る男とのデート
まずは、奢る男。
会う前から、
「今日は俺が出しますから」
「気にしないでください」
……はいはい。
そのセリフ、何回目?
お店選びもスムーズ。
注文も慣れてる。
会計のタイミングも完璧。
財布を出す前に、
自然すぎる動作でカード。
――ここまでは、優秀。
問題は、そのあと。
「奢ったんだし」って言葉は、出てこない。
でもね。
空気が、請求書みたいに重くなる。
距離が近い。
ボディタッチが増える。
次の予定を勝手に決め始める。
……ああ。
これ、奢りじゃなくて、
前払い制の期待ね。
正直に言うと。
ご飯はおいしかった。
お店も悪くなかった。
でも帰り道、
胃より先に、気分が重くなった。
奢られたはずなのに、
なぜか借りができた気分。
――はい、終了。
② 割り勘の男とのデート
次は、割り勘の男。
会う前に、
「割り勘で大丈夫ですか?」って聞いてくる。
……丁寧ね。
お店はカジュアル。
高すぎず、安すぎず。
会話は軽い。
変に気を張らなくていい。
会計のとき、
「じゃあ、半分ずつで」
それだけ。
誰も偉くならない。
誰も貸しを作らない。
不思議なことに、
そのあとの時間が、いちばん楽だった。
笑って、
ちゃんと話して、
ちゃんと解散。
帰り道。
財布は軽くなってるのに、
気分は、さっきよりずっと軽い。
……あれ?
奢られてないのに、
雑に扱われた感じがしない。
むしろ、
ひとりの人間として扱われた感じ。
さて。
この結果を、
どう編集しましょうか。
奢り奢られ論争に、ミサキ様が言いたいこと
さて。
ここまで読んで、
「じゃあ割り勘が正解なんでしょ?」
と思った人。
……早い。
奢るのが悪いわけじゃない。
割り勘が偉いわけでもない。
問題は、そこじゃないのよ。
奢りで揉めるとき、だいたい“別の請求”が混ざってる
今回、はっきりしたことがある。
奢りが気持ちよくない瞬間って、
見返りの請求が、空気に混ざったときなの。
「奢ったんだから」
「これくらいは」
「普通でしょ?」
言葉にしなくても、
態度と距離感で伝わる。
あれね、
レシートに載ってない料金。
だからムカつく。
割り勘が楽な理由は、お金じゃない
一方で、割り勘が楽だった理由。
それは、
対等だったからでも、
合理的だったからでもない。
単純に、
誰も偉くならなかった。
貸しもない。
借りもない。
その状態だと、
会話がちゃんと会話になる。
恋愛以前に、
人として雑に扱われない。
ここ、大事。奢ってもらう側の心得
でね。
ここまで書いておいて、
女性側が何もしなくていいなんて、
ミサキ様は一言も言わない。
むしろ逆。
奢ってもらったなら、ちゃんと感謝しなさい。
当たり前の顔で座って、
会計が消えるのを眺めて、
「ごちそうさま」も軽め。
……それ、恋愛以前に、
感じ悪いわ。
奢りが重くなる原因って、
奢る側だけじゃなくて、
受け取る側の雑さも混ざってる。
感謝は、言葉だけじゃない。
ちゃんと目を見る。
ちゃんと嬉しそうにする。
その時間を、軽く扱わない。
それができないなら、
最初から割り勘のほうが、
お互いのため。
ミサキ様的・結論
奢るか、割り勘か。
それは、
優しさの証明方法の違いでしかない。
お金で示す人。
態度で示す人。
距離感で示す人。
どれもアリ。
ただし。
相手を気持ちよくさせられない優しさは、
だいたい自己満足。
そして、
感謝を省略する受け取り方も、
だいたい雑。
奢ってもいい。
割り勘でもいい。
でも覚えておいて。
恋愛は、お金のやり取りじゃなくて、
気遣いの往復。
……以上。
ミサキ様からの、
少しだけ厳しめな所感でした。
というわけで、今日はミサキ様のおごり
奢り奢られ論争について、
ひと通り書き終えた、その夜。
編集部を見渡したら、
ソウタとワニオが、
それぞれ別の机でぼんやりしていた。
……ああ。
この空気、
お腹空いてるやつらの顔ね。
「ねえ、二人とも」
そう声をかけたら、
ソウタがすぐ反応した。
「え、なに? ごはん?」
早い。
判断が早すぎる。
ワニオは一拍置いてから、
財布の位置を確認する仕草。
……うん。
今日も安定の資金不足。
「今日は、わたしが出すわ」
そう言った瞬間、
ソウタが目を輝かせた。
「マジで? ミサキ、神じゃん」
「はいはい。今だけよ」
ワニオは、少しだけ姿勢を正して言った。
「ありがとうございます。ごちそうになります」
この差。
でも、どっちも嫌じゃない。
お店は、気取らない定食屋。
ソウタはテンション高め。
ワニオは無言で、やたらよく噛んでる。
……ほんと、育ち盛りと観察者。
会計のとき。
「ごちそうさま!」
ソウタは軽く、でもちゃんと。
「ありがとうございます。とても助かりました」
ワニオは丁寧に。
それで十分。
女性が払うのも、全然アリ。
その場の空気が軽くなるなら、それが正解。
奢る人が偉いわけじゃない。
奢られる人が下なわけでもない。
ただ、
気持ちよく食べて、
気持ちよく終われるかどうか。
それだけ。
今日の結論。
お金を出す人より、
空気を読める人が、いちばん大人。
さて。
次は、どんな論争に首を突っ込みましょうか。
ミサキ様が通る!
――奢りも割り勘も、場面で使い分ける女です。

