推しの聖地、恋の予感。──恋とは違う、でも恋だったかもしれない旅の記録

料理対決の勝者、ごほうび企画。
私が選んだのは──“推しの聖地、一人旅”。

でも、あのときはまだ知らなかった。
ただの旅じゃなくなることを。


■ ごほうび旅、出発進行。

「推し活を記事にするって話だったのに…なんで私、電車に乗ってんだろ?」

窓の外を流れていく風景を見ながら、思った。 そもそもこの“聖地”に来るのは、3年ぶり。

推しの代表作──海辺の町を舞台にした青春映画。 あの作品の中で、主人公は自分の夢を信じて街を出ていった。

そのラストシーンの海辺が、まさにこの駅から10分の場所にある。
もうそれだけで胸がいっぱいでさ、まじ、涙腺ユルユル。笑


■ 推しの記憶と、風景の匂い。

まず向かったのは、坂道の上にある小さな商店街。 映画の中で、主人公が走り抜けてた場所。

そこには昭和レトロな文房具屋さん、 手描きの看板がかわいい駄菓子屋さん、 そして──作中に登場する喫茶店「シエル」のモデルになったお店。

「……推しが、ここに座ってたのかもしれない」

そう思うと、テーブルの木目さえ愛おしい。
妄想スイッチ入って、もはや脳内で映画のBGM流れてる。

「来たね」って、推しの声が聞こえた気がした。

私はカフェオレを頼んで、 “あのときの主人公の目線”になって街を眺めてた。


■ ふいに現れたカメラの人。

その喫茶店の近く、海が見える小道で。
私は、ふと足を止めた。

その先に立ってたのは、カメラを構えた青年。 背中越しに見えたのは、白いシャツと、夕日。

「……ここ、写真映えしますよね」

そう声をかけられた。 え、話しかけてきた…!?って心の中で動揺しながら、 「ですよね、映画のロケ地なんです」って返した。

それだけ。ほんと、それだけだったんだけど。

彼がファインダー越しに世界を見ている姿が、 なんか、ちょっと、 …キュンとした。

不思議だったな。
初対面なのに、「この人、どんな恋をするんだろ」って思っちゃった。


■ 推しとの違い、恋との違い。

カフェでひと息ついて、スマホのアルバムを開いた。 推しの笑顔。舞台挨拶。サイン会。 “好き”って感情、確かにここにあるのに、 さっきの一瞬のトキメキとは、なんか種類が違った。

推しへの想いは、 安心できるし、裏切られないし、永遠に続くって思える。

でもさ。 あのカメラの人との会話は、たった30秒だったのに、 なんか心がざわざわしてる。

“恋”って、こういう瞬間に生まれるのかな。 決して「好きになった」わけじゃないけど、 「この感情、名前つけるなら……恋の気配?」


■ 帰り道、ひと駅分の想い出。

夕方、駅までの坂道を歩きながら、 私は今日見た景色と、推しの姿と、カメラの人を、ぐるぐる思い返してた。

電車の中で書いた日記には、こう書いた。

「きっと私は、 今日、“恋の気配”だけをおみやげに持って帰るんだと思う。」

この旅は、推しのためだったけど、 きっとそれだけじゃなかったんだ。

うん、また来たいな。 次は──もう少しだけ、誰かと話せる自分で。

こいこと。料理対決、ごほうび旅。 行き先は、まさかの“心の中”でした。

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