恋を頑張りすぎてる人は、どこで休めばいい?──ミユとワニオの低温日向ぼっこトーク

最近のミユとワニオは、やたらと公園にいる。

恋の相談でもなく、取材でもなく、
ただベンチに座って、日向ぼっこをしているだけ

ミユは紙コップのカフェラテを両手で包みながら、空を見上げた。

ミユ「なんかさ……最近こうやってボーッとする時間、多くない?

ワニオ「はい。人間が“何もしない”を許可する時間は貴重です」

ミユ「出た。ワニオの急にそれっぽいこと言うやつ」

少し笑ってから、ミユはぽつりと続ける。

ミユ「でもさ……恋してるときって、休むの下手じゃない?
頑張らなきゃ、考えなきゃ、動かなきゃって思ってさ」

ワニオ「それは“恋=努力科目”として履修している状態ですね」

ミユ「ちょっと待って。恋って必修だったっけ?

ワニオはベンチの背もたれに体を預け、
いつもの少しとぼけた顔で答えた。

ワニオ「いいえ。多くの人が自主的に詰め込み学習しているだけです」

その言い方がおかしくて、ミユは吹き出す。

けれど笑いながらも、
その言葉は、少しだけ胸に引っかかった。

――恋って、そんなに頑張り続けなきゃいけないものだっけ?

そんな疑問から、
「恋を頑張りすぎている人は、どこで休めばいいのか」という話が、
ゆるやかに始まった。

目次

恋を頑張りすぎてる人ほど、休み方がわからない

ミユ「だってさ、好きな人ができると、急に毎日が課題だらけにならない?
LINEどうする、距離感どうする、重くならないように……とか」

ワニオ「それは恋愛を“常時フル稼働システム”として運用している状態です」

ミユ「やっぱりそうなんだ。なんか疲れるな〜って思ってた

ミユはそう言って、ベンチに深く腰を沈めた。

ミユ「好きだから頑張りたい気持ちは本物なんだけど、
頑張ってない自分=ダメみたいに思っちゃうんだよね」

ワニオ「それは恋に“評価制度”を導入してしまった弊害ですね」

ミユ「え、恋って評価される科目だったの……?」

ワニオ「多くの人が、“成果が出ないと不安になるもの”として扱っています」

ワニオはそう言いながら、
落ちていた小枝で地面に丸を描いた。

ワニオ「本来、恋は継続しなくても即失格にならないものです。
しかし人は、サボる=関係が壊れると誤解しやすい」

ミユ「うわ……それ、めっちゃ心当たりある」

ミユ「返信遅れたら嫌われるかも、
会えない週があったら冷められるかも、って勝手に焦る

ワニオ「それは相手の感情を、自分の行動だけで管理しようとする試みです」

ミユ「ちょっと待って。それ、難易度高すぎない?

ワニオ「はい。人間一人で操作できる仕様ではありません

ミユは思わず笑った。

ミユ「なんかさ……
恋って“ちゃんとやらなきゃ”って思いすぎてたかも

公園の木の影が、ゆっくりと足元を移動していく。

ミユはそれを眺めながら、ぽつりと続けた。

ミユ「じゃあさ、恋を休むって、どういう状態なんだろうね?

休んだら終わる気がする問題

ミユ「正直さ……休んだら、そのまま終わっちゃいそうって思わない?」

ミユ「連絡減らしたら忘れられるとか、
会わない期間があったら気持ち冷めるとか……そういう話、山ほど聞くし

ワニオ「それは“恋は動かし続けないと停止する機械”という誤認識ですね」

ミユ「ちょっと待って。止めたら壊れる家電みたいな扱いなの?

ワニオ「はい。多くの人がそう扱っています

ワニオはそう言って、ベンチの横に落ちていた葉っぱを指でつまんだ。

ワニオ「本来、休んだだけで壊れる関係は、耐久性が低いです」

ミユ「うっ……それ、結構ズシッと来るな」

ミユ「でもさ、好きだからこそ壊したくなくて頑張るって気持ちもあるじゃん?」

ワニオ「はい。その努力自体は否定されるものではありません」

ワニオ「ただし、“休めない努力”は長期的に継続しません

ミユ「あ〜……たしかに」

ミユ「最初は楽しくて頑張れるけど、
途中から義務感みたいになる瞬間、あるかも」

ワニオ「その時点で、恋は楽しむ対象から管理対象に変わっています

ミユ「管理……。なんか急にブラック企業感出てきた

ワニオ「休暇のない職場は、どうしても離職率が上がります」

ミユ「やめて。恋を職場に例えられるとリアルすぎる

そう言いながらも、ミユはどこか納得した顔をしていた。

ミユ「じゃあさ……
休んでも終わらない恋って、どんな状態なんだろう?

ワニオは少しだけ考える素振りを見せてから、答えた。

ワニオ“何もしなくても不安にならない時間がある関係”です」

ミユ「……それ、いいな」

ミユは小さくそう呟いて、
公園の奥で遊ぶ子どもたちの声に目を向けた。

恋を休むって、何もしないことじゃない

ミユ「でもさ、“恋を休む”って聞くと
連絡もしない、会わない、考えない……全部止める感じしない?」

ワニオ「その認識が、多くの人を混乱させています

ミユ「え、違うの?」

ワニオ「はい。休む=放棄ではありません

ワニオはゆっくりと言葉を選ぶように続けた。

ワニオ「恋を休むとは、“相手の反応を監視しない時間をつくること”です」

ミユ「監視……」

ミユ「あ、でも分かるかも。
返信速度とか、既読とか、気づいたらずっと見てる

ワニオ「それは恋愛というより観測作業ですね」

ミユ「言い方がシビア!」

ワニオ「しかし事実です」

ミユは笑いながらも、深くうなずいた。

ミユ「たしかにさ、
好きな人のことで頭いっぱいの時って、自分のこと後回しになってる」

ワニオ「はい。恋を休むとは、自分の生活を通常運転に戻す行為です」

ミユ「通常運転……」

ワニオ「食べる、寝る、笑う。
恋とは無関係に成立していた時間を取り戻す

ミユ「それ、なんか……優しい休み方だね

ワニオ「はい。回復を目的とした休息です」

ミユはベンチから立ち上がり、軽く伸びをした。

ミユ「そっか。
恋を休むって、恋から逃げることじゃなくて
自分に戻ることなのかも」

ワニオ「その理解で概ね正解です」

そう言ってワニオは、いつもの少しとぼけた顔で付け足した。

ワニオ人間は回復すると、判断精度が上がります

ミユ「急に性能の話になるじゃん」

ふたりの間に、
さっきより少しだけ、穏やかな空気が流れた。

休んだあと、また恋していい

ミユ「なんかさ……
休んだら、そのまま恋できなくなるんじゃないかって思ってた」

ミユ「気持ちが冷めたらどうしよう、とか。
もう前みたいに頑張れなかったらどうしようって」

ワニオ「その心配は、多くの場合、不要です」

ミユ「え、そうなの?」

ワニオ「はい。
休息によって失われる恋は、もともと過負荷状態です」

ミユ「過負荷……」

ワニオ「逆に言えば、
休んでも残る気持ちこそが、本来の“好き”です」

ミユはしばらく黙って、空を見上げた。

ミユ「そっか。
頑張らなくても残る気持ちって、ちょっと信用できるね

ワニオ「はい。持続可能性が高いです」

ミユ「またその言い方!」

笑いながらも、ミユの表情はどこか軽くなっていた。

ミユ「じゃあさ、
また恋したくなったら、そのとき動けばいいんだ

ワニオ「その理解で問題ありません」

ワニオ「恋は連続稼働しなければならないシステムではない

ミユ「……いいね、それ」

公園のベンチに差し込む日差しは、
来たときよりも少しだけ柔らかくなっていた。

少し間を置いてから、ミユがふと思い出したように言った。

ミユ「ていうかさ……」

ミユ「ワニオって、恋愛に興味ないとか言うわりに、めちゃくちゃ恋に詳しくない?

ミユ「下手したら、恋してる人より分かってる気がするんだけど」

ワニオ「いえ。私は参加していないだけです」

ミユ「いや、その言い方がもうズルいのよ」

ワニオ「観察者は、走らない分、構造が見えやすい

ミユ「なにそれ。恋愛界の解説席じゃん」

ワニオ「実況はしません」

ミユ「そこは拒否るんだ」

ふたりは顔を見合わせて、少しだけ笑った。

恋を頑張りすぎてしまったとき、
休むことは逃げじゃない。

また恋していい自分でいるための、ただの休憩

そんなふうに思えたら、
恋はもう一度、ちゃんと息ができるのかもしれない。

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