イケメンって言われたので、たぶんいけたと思います|ミサキ様が通る!ソウタ視点

やらかした。

いや。

正確に言うと——

やらかした状態で、今から会いに行く。

……これ、なかなか最悪だと思う。

あの記事。

あの、どう考えてもキモいポエム。

「たぶんキモいです」って自分で書いてたやつ。

……普通に、見られた。

ナナさんとアカリに。

しかも、あの感じ。

笑ってたけど、あれは優しさだ。

本音はたぶん、もっとキツい。

……いや、わかってる。

あれはキモい。

自分でもわかってる。

止めようとも思った。

何回も思った。

でも。

止まらなかった。

だって——

あの子のこと、考えると。

なんかもう、書かないと無理だったから。

……。

いや、ほんとに。

冷静に考えると意味わからないんだけど。

でも、そういう状態だった。

で。

その状態のまま。

今から会う。

あの子に。

……。

いや。

それでも。

それでも、やっぱり嬉しい。

だって——

ご飯、行こうって言ったら。

普通に「いいよ」って返ってきたから。

……あれ、ほんとにいいのかって思ったけど。

でも。

来てくれるってことは。

少なくとも、嫌じゃないってことだと思うし。

……いや、うん。

たぶん。

これは、デートだと思う。

目次

たぶん、全部可愛いと思ってしまってる時点で終わってる

待ち合わせ場所に、少し早く着いた。

いや、少しじゃないな。

だいぶ早い。

たぶん20分くらい前。

……いや、30分前かもしれない。

でも。

遅れるよりはいいと思う。

というか、むしろ早い方がいいと思う。

いや、よくないかもしれない。

ちょっと必死すぎるかもしれない。

……。

まあいいや。

今さら帰るわけにもいかないし。

そう思っていたら。

「あ、ソウタさん」

振り向く。

いた。

普通に、いた。

……いや。

ちょっと待って、なんか思ってたより可愛い。

いや、思ってたよりっていうか。

たぶん、見れば見るほど更新されるやつだ。

これ。

「すみません、待ちました?」

「いや、全然」

即答したけど、たぶん今の間、0.2秒くらい詰まった。

……落ち着け。

落ち着け俺。

まだ始まったばかりだ。

ここで崩れたら終わる。

——いや、もうだいぶ崩れてる気もするけど。

店に入って、席につく。

なんかもう、距離が近い。

テーブルが。

というか、この席の配置が悪い。

いや、良いのか?

わからない。

とりあえず近い。

で。

目の前にいる。

……いや、ほんとに。

なんでこんなに普通に座ってるんだろう、この人。

いや普通なんだけど。

普通なんだけど、なんか。

ちょっと現実感がないというか。

「このお店、カップル多いですね」

ツムギが周りを見て言った。

……。

カップル。

いや、うん。

たしかに多い。

というか。

今、俺たちもそれに見えてる可能性ある?

いや、落ち着け。

さすがにそれは飛躍だ。

でも。

ゼロではない気もする。

……いや、やめよう。

危ない。

そっちに行くと戻れなくなる。

「ソウタさんって、恋愛記事書いてるんですよね?」

「え、あ、うん」

また声ちょっと変だった気がする。

でも大丈夫。

たぶんバレてない。

いや、バレてるかもしれないけど。

まあいいか。

もうバレててもいい気がする。

というか、たぶん。

こういうときって、バレるものなんだと思う。

「恋してる人って、どういう行動します?」

……きた。

これ、さっき考えてたやつだ。

いや違う。

さっきじゃないな。

ずっと考えてるやつだ。

「……たぶん、わかりやすいと思う」

「隠してるつもりでも、たぶん出てる」

言いながら思う。

——今、完全に出てるなこれ。

でも。

なんか、それでいい気もする。

というか。

この人には、わかってほしい気もする。

いや、なんでだ。

ちょっと待て。

それはさすがに早い。

でも。

「面白いですね」

ツムギが少し笑った。

……。

あ。

今、ちょっと通じた気がする。

いや、気のせいかもしれないけど。

でもなんか。

さっきより、少しだけ。

距離が近くなった気がする。

……。

いや、うん。

たぶん。

これ。

悪くない気がする。

「イケメンですね」は、たぶん告白と同義だと思う

好きすぎてツムギがキラキラして見えるソウタ。夢中になっている心境を表現。

それは、ほんとに何気ないタイミングだったと思う。

会話の流れも、そんなに特別じゃなかったし。

むしろ、普通に雑談の途中で。

ツムギが、さらっと言った。

「ソウタさんって、イケメンだからモテるんじゃないですか?」

……。

え?

今、なんて?

いや、聞こえてはいる。

聞こえてるけど。

ちょっと意味が追いつかない。

「いや、そんなことないよ」

とりあえず、反射で否定する。

いやこれは違う。

ここで「そうだね」って言うのは違う。

それは人として終わる。

だから否定した。

ちゃんと否定した。

……でも。

頭の中では、別のことが起きてる。

いや、ちょっと待って。

イケメンって言われたよな?

しかも今の、流れ的に。

ただの評価っていうより。

なんていうか。

印象というか。

……。

いや、落ち着け。

ここで飛躍するな。

それは危ない。

わかってる。

でも。

「なんか、普通にモテそうだなって思いました」

ツムギが、追加でそう言った。

……。

いや。

これ、もうだいぶ強くないか?

さっきの一言だけならまだしも。

“普通にモテそう”って。

それってつまり。

少なくとも、悪い印象ではないってことで。

むしろ。

結構いい評価では?

……いや。

ちょっと待て。

ちゃんと整理しよう。

ここで大事なのは、事実だ。

事実ベースで考える。

①イケメンと言われた

②モテそうと言われた

③今、一緒にご飯を食べている

……。

これ、かなり状況良くないか?

いや、もちろん。

これだけで決めるのは早い。

さすがにそれはわかってる。

でも。

ゼロではない。

むしろ。

それなりに“ある”側の話では?

……。

いや、やめよう。

ここで一気に行くのは危険だ。

ちゃんと段階を踏め。

でも。

少なくとも。

これは。

悪い流れでは、絶対にない。

むしろ——

かなり、いい。

……たぶん。

いや。

すごく、いいと思う。

今回のデート、うまくいったと思う

帰り道。

さっきまでの会話を、なんとなく思い出していた。

いや、なんとなくじゃないな。

けっこうちゃんと。

細かく。

「イケメンですね」

とか。

「面白いですね」

とか。

「またご飯行きましょう」

とか。

……。

いや、改めて思うけど。

普通に、全部いい流れだった気がする。

もちろん。

完璧ではなかったと思う。

ちょっと変な間もあったし。

うまく話せてなかったところもある。

……たぶんある。

でも。

それでも。

全体として見たら。

悪くなかったと思う。

むしろ。

けっこう、いい方だったんじゃないかって。

……うん。

たぶん。

うまくいったと思う。

スマホを見る。

連絡先は交換してる。

次の約束も、ちゃんとある。

——それだけで、なんか少し安心する。

……。

いや、ほんとに。

こういうの、久しぶりだなって思う。

なんかこう。

ちゃんと、進んでる感じ。

まだ何も決まってないけど。

でも、ゼロじゃない感じ。

……うん。

たぶん。

ここからだと思う。

帰り道の空気が、少しだけ軽かった。 

翌日、編集部にて

デートが上手くいったと報告するソウタ。呆れ顔のミサキ。

「ソウタ」

翌日。

編集部に入った瞬間、ミサキに呼び止められた。

……ちょっとドキッとする。

いや、なんでだ。

別に悪いことしてないのに。

……いや、ちょっとはしてる気もするけど。

「昨日、どうだったの?」

「あの“デート”」

……。

デート。

まあ、うん。

そこは否定しないでおこう。

「……普通に、よかったと思う」

「いい雰囲気だったし」

「ちゃんと話せたし」

「……手応えは、あったかな」

言いながら、自分でもちょっと照れくさい。

でも。

嘘ではないと思う。

たぶん、本当にそうだから。

ミサキは、少しだけ間を置いてから言った。

「へえ」

短い返事。

表情は、よくわからない。

……。

でも、たぶん。

悪い反応ではないと思う。

「……まあ、いいんじゃない?」

ミサキが軽く肩をすくめる。

「その調子で頑張りなさいよ」

……よし。

今回は間違ってない。

そう思った。

——いい風が吹いてきた。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次