気づくと好きな人のことを考えてる。それって普通?

こいこと。編集部の片隅で、サヨがぼんやりとパソコンの画面を見つめていた。

カーソルは点滅したまま。
手はキーボードの上に置かれているのに、まったく動かない。

ミユ「……サヨ? さっきから画面変わってなくない?」

サヨ「えっ。あ、ほんとだ……」

慌ててマウスを動かしながら、サヨは小さく笑う。

サヨ「ごめんなさい。なんか、考えごとしてて」

ミカコ「珍しいね。サヨが作業止まるの」

その言葉に、サヨは一瞬だけ視線を落としたあと、ぽつりとつぶやいた。

サヨ「……好きな人が、できたかもしれなくて」

編集部の空気が、ほんの少しだけ変わる。

ミユ「え、“かもしれない”って何それ

サヨ「自分でもよくわからないんですけど……」

そう前置きしてから、サヨは続ける。

サヨ「気づくと、その人のことばっかり考えてて。
仕事中も、帰り道も、寝る前も。
考えないようにしようって思うほど、頭から離れなくて

それを聞いた瞬間、何人かが「わかる」という顔をした。

好きな人のことばかり考えてしまう。
それは恋が始まったサインなのか、
それとも考えすぎているだけなのか。

サヨの何気ないひと言から、
編集部でいつもの座談会が始まろうとしていた。

目次

なぜ、好きな人のことばかり考えてしまうのか

ミユ「でもさ、好きな人のことばっか考えちゃうのって、あるあるじゃない?

アカリ「うん。むしろ考えないほうが不安になるやつ」

サヨ「それです……。
考えてる自分に気づいて、
『また考えてる』って思うのに、止まらなくて

ミカコ「それ、止めようとするから余計考えるんだと思う」

ミユ「あ〜、“考えちゃダメ”って言われると考えちゃう現象ね」

ミユがうんうんと頷きながら、サヨを見る。

ミユ「好きな人ができた直後ってさ、
脳内で勝手にその人がレギュラー出演し始めない?

アカリ「わかる。
通勤中も、シャワー中も、
気づいたら全部その人絡みの妄想」

サヨ「妄想まではいってないですけど……」

ミカコ「いや、たぶんいってる」

サヨ「え」

ミカコ“次会ったらどうしよう”とか考えてる時点で、もう妄想の入口

サヨは少し考えてから、苦笑いする。

サヨ「……たしかに、それは考えてます」

ミユ「でしょ?
だからさ、好きな人のことばかり考えるのって、異常でも弱さでもなくて

アカリ「単純に、気になる存在ができたってだけなんだよね」

ミカコ「脳が“重要案件”として処理してるだけ」

サヨ「重要案件……」

ミユ「そうそう。
恋って、勝手に優先順位上がるものだからさ」

サヨは少しだけ肩の力が抜けたように、息を吐いた。

サヨ「じゃあ……考えすぎってわけじゃないんですかね」

アカリ「少なくとも、“普通の恋の初期症状”ではあると思う」

編集部に、くすっとした笑いが広がる。

考えてて楽しいときと、ちょっとしんどくなるときの違い

ミユ「でもさ、正直な話していい?」

サヨ「はい」

ミユ好きな人のこと考えてるのが楽しい時と、急にしんどくなる時ってない?

サヨ「……あります」

アカリ「あるよね。
昼間はニヤニヤしてるのに、夜になると急に不安になるやつ」

ミカコ「夜はだいたい余計なこと考える時間だから」

サヨ「なんで夜になると、
“嫌われたらどうしよう”とか考えちゃうんですかね

ミユ「わかる〜。
昼の自分は強気なのに、夜の自分は急に弱気」

アカリ「LINEの返信ひとつで一喜一憂したりね」

ミカコ「その差はたぶん、期待してるかどうかだと思う」

サヨ「期待……」

ミカコ「考えてて楽しい時って、
“こうだったらいいな”って想像してるだけでしょ」

ミカコ「でもしんどくなる時は、
“こうならなかったらどうしよう”に変わってる」

ミユ「うわ、それめっちゃわかりやすい」

アカリ「期待が、不安に変換される瞬間ね」

サヨ「たしかに……。
楽しいときは未来を見てて、
しんどいときは失敗を想像してる気がします」

ミユ「だからさ、
考えること自体が悪いんじゃなくて、考え方が変わっちゃうのがつらいんだよね」

アカリ「好きな人のことばかり考えてる=ダメ、じゃないよね」

ミカコ「むしろ、ちゃんと恋してる証拠

サヨ「……少し、安心しました」

サヨはそう言って、少しだけ笑った。

好きな人のことばかり考えるのは、やめたほうがいい?

サヨ「じゃあ……
この状態って、無理にやめたほうがいいんですか?

少しだけ不安そうに、サヨが聞く。

ミユ「うーん。
“やめなきゃ”って思うと、逆にしんどくならない?」

アカリ「それな。
考えちゃう自分を責め始めた瞬間から、恋が苦行になる

ミカコ「そもそも、考えない恋なんて存在しないと思う」

サヨ「たしかに……」

ミカコ「ただし、ひとつだけ基準はあって」

ミカコ考えてることで、日常が回らなくなってないか

ミユ「ごはん食べられないとか、仕事ミス増えるとか?」

ミカコ「そう。
自分の生活が削れてるなら、それは少し休憩サイン

アカリ「でもさ、
“楽しい妄想”の範囲なら、別にいいよね」

ミユ「うん。
ニヤニヤしてるだけなら、むしろ恋の醍醐味

サヨ「じゃあ……
やめるかどうかじゃなくて、しんどいかどうかを見る感じですか?」

ミカコ「そういうこと」

ミユ「好きな人のことばかり考えてる自分を、
“変だ”って切り捨てなくていいんだよ」

アカリ「恋ってそもそも、
ちょっと生活に割り込んでくるものだしね」

サヨは小さく頷きながら、メモを取る。

サヨ「なんか……
考えちゃう自分を許してもいい気がしてきました

ミユ「それそれ。
今日の大事な結論、それだと思う」

それでも苦しくなったら、少しだけ視点を戻してみる

サヨ「でも……
どうしても考えすぎて、苦しくなるときもありそうで」

その言葉に、編集部の空気が少しだけ静かになる。

ミユ「あるよ。普通にある」

アカリ「むしろ、一回も苦しくならない恋のほうがレア

ミカコ「そういうときは、
“相手の気持ち”から一回離れるのがいい」

サヨ「相手の気持ちから……」

ミカコ「うん。
考えすぎてるときって、
相手がどう思ってるかばかりに意識が向いてるでしょ」

ミユ「たしかに。
“嫌われたかな”とか、“迷惑かな”とか」

アカリ「で、だんだん自分の気持ち置いてきぼりになるやつ」

ミカコ「だから一回、“自分はどうしたいか”に戻る

サヨ「……自分はどうしたいか」

ミユ「会えたら嬉しいのか、
今は考えてるだけで楽しいのか、
それとも少し休みたいのか」

アカリ「答え出さなくていいのもポイントね」

ミユ「うん。
恋って、常に結論出さなくていいものだと思う」

サヨは少し考えてから、ゆっくり頷いた。

サヨ「……好きな人のことばかり考える自分、
そんなに悪くない気がしてきました」

ミユ「でしょ。
それ、ちゃんと恋してるってことだから

アカリ「考えすぎる日もあっていいし、
何も進まない日があってもいい」

ミカコ「恋は、急がなくても消えない」

編集部に、ほっとした空気が流れる。

好きな人のことばかり考えてしまう。
それは不安の種になることもあるけれど、
同時に、心がちゃんと動いている証拠でもある。

そう思えたなら、
今日の座談会はそれだけで十分だった。

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