いい女を演じるのに疲れる夜
今日もまた、「いい女」を演じきった。 笑顔、気遣い、言葉のトーンまで完璧。 でも正直、疲れた。
“聞き上手で、余裕があって、感情的にならない女”──そんなラベルを、みんなが勝手に貼ってくる。 それに合わせてお辞儀して、うなずいて、柔らかく笑う。 まるでAIの接客モードみたいで、途中で自分がどんな顔してるのかわからなくなる。
本当は、会話の途中で何度もツッコミたいの。 「それ、面白いと思って言ってる？」とか、「わたし、興味ないんだけど」って。 でも口には出さない。 “いい女”はそんなこと言わないから。
わたしが“いい女”を演じる理由？ 簡単よ。 そのほうが恋愛も人生も、スムーズに進むから。 …少なくとも、表面上はね。
ふふっ。 嘘の笑顔って、意外と筋トレになるのよ。
猫かぶりのメリットとしんどさ
「いい女」を演じるって、悪いことばかりじゃないの。 世の中、素直で正直な人より、計算できる人のほうが“得”をすることもある。 男性もね、少しミステリアスで、気がきいて、感情をコントロールできる女が好きなのよ。 だから私は、その役を完璧にこなす。
強がりじゃなく、これは戦略。 笑顔の角度も、言葉の選び方も、相手のテンションの読み方も全部計算済み。 まるで恋愛をチェスみたいに動かしてる感じ。 だけどね── 勝っても、勝った気がしない。
デートがうまくいっても、彼が好意を見せても、心のどこかで思うの。 「わたしじゃなくて、“いい女”が好かれてるだけじゃない？」って。
だから帰り道、コンビニでスイーツ買って、家でパジャマに着替えた瞬間にため息。 「おつかれ、わたし。」 アハハ、セルフねぎらいって大事でしょ。
ほんとは誰かに言ってほしいのよ。 「もう、演じなくていいよ」って。 でもそんな台詞、現実の男は言ってくれないの。 ドラマの中だけ。
本性を出してしまう瞬間
でもね、たまに“仮面”がずれる瞬間があるの。 たとえば、ワインが少し多めに入った夜。 口がすべって、心の奥で丸めてた言葉がポロッとこぼれる。
「わたし、そんなに都合いい女じゃないよ？」 って言った瞬間の、相手の顔。 あれ、最高。
その目の奥に浮かぶ「え、そんなタイプだったの？」っていう動揺。 ああ、気づいちゃった？ そう、わたし、あなたの理想の“いい女”なんかじゃないのよ。
でもね、怖いの。 本性を見せた瞬間、相手が離れていくこともある。 「思ってたのと違う」とか、「なんか強そうで無理」とか。 勝手に作った幻想に恋して、勝手に幻滅する。 …アハハ、勝手すぎるでしょ。
だから、演じるのをやめられない。 “本当のわたし”より、“期待されるわたし”のほうが、恋が長持ちする気がするのよ。 それがわかってるから、たまに素を出すと、少しゾクッとする。 バランスを崩す瞬間が、いちばん人間らしい気がしてね。
演じ続けることの矛盾
「いい女」ってね、意外と不自由なのよ。 誰かの理想に寄り添うために、自分の感情を整理して、 怒りや嫉妬、寂しさみたいな“人間らしいノイズ”を全部削ぎ落とす。 完璧なキャラ設定を自分で作って、24時間ロールプレイ。 それってもう、恋じゃなくて仕事。
でも不思議なことに、この“仕事”をやめた瞬間、恋も終わる気がするの。 彼が好きなのか、それとも彼に好かれている“わたし”が好きなのか、 もうよくわからない。
本当の自分を見せたいと思いながら、 見せたら嫌われるのが怖くて、結局また“いい女”に戻る。 アハハ、ほんと、堂々巡り。
ワインのグラスを傾けながら考えるの。 恋愛って、演技力の大会みたい。 “どれだけバレずに演じきれるか”で、賞がもらえるなら、たぶん私、けっこういい線いくわ。
でもその賞、受け取るとき、誰も拍手してくれないのよね。 静かな夜だけが、観客みたいに見てる。
本音の宣言
ねえ、正直に言うわ。 いい女でいるの、もう少し疲れてきた。 誰かに嫌われるのが怖くて、完璧な笑顔でごまかすのも、 「大丈夫」って強がるのも、もう飽きたの。
本当は、ちょっとだらしなくて、めんどくさくて、 人の悪口だって言っちゃうし、寂しがり屋でもある。 そういう“人間らしいわたし”も、ちゃんと存在してる。 それを見せられない恋なんて、続ける意味ある？って思うときもある。
でもね、恋って不思議なもので、 どんなに「もう疲れた」って思っても、誰かに優しくされると、また始めちゃうのよ。 「今度こそ本音で付き合えるかも」なんて、毎回懲りずに信じてる。 …アハハ、バカみたいでしょ？でもそれが人間だと思うの。
だから今は、演じることも、弱さを見せることも、どちらも自分として受け入れたい。 “いい女”の仮面は、もはや防具みたいなもの。 誰かを守るためじゃなくて、私自身を傷つけないための。 それでも、いつか誰かがそっとその仮面を外してくれるなら── そのときは、素直に笑ってみせたい。
「演じるわたし」と「素のわたし」、どちらも本当のわたし。 それをわかってくれる人がいるなら、恋をしてもいい。
夜、メイクを落として鏡を見る。 “いい女”はもういない。そこに映ってるのは、ちょっと疲れてるけど、 確かに息をしてる女。 ワインの残りを一口だけ飲んで、 「今日もよく頑張ったね、わたし」ってつぶやく。
ふふっ。 明日もきっと、また誰かの前で“いい女”を演じるんだろうけどね。 でも、その仮面の下ではちゃんと、 「わたしはわたしでいい」って、つぶやいてる。
アハハ、ねえ── 本音のわたしも、少しは可愛いでしょ？