静かな夜、BAR「恋古都」。グラスを傾けながら、ふとこぼれる“懐かしい恋の記憶”。
今回はケンジ、マリ、リク、ナナの4人が集まり、それぞれの過去と向き合いながら語り合いました。
ワイワイと騒がずとも、しんと胸に響く、そんな時間の記録です。
ケンジ「…あん時、言っときゃよかったってやつ、あるよな。もう10年以上前の話だけどよ。」
ナナ「あるある。私も“言えなくて終わった”タイプ。あの頃の自分、勢いだけはあったけど、案外怖がってたんだよね。」
リク「……それ、わかります。遠距離だったんですけど、最初からわかってたんですよ、たぶんうまくいかないって。でも、言葉にする勇気が出なかったですね。」
マリ「言わなかったことって、結局ずっと残るのよね。時間が経つと、言葉より沈黙の重さのほうが記憶に残る。」
ケンジ「マリ、その言い方、ちょっと刺さるな。……俺さ、告白まがいのことはしたんだけど、あの子、“今のままでいたい”って言ったんだよ。大人すぎてな。俺が子どもだった。」
ナナ「うわ、わかるその感じ。“壊すくらいならこのままで”ってやつ。すごく苦しいんだよね……。」
リク「“今の関係が好きだから”って言われると、踏み出すのが怖くなりますよね。大人の優しさって、残酷だなって思ったことあります。」
マリ「リク、あなた優しいわね。そうやって今も考えられるのが、偉いと思う。でも……大人の優しさって、ほんとは自分を守ってるだけだったりもするの。」
ケンジ「ああ、それ。俺ら、大人ぶるくせに、実は逃げてんだよな。ほんとは言うのが怖かっただけだったりしてよ。」
ナナ「それに、“またいつか”って、すごく便利なセリフだと思う。未来に投げておけば、今は少し楽になるしね。」
マリ「“またいつか”は、だいたい二度と来ないわ。……でも、それでもいいと思える日が、いつか来るのもまた事実。」
リク「僕、あの時ちゃんと伝えてたら、人生変わってたかもしれないって思います。でも、今は“伝えなかった僕”にも意味があったのかなって。」
ナナ「リク、それすごくいい言葉だね。……うん、私も今だから思える。“言えなかったあの頃の私”、けっこうがんばってたなって。」
ケンジ「俺ら、過去には勝てねぇけど、過去を“許す”くらいはできる年になってきたのかもな。」
マリ「許すっていうより……愛でる、かしらね。懐かしさって、そんな感情よ。」
編集部より:
感情を語るのではなく、記憶を通して静かににじむものを見せてくれた夜。
誰もが“あのとき”に戻りたくなる瞬間がある。だけど今の私たちもまた、誰かにとって“いつかの記憶”になるのかもしれません。
