「ミユってさ……」
カフェで友達とおしゃべりしていたときのこと。
ふいに、こんなことを言われた。
「ミユって色気ないよね」
……え?
あたし、思わずコーヒーを吹きそうになった。
「え、ちょっと待って。いきなりなにその悪口」
「悪口じゃないよ〜。かわいいしモテると思うけど、
なんていうか……色気じゃなくて“元気”って感じ」
「あ、それ分かる」
友達がうなずく。
……分かるんかい。
「いやいやいや!」
あたしは思わずテーブルを軽く叩いた。
「あたしだってさ、たまには“大人の魅力”とか出したいわけよ?!」
友達はゲラゲラ笑っている。
「ミユはね〜、かわいいけど“色気”って感じじゃないのよ」
ぐぬぬ……。
その言葉が、妙に引っかかった。
色気がない。
それってつまり……
「恋愛対象として見られにくい」ってこと?
気になりすぎて、そのまま編集部に直行した。
「ちょっと聞いて!!」
編集部のドアを開けると、ライターたちが振り返る。
「あたし、今日友達に言われたの!
“ミユって色気ないよね”って!」
ナナが笑い、ミカコがコーヒーを置き、ワニオが首をかしげる。
「なるほどね」
ナナが腕を組んだ。
「じゃあさ、いい機会だし——」
『色気ってなんなの?』座談会やろうか。
こうして突然、編集部での恋愛座談会が始まった。

色気のある人ってどんな人?
ミユ:
というわけで聞きたいんだけど。
ミユ:
色気って何なの!?
ナナ:
いきなり核心ね。
ミカコ:
まずそこから整理しないとね。
ミユ:
だってさ、「色気ない」って言われてもさ。
ミユ:
色気って何か分かんないんだけど!
ナナ:
確かにね。
色気って説明しにくい言葉よね。
ミカコ:
でも不思議なことに、色気のある人を見ると「ある」って分かる。
ミユ:
それそれ!
ミユ:
なんかこう……雰囲気?
ナナ:
そう。
色気ってね、顔とかスタイルだけじゃないのよ。
ミカコ:
むしろ雰囲気の要素がかなり大きい。
ミユ:
えー、じゃあどうやったら出るの?
ナナ:
焦るな焦るな(笑)
ワニオ:
色気とは、人の注意を静かに引き寄せる力です。
ミユ:
いきなり哲学!
ミカコ:
でもちょっと分かる。
ワニオ:
騒がなくても視線を集める人がいるでしょう。
ワニオ:
あれが色気です。
ナナ:
なるほどね。
ミユ:
つまり……目立とうとして出るものじゃない?
ミカコ:
むしろ逆。
ナナ:
無理に出そうとすると消えるのよ、色気って。
露出=色気ではない
ミユ:
ねえねえ、ちょっと聞いていい?
ミユ:
色気ってさ、やっぱり露出とか関係あるの?
ナナ:
出たわね、その誤解。
ミカコ:
かなり多いよね、それ。
ミユ:
え、違うの?
ナナ:
違うわよ。
ナナ:
むしろ露出=色気と思ってると失敗するわね。
ミユ:
ええっ!?
ミカコ:
露出って分かりやすいアピールではあるけど、色気とは別物。
ミユ:
じゃあミニスカとか意味ない?
ナナ:
意味がないわけじゃないけどね。
ナナ:
でも露出が多い=色気があるにはならないの。
ワニオ:
露出は「見せる」行為です。
ワニオ:
色気は「感じさせる」ものです。
ミユ:
おお……なんか深い。
ミカコ:
例えばさ。
ミカコ:
普通のシャツとデニムでも色気ある人いるでしょ?
ミユ:
いるいる!
ナナ:
逆に、露出多くても色気ない人もいる。
ミユ:
……いる。
ナナ:
つまりね。
ナナ:
色気は服の面積じゃなくて、雰囲気なのよ。
ミユ:
なるほど……。
ワニオ:
人は見えているものより、見えないものに想像を働かせる生き物です。
ミユ:
ワニオ、今日キレてるね。
ミカコ:
だから色気は、見せるよりも。
ミカコ:
余白を残すほうが出るのよ。
色気のある人が無意識にやっている5つのこと
ミユ:
じゃあさ。
ミユ:
結局どうすれば色気出るの?
ナナ:
いい質問ね。
ミカコ:
実は、色気ある人って共通点あるんだよね。
ミユ:
マジ!?
ナナ:
いくつかあるわよ。
ワニオ:
色気は料理と同じです。
ミユ:
また変な例えきた。
ワニオ:
材料より火加減と間が大事です。
ミカコ:
…ちょっと分かるのが悔しい。
ナナ:
じゃあ整理していくわね。
ナナ:
色気ある人が自然にやってること。
ナナ:
だいたいこの5つね。
①ゆっくり話す
ミユ:
あ、これ聞いたことある。
ミカコ:
早口ってどうしても子どもっぽく見えるんだよね。
ナナ:
落ち着いて話すだけで大人っぽさが出るのよ。
ワニオ:
急いで食べるラーメンより、
ゆっくり食べるラーメンのほうが美味そうに見えるでしょう。
ミユ:
例えがラーメン。
②姿勢がいい
ミカコ:
これはかなり大きい。
ナナ:
背中丸いと一気に生活感出るからね。
ミユ:
ぐさっ。
ワニオ:
猫背は「帰宅したカメ」です。
ミユ:
なにそれ。
ワニオ:
姿勢のいい人は歩く灯台です。
ミカコ:
灯台はちょっと分かる。
③感情が落ち着いている
ミユ:
あーこれ分かる。
ナナ:
色気ある人って感情が暴れないのよね。
ミカコ:
騒がない人のほうが目立つ。
ワニオ:
静かな湖には月が映ります。
ミユ:
急に文学。
ワニオ:
騒がしい池にはアヒルしか来ません。
ミカコ:
アヒル(笑)
④余裕がある
ミユ:
余裕ってどうやったら出るの?
ナナ:
全部完璧じゃなくていいのよ。
ナナ:
慌てないだけで色気は出るの。
ミカコ:
余裕のある人って空気が違うんだよね。
ワニオ:
色気は「急いでない人」に宿ります。
ミユ:
どういうこと?
ワニオ:
急いでる人は電車です。
ワニオ:
色気のある人は夜のフェリーです。
ミカコ:
意味分からないけど雰囲気ある。
⑤自分を知っている
ミユ:
これ大事そう。
ミカコ:
自分の似合うもの分かってる人ね。
ナナ:
背伸びしてない人は強いのよ。
ワニオ:
自分を知らない人は迷子です。
ミユ:
また例え。
ワニオ:
自分を知っている人は地図を持った迷子です。
ミカコ:
それもう迷子じゃないでしょ。
ナナ:
でも結局それなのよ。
ナナ:
色気って自分に無理をしてない人から出るの。
色気のある人になるために今すぐできること
ミユ:
さっきから何回も出てるけどさ。
ミユ:
その「余裕」ってそんなに大事なの?
ナナ:
大事よ。
ナナ:
むしろ色気の正体って余裕だと思ってる。
ミカコ:
うん。
色気がある人って、ガツガツして見えないんだよね。
ミユ:
あー…。
ミユ:
たしかに、焦ってる人って色気とはちょっと違うかも。
ミカコ:
そう。
せかせかしてたり、リアクションが忙しすぎたりすると、どうしても子どもっぽく見えやすい。
ナナ:
逆に、落ち着いてる人はそれだけで大人っぽく見えるのよ。
ミユ:
じゃあ色気って、見た目より動き方?
ミカコ:
かなりそう。
色気って、顔の造形より空気の出し方のほうが大きい。
ワニオ:
色気とは、急がない引力です。
ミユ:
またワニオ語録きた。
ワニオ:
急いでいる人は、自動ドアに似ています。
ミユ:
どういうこと?
ワニオ:
近づいた瞬間に、全部開いてしまう。
ナナ:
あー、なんか分かる(笑)
ワニオ:
色気のある人は、重い扉です。
ミユ:
重い扉?
ワニオ:
すぐには開かない。
でも、そのぶん向こう側が気になる。
ミカコ:
悔しいけど、今日のワニオかなりいいこと言うね。
ナナ:
色気って結局、全部見せない余裕なのよね。
ミユ:
なるほど…。
色気って、作るものというより、落ち着きから出るものなのかも。
色気って恋愛に必要?

ミユ:
でもさ。
ミユ:
そもそもなんだけど…。
ミユ:
色気って恋愛に必要なの?
ナナ:
お、いいところ突くじゃない。
ミカコ:
確かに。
ミカコ:
色気ない人が恋できないわけじゃないよね。
ミユ:
でしょ!
ミユ:
だったら別に気にしなくてもいいんじゃない?
ナナ:
まぁ落ち着きなさい。
ナナ:
色気は「必須」じゃないわ。
ナナ:
でも恋愛で有利に働くことは多いのよ。
ミユ:
有利?
ミカコ:
第一印象の話だね。
ミカコ:
人って最初の印象で、なんとなく惹かれるかどうか決まることあるでしょ。
ミユ:
あるある。
ナナ:
その「なんとなく惹かれる」に関係するのが色気なのよ。
ミユ:
なるほど…。
ワニオ:
色気とは、理由のない好意です。
ミユ:
またワニオ語録。
ワニオ:
理屈で好きになる人もいます。
ワニオ:
しかし人は時々、
理由もなく気になる人に出会います。
ミカコ:
あー、それはある。
ナナ:
説明できない魅力ってやつね。
ワニオ:
色気は、恋の「予感」に似ています。
ミユ:
今日はちょっと詩人だね。
ワニオ:
恋は雷に似ています。
ミユ:
急にどうした。
ワニオ:
落ちる理由は、あとから人間が考えるのです。
ミカコ:
言ってることは分かるけど例えが大きい。
ナナ:
つまりね。
ナナ:
色気がある人って、
「なんか気になる人」になりやすいのよ。
ミユ:
なるほど…。
ミユ:
じゃあやっぱり色気ほしいかも。
色気がある人はなぜモテるのか
ミユ:
さっきから聞いてるとさ。
ミユ:
色気ある人って結局モテるってこと?
ナナ:
まぁ、そうね。
ナナ:
恋愛の入り口ではかなり有利だと思うわ。
ミカコ:
うん。理由はシンプルで。
ミカコ:
人は「なんとなく惹かれる人」に興味を持つから。
ミユ:
それが色気?
ミカコ:
そう。
ミカコ:
色気ある人って距離感が上手いんだよね。
ミユ:
距離感?
ナナ:
近すぎない、遠すぎない。
ナナ:
そのバランスがうまいのよ。
ミユ:
あー…。
ミユ:
距離近すぎる人いるよね。
ミカコ:
いるいる。
ミカコ:
最初から全部出してくる人とか。
ナナ:
そういう人は安心感はあるけど、恋のドキドキは生まれにくいの。
ワニオ:
人は全部見える景色より、
少し霧がかかった景色を長く見てしまいます。
ミユ:
またワニオの謎例え。
ワニオ:
はっきり見える山は写真を撮って終わりです。
ワニオ:
しかし霧の山は、
「この向こうに何があるのか」と考えてしまう。
ミカコ:
…それはちょっと分かる。
ナナ:
つまりね。
ナナ:
色気のある人って想像させる余白があるのよ。
ミユ:
余白かぁ。
ワニオ:
恋はパズルです。
ミユ:
また始まった。
ワニオ:
最初から完成しているパズルは、誰も遊びません。
ミカコ:
言い方ひどいけど、ちょっと真理。
ナナ:
だから色気って、派手な魅力というより。
ナナ:
「もう少し知りたい」と思わせる力なのよ。
ミユ:
なるほど…。
ミユ:
それなら、ちょっと分かる気がする。
色気がなくてもモテる人の共通点
ミユ:
でもさ。
ミユ:
色気ないのにモテる人もいるよね?
ナナ:
いるわね。
ミカコ:
むしろ結構いる。
ミユ:
じゃあ結局どういうこと?
ナナ:
恋愛ってね、色気だけで決まるわけじゃないのよ。
ミカコ:
色気はあくまで入口。
ミカコ:
そのあと関係が続くかは別の魅力だったりする。
ミユ:
例えば?
ナナ:
分かりやすいのはこれね。
ナナ:
一緒にいて楽しい人。
ミユ:
あー、それは強い。
ミカコ:
あと、よく笑う人。
ミカコ:
これもかなりモテる要素。
ミユ:
確かに。
ナナ:
それから、素直な人。
ナナ:
リアクションが素直な人って可愛いのよ。
ミユ:
なるほど…。
ワニオ:
恋愛は料理に似ています。
ミユ:
また料理。
ワニオ:
高級スパイスがなくても、
美味しい料理は作れます。
ミカコ:
つまり?
ワニオ:
色気はスパイスです。
ワニオ:
しかし人は最終的に、
毎日食べられる料理を選びます。
ナナ:
それは分かるわね。
ミユ:
じゃあ色気なくても希望あるじゃん!
ミカコ:
あるよ。
ミカコ:
むしろ色気より強い魅力もある。
ナナ:
そうね。
ナナ:
恋愛って結局、
「一緒にいたいかどうか」だから。
ミユ:
なんか安心した。
ワニオ:
ただし。
ミユ:
ただし?
ワニオ:
スパイスがある料理は、
やはり記憶に残りやすいのです。
ミユ:
また意味深なこと言う!

ミユは色気を出せるのか問題
ミユ:
というわけで。
ミユ:
あたしも今日から色気ある人になるわ。
ナナ:
急ね。
ミカコ:
どうやって?
ミユ:
まずは落ち着いて話す。
ミユ:
それからゆっくり動く。
ミユ:
あと余裕のある女になる。
ナナ:
口で言うのは簡単なのよ。
ミユ:
見てて。
ミユ:
……ふふ。
ミカコ:
なにその笑い方。
ミユ:
色気。
ナナ:
いや、ぎこちなさしかないわよ。
ミユ:
えっ!?
ミカコ:
今のは色気というより、
急にキャラ変しようとしてる人だった。
ミユ:
うそでしょ。
ナナ:
色気って、いきなり上からかぶるものじゃないのよ。
ミユ:
じゃあどうすればいいの〜。
ワニオ:
色気は毛布に似ています。
ミユ:
また変なのきた。
ワニオ:
無理に引っ張ると、片側だけ床につきます。
ミカコ:
ちょっと分かるの悔しい。
ワニオ:
自然に肩にかかっているときだけ、
ちゃんと暖かい。
ナナ:
つまり、無理して作るなってことね。
ミユ:
なるほど…。
ミカコ:
たぶんミユは、色気を「盛る」方向で考えすぎなんだよ。
ミユ:
え?
ミカコ:
ミユはミユのままで、
ちょっと動きを丁寧にするとか、
話すスピードを少し落とすとか。
ミカコ:
そのくらいで十分変わると思う。
ナナ:
そうそう。
色気って「別人になること」じゃないのよ。
ミユ:
あー…。
ミユ:
なんかちょっと分かったかも。
ワニオ:
色気とは、静かな重力のようなものです。
ミユ:
出た、今日の名言。
ワニオ:
騒がなくても、なぜか目が向いてしまう。
ワニオ:
それが色気です。
ミカコ:
うん。今日はワニオが一番まともだったかも。
ナナ:
たまにはあるのよね、こういう日。
ミユ:
じゃあ今日の結論!
ミユ:
あたしは急に色気ムンムンにはなれない!
ナナ:
当たり前ね。
ミユ:
でも、ちょっと落ち着いて、
ちょっと丁寧にして、
ちょっと余裕を持てば。
ミユ:
今よりは色気ある人に近づけるってことだよね?
ミカコ:
そういうこと。
ワニオ:
人間は少しずつ熟すものです。
ミユ:
それ、褒めてる?
ワニオ:
ええ。
未熟な果実も、時間が経てば香ります。
ナナ:
例えが農園なのよ。
ミユ:
でもまあ、今日からちょっとだけ
「静かな重力」意識してみるわ。
ミカコ:
まずは走りながらしゃべるのやめなさい。
ミユ:
そこから!?



