「ちゃんとしてるね。」
昔から、よく言われます。
褒め言葉なんだと思います。
だから。
「ありがとう。」
そう返します。
本当に嫌だったことは、一度もありません。
でも。
少しだけ疲れる日があります。
この話をすると、たいてい驚かれます。
「ミカコさんが?」
そう。
わたしが。
ちゃんとしてる人は、ちゃんとしていたい人。
そんなイメージがあるのかもしれません。
でも、たぶん違います。
少なくとも、わたしは違います。
約束を守る。
遅刻しない。
返信を忘れない。
仕事を終わらせる。
別に立派な人になりたいわけじゃありません。
その方が、あとで面倒にならないから。
それだけです。
なのに。
いつの間にか「ちゃんとしてる人」になっていました。
その肩書きは便利です。
信用もされます。
任せてもらえることも増えます。
でも。
肩書きって、一度つくと勝手には外れません。
ちゃんとしてる人は。
今日もちゃんとしてると思われます。
明日も。
たぶん来週も。
だから。
ちゃんとしていたくない日が、少しだけ困るんです。
今日は、その話をします。
ちゃんとしてる人は、ちゃんとしていたいわけじゃない

誤解されやすいんですが。
わたしは、ちゃんとしている人になりたかったわけじゃありません。
どちらかというと。
面倒なことが嫌いなんです。
遅刻すると謝ることになる。
約束を忘れると信頼を失う。
返信を放置すると、あとで説明が必要になる。
その全部が面倒です。
だから先にやる。
その方が楽だから。
理由は、それくらいです。
だから「ちゃんとしてるね」と言われると。
少しだけ反応に困ります。
そんなに立派な理由で生きていません。
歯を磨くのと同じです。
磨かないと気持ち悪い。
だから磨く。
それを毎日褒められたら。
たぶん少し照れます。
ちゃんとしてることも、わたしにはそれに近い感覚です。
でも。
周りから見ると違うらしい。
「ミカコなら大丈夫。」
「ミカコなら安心。」
「ミカコなら任せられる。」
そう言われることが増えました。
嬉しくないわけじゃありません。
信用されるのは、ありがたいことです。
ただ。
信用って、ときどき期待とセットで届きます。
ちゃんとしてる人なんだから。
今回もちゃんとしてくれる。
そう思われる。
だから一度だけ忘れ物をすると。
「珍しいね。」
一度だけ遅刻すると。
「何かあった?」
それは普通の反応です。
でも、その「珍しい」が積み重なると。
ちゃんとしていることが、少しずつ役割になっていきます。
役割になると。
今度は、それを崩しにくくなる。
「ちゃんとしてるね」は、褒め言葉です。
でも、ときどき制服にもなります。
脱ぎたい日があっても。
周りは、まだ着ていると思っています。
頼られる人ほど、「大丈夫?」と聞かれない
ちゃんとしている人は、頼られます。
これは事実です。
仕事でも。
友達でも。
恋愛でも。
「ミカコなら何とかしてくれる。」
そう思ってもらえるのは、悪いことじゃありません。
むしろ嬉しい。
信頼されているんだと思います。
でも。
信頼される人には、あまり聞かれない言葉があります。
「大丈夫?」です。
不思議なくらい、聞かれません。
ちゃんとしているように見える人は。
ちゃんとしているから大丈夫。
そう思われるんでしょうね。
もちろん。
わたしにも、大丈夫じゃない日はあります。
朝から何もかもうまくいかない日。
人と話したくない日。
仕事を投げ出したくなる日。
恋愛なんて、考える余裕もない日。
普通にあります。
でも。
そういう日に限って。
「ミカコさん、お願い。」
「ミカコならできるでしょ。」
そう言われたりします。
期待されているだけです。
分かっています。
悪気もありません。
だから断りにくい。
「今日は無理。」
その一言が、意外と難しい。
ちゃんとしている人って。
ちゃんとしているから頼られるんじゃありません。
頼られ続けた結果、ちゃんとしていく部分もあるんだと思います。
期待に応える。
また期待される。
また応える。
その繰り返しです。
気づけば。
弱音を吐くタイミングが、少し分からなくなっていました。
「しっかりしてるね。」
その言葉の裏側には、ときどき「あなたは大丈夫だよね。」が隠れています。
たぶん。
わたしが欲しかったのは。
「頑張って。」じゃなくて。
「今日は休む?」
その一言だった日も、ありました。
ちゃんとしていない日も、もちろんある

ここまで読むと。
わたしは毎日きっちり生きている人みたいです。
そんなことありません。
部屋は散らかります。
洗濯物をたたまない日があります。
夕飯がお菓子で終わる日もあります。
休日なんて、夕方まで部屋着のままです。
誰にも見せないだけです。
恋愛だって同じです。
冷静そう。
感情に流されなさそう。
よく言われます。
半分は合っています。
半分は違います。
ちゃんと傷つきます。
ちゃんと落ち込みます。
ちゃんと考えすぎます。
ただ。
それを全部、外に出さないだけです。
泣かないわけじゃありません。
見せないだけ。
不安にならないわけじゃありません。
言わないだけ。
その方が楽だから。
昔は、それが大人なんだと思っていました。
でも最近は。
少し違う気がしています。
ちゃんとしていることと。
我慢することは、同じじゃない。
そこを混ぜると、少し息が苦しくなる。
だから最近は。
疲れた日は「疲れた」と言うようにしています。
無理な日は断るようにしています。
できない日は、「今日はできない」と言います。
最初は勇気がいりました。
「ミカコらしくないね。」
そう思われるかもしれないと考えたからです。
でも。
一度も言われませんでした。
拍子抜けするくらい。
誰も困りませんでした。
困っていたのは。
ちゃんとしていなきゃいけないと思っていた、わたしだけだったのかもしれません。
ちゃんとしている人を演じるのは疲れる。
ちゃんとしている自分をやめる方が、ずっと勇気がいりました。
最近は、「ちゃんとしてない日」を残すようにしている
最近、一つだけ変えたことがあります。
全部ちゃんと終わらせてから寝る。
それをやめました。
洗い物が残っていてもいい。
本を読みたかったら読む。
眠かったら寝る。
返信も、明日でいいなら明日にする。
昔のわたしなら。
全部終わらせていました。
終わらせないと落ち着かなかった。
でも。
終わらせることと、満たされることは別でした。
部屋はきれい。
やることも終わってる。
なのに疲れている。
そんな日が意外と多かった。
だから今は。
少しくらい終わっていなくても、その日を終わらせます。
不思議なもので。
世界は何も変わりませんでした。
翌朝、洗い物をしても。
返信を返しても。
仕事は普通に始まる。
人間関係も壊れない。
もっと早く気づけばよかったと思います。
ちゃんとしていることより。
ちゃんと休めることの方が、ずっと難しい。
休むのって、才能じゃありません。
練習です。
ちゃんとしている人ほど、その練習をしてこなかっただけ。
だから最初は少し下手です。
わたしも、まだ下手です。
でも。
少しずつ慣れてきました。
今日はここまで。
そう決めることに。
「ちゃんとしてるね。」
その言葉は、今でも嬉しい。
でも最近は、「今日はちゃんとしてなくていい。」という自分の声も、同じくらい大事にしています。
今日は、ちゃんとしてるのを休む

今日も帰ったら。
洗い物は残っているかもしれません。
返信も、一つくらい明日にするかもしれません。
ソファで寝てしまうかもしれない。
昔なら。
そんな自分に、少しがっかりしていました。
「ちゃんとしてない。」
そうやって、自分で点数をつけていたんです。
でも。
誰も採点なんてしていませんでした。
減点していたのは、いつも自分です。
ちゃんとしていることは、大切です。
約束は守った方がいい。
信頼も大事。
その考えは今も変わりません。
ただ。
毎日100点じゃなくてもいい。
今日は80点。
明日は60点。
そんな日があっても、人は意外と普通に生きていけます。
むしろ。
そのくらいの方が、また明日ちゃんと頑張れます。
だから最近は。
「ちゃんとしてるね。」
そう言われた日は。
少しだけ笑って。
心の中で続けています。
「今日は、もう十分。」
明日のわたしがやればいいことは。
明日のわたしに任せます。
そのくらい、自分を信用してもいい年齢になりました。
ちゃんとしてる。
今日は、その肩書きを編集部に置いて帰ります。


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