昼休み。
編集部でパソコンを閉じたアカリが、ぐーっと伸びをする。
アカリ「は〜お腹すいた!ミカコさんランチ行こ!」
ミカコ「いいわよ。今日は私が店決める。」
数分後。
アカリ「え、ここ?」
アカリが見上げた先にあったのは、小さな蕎麦屋の暖簾。
アカリ「うちてっきりカフェとか行くのかと思ったんだけど。」
ミカコ「昼に一番いいのは蕎麦よ。」
迷いのない口調だった。
アカリ「そんな断言する?」
ミカコ「するわよ。」
ミカコは暖簾をくぐりながら振り返る。
ミカコ「だって蕎麦は、合理的で、美味しくて、体にもいい。
ランチとしてはほぼ完成形みたいな食べ物なのよ。」
アカリ「なんか…急に蕎麦プレゼン始まった。」
ミカコ「始まってない。まだ序章。」
そう言って席に座るミカコの目は、少しだけ本気だった。
どうやら今日のランチは——
ミカコの“蕎麦愛講義”付きらしい。

ミカコのランチ哲学「蕎麦は合理的」
店に入ると、ほんのり出汁の香りが漂っていた。
アカリ「なんか…落ち着く匂い。」
ミカコ「でしょ。」
ミカコはメニューを開くことなく店員に言う。
ミカコ:「もりそば。」
アカリ「早っ!」
アカリ:「ミカコさん、もう決まってるの?」
ミカコ:「迷う理由がないもの。」
アカリ:「そんなに?」
ミカコ:「蕎麦はランチとして合理的なのよ。」
アカリは首をかしげる。
アカリ:「合理的ってどういうこと?」
ミカコ:「まず、軽い。」
ミカコ:「昼に重いもの食べると午後眠くなるでしょ。」
アカリ:「それは…ある。」
ミカコ:「でも蕎麦は軽い。胃にもたれない。」
ミカコ:「それでいてちゃんと満足感もある。」
ミカコ:「しかも栄養も悪くない。」
アカリ:「なんか健康番組みたいになってきた。」
ミカコ:「事実よ。」
ミカコ:「午後のパフォーマンスを落とさないランチ。」
ミカコ:「それが蕎麦。」
アカリ:「ミカコさん、蕎麦の広報担当なの?」
ミカコ:「違うわよ。」
ミカコ:「ただ、良いものを正しく評価してるだけ。」
その言い方が妙に真剣だった。
どうやらミカコの蕎麦愛は、思ったより深そうだ。
ミカコの結論「もりそばがいちばん美味しい」

しばらくして、ふたりの前に蕎麦が運ばれてきた。
細く整った蕎麦。つやのある麺。小さな猪口のつゆ。
シンプルだった。
アカリ:「ほんとにシンプルだね。」
ミカコ:「それがいいの。」
ミカコは箸を取り、迷いなく蕎麦を持ち上げる。
軽くつゆにつけて、すすった。
ミカコ:「……うん。」
アカリ:「なんか今、評価した?」
ミカコ:「したわ。」
ミカコ:「蕎麦は、もりそばがいちばん美味しい。」
アカリ:「えー?」
アカリ:「天ぷらとかあるじゃん!」
ミカコ:「もちろん天ぷら蕎麦も美味しい。」
ミカコ:「でも、蕎麦の本当の味はシンプルな方がわかるのよ。」
ミカコ:「蕎麦の香り、麺の食感、つゆとのバランス。」
ミカコ:「余計なものがない方が全部見える。」
アカリ:「なんかワインの解説みたい。」
ミカコ:「食べ物はだいたい同じよ。」
ミカコ:「シンプルなものほど、誤魔化しがきかない。」
アカリ:「でもうちはちょっと寂しいかも。」
ミカコ:「アカリはそうよね。」
ミカコは少しだけ笑った。
ミカコ:「だから、あとでアレンジ教えてあげる。」
アカリ:「え、蕎麦ってアレンジできるの?」
ミカコ:「できるわよ。」
ミカコ:「蕎麦はね、静かな万能選手なの。」
蕎麦のメリットを語るミカコ
アカリは蕎麦をひと口すすって、少し驚いた顔をした。
アカリ:「あ、思ったより美味しい。」
ミカコ:「思ったより、って何。」
アカリ:「なんか蕎麦って地味なイメージあったんだよね。」
ミカコ:「地味だけど優秀なのよ。」
ミカコはさらっと言う。
ミカコ:「まず、血糖値が上がりにくい。」
アカリ:「いきなり健康トーク始まった。」
ミカコ:「パンとか白いご飯は血糖値が上がりやすいの。」
ミカコ:「蕎麦は比較的ゆるやか。」
ミカコ:「だから食後に眠くなりにくい。」
アカリ:「それは確かにありがたい。」
ミカコ:「あと、ルチン。」
アカリ:「ルチン?」
ミカコ:「蕎麦に含まれる成分。」
ミカコ:「血管にいいって言われてる。」
アカリ:「え、蕎麦ってそんなポテンシャルあるの?」
ミカコ:「あるわよ。」
ミカコ:「しかも消化も軽い。」
ミカコ:「午後に仕事ある人にはかなり理想的なランチ。」
アカリ:「ミカコさん、蕎麦に詳しすぎない?」
ミカコ:「愛よ。」
アカリ:「愛なんだ。」
ミカコ:「長く付き合うと、良さがわかるものよ。」
アカリのための蕎麦アレンジレシピ
しばらく蕎麦をすすったあと、アカリがふと顔を上げた。
アカリ:「でもさ。」
アカリ:「毎回これだとちょっと飽きない?」
ミカコ:「もりそばは飽きない。」
アカリ:「いや、うちは飽きる!」
ミカコは少しだけ笑った。
ミカコ:「アカリみたいなタイプには、アレンジがいいかもね。」
アカリ:「え、蕎麦ってアレンジできるの?」
ミカコ:「いくらでもできるわよ。」
ミカコ:「例えば、温玉そば。」
アカリ:「あ、それ美味しそう!」
ミカコ:「温泉卵を落として、少しだけごまをかける。」
ミカコ:「それだけでかなり満足感出る。」
アカリ:「それならうちでも食べたい。」
ミカコ:「あとはサラダそば。」
アカリ:「サラダそば?」
ミカコ:「レタスとかトマトとか乗せて、さっぱりしたドレッシングで食べるの。」
アカリ:「なんかカフェメニューっぽい!」
ミカコ:「でしょ。」
ミカコ:「あと個人的に好きなのは納豆そば。」
アカリ:「出た納豆。」
ミカコ:「タンパク質も取れるし、栄養的にも優秀。」
アカリ:「ミカコさん、ほんとに蕎麦のこと好きだね。」
ミカコ:「好きよ。」
ミカコ:「蕎麦はね、静かだけど万能なの。」
ミカコ:「地味に見えるけど、実力はかなり高い。」
アカリ:「なんか…急に蕎麦がカッコよく見えてきた。」

食べ終わってアカリの感想
しばらくして、ふたりの蕎麦はきれいに食べ終わっていた。
アカリ:「ごちそうさまでした。」
ミカコ:「ごちそうさま。」
アカリは湯のみを持ちながら、少し考える。
アカリ:「でもさ、ミカコさん。」
ミカコ:「なに?」
アカリ:「もりそばだけだと、栄養ちょっと偏らない?」
ミカコ:「偏るわよ。」
アカリ:「え、認めるんだ。」
ミカコ:「だからこのあとコンビニ寄るの。」
アカリ:「コンビニ?」
ミカコ:「サラダとサラダチキン買って、編集部で食べる。」
アカリ:「え。」
ミカコ:「蕎麦で炭水化物。」
ミカコ:「サラダでビタミン。」
ミカコ:「サラダチキンでタンパク質。」
ミカコ:「完璧。」
アカリ:「なんか…」
アカリ:「ミカコさんにも変態的な部分あるんだね。」
ミカコ:「褒め言葉として受け取っておく。」
アカリは笑いながら立ち上がった。
アカリ:「でも正直、蕎麦ちょっと好きになったかも。」
ミカコ:「でしょ。」
ミカコ:「蕎麦は静かな実力派なのよ。」
アカリ:「今度はサラダそば食べてみたい。」
ミカコ:「いいわね。」
ミカコ:「蕎麦の世界は深いわよ。」

