雑からの卒業?ナナ、本格ラーメンを作る(※本人基準)|ナナの姉御めし③

目次

お気に入りのゆるキャラをつけて出社しただけなのに

朝の編集部。

あたしはいつもよりちょっとご機嫌だった。

理由は単純。

カバンについてるこのマスコット。

昨日、コンビニのくじで当たったゆるキャラなんだけど——

これが、まあ可愛いのよ。

なんとなく気に入って、そのままカバンにつけて出勤した。

それだけの話。

……のはずだったんだけど。

ミユ
「ナナさーん!それ可愛いー!!」

朝イチでミユが大声を出した。

編集部の視線が一斉にこっちに集まる。

ソウタ
「あ、ほんとだ。ゆるキャラだ」

リク
「ナナさん、そういうの付けるんですね。意外です」

……は?

ナナ
「なによその“意外です”って」

ミユがニヤニヤしながらカバンをのぞき込む。

ミユ
「いやだって、ナナさんってこういうの興味なさそうじゃないですか」

ソウタ
「どっちかというと、革のバッグにサングラスとか入ってそうなイメージです」

リク
「“可愛い”より“カッコいい”って感じというか……」

……なるほどね。

つまりあれでしょ。

“可愛いものが似合うタイプじゃない”

って言いたいわけね。

あたしはゆっくり腕を組んだ。

ナナ
「失礼ね。」

三人がちょっと身構える。

ナナ
「言っとくけど、あたしだって可愛いもんくらい好きよ?」

ミユ
「いや、それは別に否定してないんですけど」

ソウタ
「でもナナさんって、生活とか豪快そうじゃないですか」

ミユ
「料理とかも“ドーン!”って感じで作りそう」

……。

あー、なるほどね。

そういうイメージなわけね、あたし。

可愛いものを持ってると「意外」。

料理はどうせ「豪快」。

雑そう。

大雑把そう。

丁寧な生活とは無縁そう。

——面白くないわね。

あたしはふっと笑った。

ナナ
「じゃあ教えてあげるわ。」

三人がきょとんとする。

ナナ
「あたしがどれだけ丁寧な生活してるか。」

リク
「え?」

ナナ
「今夜はね——」

“自宅で本格ラーメン作る予定なのよ。”

編集部が一瞬静まり返った。

そしてミユが、ぽつりと一言。

ミユ
「……ナナさんが?」

……その“ナナさんが?”って何よ。

あたしを誰だと思ってるの。

今夜のあたしはね。

本気よ。

ナナの自宅本格ラーメン(※本人基準)

その日の夜。

あたしはキッチンに立っていた。

腕まくり。

気合い十分。

——見せてやるわ。

あたしがどれだけ丁寧な生活してるか。

編集部のあの顔、思い出すだけで腹が立つ。

「ナナさんが?」とか言ってたわよね。

いいわ。

今日は本気。

本格ラーメン作るんだから。

まずは鍋。

水を入れて火にかける。

ここね。

ここが大事。

ラーメンって、水の量で味が変わるのよ。

だいたいで作る人もいるけど、あたしは違う。

ちゃんと——

パッケージを見る。

「500ml」

よし。

こういう基本を守るのが料理上手ってもの。

湯が沸く。

麺投入。

鍋の中でくるくるほぐす。

いい感じ。

ここで普通の人はスープを入れて終わりなんだけど……

あたしは違う。

冷蔵庫から一本取り出す。

めんつゆ。

これをね。

ほんの少し。

ほんの少しだけ。

鍋へ。

ちょろっ。

……。

ふっ。

これよ。

こういうひと手間が味に深みを出すの。

料理って、こういうところなのよ。

麺が茹で上がる。

火を止めてスープ投入。

どんぶりへ。

湯気。

いい匂い。

ここからが仕上げよ。

まず冷蔵庫からゆで卵。

コンビニの。

殻をむく。

……。

そのまま。

どん。

丸ごと投入。

半分に切る?

いやいや。

卵も豪快な方が美味いのよ。

次。

ハム。

袋から取り出す。

……。

包丁を見る。

ハムを見る。

包丁を見る。

ハムを見る。

いや。

これもそのままでいいわね。

チャーシューだって分厚い方が美味しいんだから。

ラーメンに——

ぺろん。

一枚投入。

いい感じ。

次。

乾燥ワカメ。

袋を開けて。

パラパラ。

パラパラ。

まあこのくらいでいいか。

スープで戻るし。

合理的ってやつ。

あたしは完成したどんぶりを見下ろした。

……悪くない。

むしろ。

かなり本格的。

店っぽい。

そしてラーメンだけじゃない。

今日はもう一品ある。

冷凍庫を開ける。

取り出したのは——

冷凍チャーハン。

電子レンジへ。

チン。

ラーメン。

チャーハン。

……。

あたしは腕を組んだ。

完全に町中華じゃない。

ふっと笑う。

明日の編集部。

きっとあいつら驚くわよ。

「ナナさん本格じゃん」ってね。

……まあ。

当たり前だけど。

だってあたし、料理できる女だし。

自称本格ラーメンを食べるナナ。

ナナの“本格ラーメン”に編集部、ざわつく

翌日の編集部。

あたしはいつもより少し機嫌がいい。

理由はもちろん、昨日の夜。

本格ラーメン。

あれは、なかなか良かった。

ラーメンってね。

結局、最後は料理人の感覚なのよ。

あたしはコーヒーを置きながら言った。

ナナ
「昨日、ちゃんと本格ラーメン作ったわ。」

ミユ
「えっ、ほんとに?」

ソウタ
「気になりますね」

リク
「ナナさんの本格ラーメン…」

三人とも少し身を乗り出している。

まあそうよね。

“本格”って言ったんだから。

あたしはスマホを取り出した。

ナナ
「これよ。」

テーブルにスマホを置く。

そこに映っているのは——

袋麺。

ハム一枚。

ゆで卵丸ごと。

ワカメぱらぱら。

横には冷凍チャーハン。

……。

……。

……。

ミユ
「えっと…」

ソウタ
「袋麺ですよね?」

ナナ
「ベースはね。」

ナナ
「大事なのはアレンジよ。」

リク
「ハム切ってないですね」

ナナ
「切る必要ある?」

ナナ
「チャーシューも大きい方が満足感あるでしょ。」

ナナ
「つまりこれは“豪快系トッピング”。」

ミユ
「ゆで卵丸ごとですね」

ナナ
「それがいいのよ。」

ナナ
「途中で割って味変できるから。」

ソウタ
「ワカメ乾燥のままですね」

ナナ
「スープで戻る。」

ナナ
「合理的でしょ。」

リク
「めんつゆ入れたんですか?」

ナナ
「隠し味。」

ナナ
「こういうひと手間が料理の深みになるの。」

三人が顔を見合わせる。

ミユ
「いや…でもナナさん。」

ミユ
「本格ラーメンって言うから」

ソウタ
「スープから作るとか」

リク
「チャーシュー仕込むとか」

ミユ
「そういうの想像してました」

……。

あたしは腕を組んだ。

ナナ
「料理ってね。」

ナナ
「手間じゃないのよ。」

ナナ
「センス。」

三人が黙る。

ナナ
「姉御めしも、そろそろ卒業かもね。」

ナナ
「これからは——」

ナナ
「ガチ料理で行こうかしら。」

……。

ミユ
「えっ」

ソウタ
「えっ」

リク
「えっ」


料理人ナナ爆誕

料理人の格好のナナと苦笑いするリク。

編集部の空気は、まだ少しだけ不穏だった。

ミユとソウタとリクは、もう一度スマホの写真を見る。

袋麺。

ハムそのまま。

ゆで卵丸ごと。

ワカメぱらぱら。

横には冷凍チャーハン。

……。

でも、あたしは満足している。

昨日の一杯は、確実にレベルが上がっていた。

姉御めし。

それはそれで悪くない。

でもね。

料理っていうのは、続けていれば進化するものなのよ。

あたしはコーヒーを一口飲んだ。

ナナ
「つまりあれね。」

ナナ
「姉御めしから一歩進んだってことよ。」

ナナ
「これからは——」

ナナ
「料理人ナナね。」

……。

ミユ
「えっ」

ソウタ
「えっ」

リク
「えっ」

こうして——

雑だった姉御めしは、

本格料理シリーズへと昇華したわ。

次回の本格料理もお楽しみに!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次