告白してないのに振られた日|リクの誠実めし

目次

新人編集と仕事をすることになった

とある恋愛メディアで、記事を書くことになった。

担当編集は、新人の女性。

オンラインで顔合わせをしたけど、かなり緊張している感じだった。

新人編集
「よ、よろしくお願いします……!」

画面の向こうで、深々と頭を下げる。

リク
「こちらこそよろしくお願いします」

リク
「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ」

新人編集
「すみません……!」

謝る。

まだ何も起きてないのに。

たぶん、かなり真面目な人なんだと思う。

メールも丁寧だった。

丁寧というか。

ちょっと硬い。

送るたびに“お世話になっております”が三回くらい出てくる。

だから僕は。

なるべくやりやすいようにと思っていた。

リク
「分からないことあったら、いつでも聞いてください」

新人編集
「ありがとうございます……!」

リク
「記事の方向性も、一緒に考えながらやりましょう」

新人編集
「は、はい……!」

……。

うん。

かなり緊張している。

だから。

打ち合わせのときは、なるべく話しやすい空気を作る。

返信も少し柔らかめにする。

会ったときも。

リク
「この辺ランチ美味しい店多いですよ」

新人編集
「そ、そうなんですね……!」

リク
「慣れるまで大変ですよね」

新人編集
「はい……でも頑張ります……!」

……まあ。

いつも通りだ。

僕としては。

でも。

どうやら今回は、その“いつも通り”が少し問題だったらしい。

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突然のお断りは、だいたい心臓に悪い

記事の進行は、わりと順調だった。

新人編集さんも、最初よりだいぶ慣れてきた感じがする。

メールの“お世話になっております”も二回くらいまで減った。

これはかなりの進歩だ。

ある日の打ち合わせ終わり。

駅前のカフェ。

ノートパソコンを閉じながら、僕は言った。

リク
「いい感じですね」

リク
「かなり読みやすくなってきたと思います」

新人編集
「あ、ありがとうございます……!」

やっぱりまだ少し緊張している。

でも最初よりは、かなり自然に話せるようになった。

リク
「この調子なら大丈夫ですよ」

新人編集
「……あの」

突然。

空気が変わった。

新人編集さんが、妙に真剣な顔をしている。

……ん?

新人編集
「リクさんって……」

新人編集
「すごく優しいですよね」

リク
「えっ」

なんだろう。

嫌な予感がする。

でも、まだ分からない。

分からないけど。

なんとなく心臓がザワつく。

新人編集
「その……」

新人編集
「すごく素敵な方だと思います」

……。

あ。

これ。

方向、おかしくない?

新人編集
「でも申し訳ないんですが……」

新人編集
「リクさんのお気持ちには応えられません」

……。

…………え?

リク
「えっ」

声に出た。

普通に出た。

新人編集
「すみません……!」

新人編集
「優しくしていただいて、本当に嬉しかったんですけど……、あくまで、仕事の関係でいたいというか」

リク
「い、いや!」

リク
「違うんです!」

店員さんがちょっとこっち見た。

やめてください。

新人編集
「仕事覚えなくちゃいけなくて、恋愛はまだ……!」

リク
「違うんですほんとに!!」

まずい。

完全に。

“断ったあと気まずくさせないように頑張る男”になってる。

違う。

違うんだ。

でも。

焦れば焦るほど、空気がややこしくなる。

……。

人生って、たまに意味が分からない。

告白してないのに振られて焦るリク。

今夜の誠実めし|混乱した日は天津飯で包み込む

帰宅。

ドアを閉めた瞬間、思わず天井を見上げた。

リク
「なんだったんだろう今日……」

静かな部屋に声が消える。

別に悪いことはしていない。

……はずだ。

たぶん。

でも。

結果として。

“振られた男”みたいになった。

しかも。

僕は告白していない。

なのに振られている。

意味が分からない。

バッグを置いて、冷蔵庫を開ける。

……こういう日は。

誠実めしが必要だ。

卵を取り出す。

今夜は天津飯にする。

理由は分からない。

でも今、僕には“全部を包み込む何か”が必要だった。

フライパンを火にかける。

卵を溶く。

少し多めに。

今日はふわふわにしたい。

ご飯をよそう。

卵を流し込む。

じゅわっと音が広がる。

……落ち着く。

さっきまでの混乱が、少しずつほどけていく。

卵を半熟くらいで火から下ろす。

ご飯の上へ。

次は餡。

水。

鶏ガラスープ。

醤油。

みりん。

片栗粉。

ゆっくり混ぜる。

とろみがついていく。

……なんだろう。

餡って、全部を強引にまとめる力がある。

今日の僕に必要なのは、たぶんこれだ。

完成。

湯気の立つ天津飯。

餡を上からかける。

全部包む。

全部まとめる。

……うん。

今日はこういう飯だ。

リク
「いただきます」

一口。

……やさしい。

卵がふわふわしている。

餡が熱い。

でも、その熱さがちょうどいい。

気づけば、少し笑っていた。

リク
「誠実って難しいな……」

誰もいない部屋でつぶやく。

天津飯は、静かに湯気を立てていた。

天津飯を食べるリク。
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「あんた、距離近いのよ」で全部説明がついた

数日後。

こいこと。編集部。

コーヒーを飲みながら、僕は例の話をしていた。

リク
「……ということがありまして」

編集部が静かになる。

数秒。

そして。

ミユ
「えぇぇぇぇ!?」

爆笑。

ミユ
「“リクさんのお気持ちには応えられません”って言われたの!?」

リク
「そうです……」

ミユ
「告白してないのに!?」

リク
「してないです」

ミユ
「なにそれ、怖い怖い怖い!」

リク
「僕もかなり混乱しました……」

ナナ
「あんた、距離近いのよ」

即答だった。

リク
「えっ」

ナナ
「優しいし、返信丁寧だし」

ナナ
「新人相手だと余計に“勘違いしても仕方ないライン”まで行くの」

……。

否定できない。

ミカコ
「あとリク、話聞くときの顔が優しすぎる」

リク
「顔?」

ミカコ
「“この人なら受け止めてくれそう”感がすごい」

ミユ
「わかるー!」

ミユ
「なんか“いつでも相談乗るよ”オーラある!」

リク
「そんなつもりないんですけど……」

ナナ
「相手はそう思わないのよ」

ミユ
「リクくんって“誠実彼氏感”強いもんね」

リク
「なんですかその肩書き……」

そのとき。

後ろからワニオが口を開いた。

ワニオ
「ワニ界にもいますよ」

リク
「いるんですね」

ワニオ
「ただ池を案内しただけなのに、求愛と勘違いされるタイプ」

どういう世界なんだ。

ワニオ
「本人は水温を気にしてるだけなんですけどね」

ナナ
「面倒くさいわねワニも」

ワニオ
「誠実は時に危険です」

深そうで、よく分からない。

でも。

編集部の空気は、妙に落ち着く。

誰も気を遣わない。

変に勘違いもしない。

ただ笑って、茶化して、それで終わる。

……ああ。

やっぱり、ここが一番落ち着くな。

編集部でワイワイ盛り上がるこいこと。メンバーたち。
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