マリの相談室|夫の浮気を許せません。でも、離婚する勇気もありません

裏切られたら、すぐに答えを出せるものだと思っていました。

許すか。
離婚するか。

どちらかを選べば前に進めるのだと。

でも実際は、その間で立ち止まってしまう人も少なくありません。

今回、マリの相談室を訪ねてくれたのは36歳の女性でした。

結婚11年目。
小学生の娘さんがひとり。

現在は専業主婦として家庭を支えています。

半年前、ご主人の浮気が発覚しました。

相手は職場の女性。

関係は数か月続いていたそうです。

発覚後、ご主人はすぐに謝罪しました。

相手とは別れた。
連絡先も削除した。
スマホも見せている。

やり直したいと言っている。

周囲から見れば、ご主人は反省しているように見えるかもしれません。

けれど。

「反省しているのは分かるんです」

彼女はそう言いました。

「でも、許せないんです」

夫が帰宅するのが少し遅いだけで不安になる。

スマホを見ているだけで胸がざわつく。

以前なら気にならなかったことが、気になってしまう。

そして、そんな自分にも疲れてしまう。

離婚を考えないわけではありません。

でも、娘のこと。
生活のこと。
お金のこと。

考えれば考えるほど、簡単には決められない。

「離婚したいのかも分からないんです」

「ただ……浮気される前に戻りたいんです」

その言葉には、怒りよりも深い悲しみが滲んでいました。

今日は、壊れてしまった信頼と、その後を生きる苦しさについて、ゆっくりお話を聞いていこうと思います。

目次

反省しているのは分かる。でも、信じられない

夫に浮気されてマリに相談する主婦。

女性は少し考え込むように視線を落とした。

マリ:ご主人は、今もやり直したいと言っているんですよね

妻:はい

妻:発覚した時からずっと言っています

妻:本当に悪かったって

妻:もう二度としないって

マリ:そうなんですね

妻:相手とも別れたみたいです

妻:スマホも隠さなくなりました

妻:位置情報も共有してます

妻:たぶん、本当に反省してるんだと思います

そう言いながらも、彼女の表情は晴れない。

マリ:でも、苦しい

妻:はい

妻:苦しいです

妻:だって、あの時も普通だったんです

妻:家では普通にご飯を食べて

妻:娘と話して

妻:休日は家族で出かけたりして

妻:その裏で浮気してたんです

妻:だから今「大丈夫」って言われても

妻:何を信じればいいのか分からないんです

マリは静かに頷いた。

マリ:そうですよね……

妻:前は疑ったことなんてありませんでした

妻:帰りが遅くても仕事だと思ってました

妻:飲み会も普通に送り出してました

妻:でも今は違うんです

妻:帰宅が30分遅いだけで不安になる

妻:スマホを触っているだけで気になる

妻:女の人の名前を見るだけで胸がざわざわする

妻:そんな自分が嫌なんです

マリ:疑いたくないんですよね

妻:はい

妻:本当は信じたいんです

妻:でも信じようとすると、あの時のことを思い出すんです

妻:スマホを見た時のこととか

妻:知らなかった頃の自分とか

妻:全部

女性は苦しそうに笑った。

妻:夫は前を向こうとしてるんです

妻:でも、わたしだけ置いていかれてる気がして

妻:もう終わったことみたいに言われると余計につらくて

マリ:なるほど……

マリ:ご主人は浮気を終わらせた

マリ:でも、あなたの傷はまだ終わっていないんですね

その言葉に、女性は小さく息を呑んだ。

妻:……ああ

妻:それです

妻:たぶん、それです

妻:夫は終わったと思ってる

妻:でも、わたしはまだ全然終わってないんです

許したいのに、許せない

夫は浮気したことを謝っている。しかし妻は許せない心境。

女性は少し黙り込んだ。

言葉を探しているというより、自分の気持ちを確かめているようだった。

マリ:離婚については考えていますか?

妻:……考えます

妻:何度も考えました

妻:でも、そのたびに決められなくなるんです

マリ:決められない理由は何でしょう

妻:娘です

妻:生活です

妻:お金です

妻:それに……

彼女はそこで言葉を止めた。

マリ:それに?

妻:夫のこと、嫌いになったわけじゃないんです

その言葉は、とても静かだった。

妻:腹は立ってます

妻:許せないです

妻:でも、嫌いじゃないんです

妻:だから余計に苦しいんです

妻:もし大嫌いになれたら楽だったと思います

妻:離婚する理由もはっきりするし

妻:でも、そうじゃないんです

妻:娘の父親としては良い人ですし

妻:一緒に頑張ってきた時間もありますし

妻:だから全部を否定できない

妻:でも許せない

妻:本当に面倒くさいですよね……

マリ:いいえ

マリ:とても自然なことだと思います

女性は少し驚いたように顔を上げた。

マリ:人はよく、「許すか離婚するか」の二択で考えてしまうんです

マリ:でも実際には、その間があります

マリ:許したいのに、まだ許せない

マリ:そういう時間です

妻:……ありますね

妻:まさに今です

マリ:ご主人は反省している

マリ:家庭を続けたいと思っている

マリ:でも、それと傷が癒えることは別なんです

マリ:信頼は壊れるのは一瞬ですが、戻るのは何年もかかることがあります

女性は静かに頷いた。

妻:わたし、ずっと焦ってたのかもしれません

妻:もう半年も経ったんだから

妻:そろそろ許さなきゃいけないんじゃないかって

妻:いつまでも怒ってる自分がおかしいんじゃないかって

マリ:そう思ってしまいますよね

マリ:でも半年という時間は、ご主人が反省するには十分でも

マリ:あなたが傷ついた心を立て直すには短いのかもしれません

女性の目が少し潤んだ。

妻:……そう言われると

妻:少しだけ楽になります

妻:わたし、まだ傷ついていていいんですね

マリの言葉

相談者である妻に言葉をかけるマリ。

女性は、少しだけ表情がやわらいでいた。

それでも、まだ迷いは残っている。

妻:でも……結局どうしたらいいんでしょう

妻:許せる気もしないし

妻:離婚する勇気もないし

妻:ずっとこのままなんじゃないかって思ってしまって

マリ:そうですよね

マリ:先が見えないと苦しくなりますよね

妻:はい

妻:夫は「時間をかけよう」って言うんですけど

妻:その時間の先に何があるのか分からなくて

マリ:分かります

マリ:でも私は今、無理に答えを出さなくてもいいと思うんです

女性は少し驚いたような顔をした。

妻:えっ……

マリ:離婚するかどうか

マリ:許すかどうか

マリ:その答えを、今すぐ決めなくてもいいんです

マリ:大きな傷を負った直後は、「判断」より先に「回復」が必要なこともあります

妻:……回復

マリ:はい

マリ:今までのあなたは、ご主人のことばかり考えてきたと思うんです

マリ:なぜ浮気したのか

マリ:本当に反省しているのか

マリ:また繰り返さないのか

マリ:でも、その前に考えてほしいことがあります

妻:……何でしょう

マリ:「私はどれだけ傷ついたのか」

マリ:そこなんです

女性は黙って聞いている。

マリ:浮気をされた方って、とても優しい人も多いんです

マリ:だから自分の痛みより先に、家庭のことや子どものことを考えてしまう

マリ:でも、本当はすごく傷ついている

マリ:怒っている

マリ:悲しんでいる

マリ:まずは、その気持ちを認めてあげてほしいんです

妻:……わたし、ずっと我慢してたかもしれません

妻:娘の前では普通にして

妻:夫ともなるべく喧嘩しないようにして

妻:でも本当は、すごく傷ついてました

マリ:そうですよね

マリ:だから今は、「許せない自分」を責めなくていいんです

マリ:それだけ深く信じていたということですから

女性は目元を押さえた。

マリ:離婚するかどうかは、その先でも遅くありません

マリ:許すかどうかも、その先で考えればいい

マリ:今はまず、傷ついた自分を置き去りにしないこと

マリ:私はそれが一番大事だと思います

余韻

すぐに結論を出さないで傷ついた自分の心のケアを優先しようとする妻。

裏切られたあとに苦しいのは、怒りだけではありません。

悲しみ。
不安。
寂しさ。

そして、もう二度と元には戻れないかもしれないという喪失感。

浮気が発覚した瞬間、多くの人は「許すか、離婚するか」を考えます。

けれど実際には、そのどちらも選べない時間があります。

許したいのに許せない。

離婚したいわけでもない。

そんな曖昧な場所で立ち止まることもあるのです。

今回の相談者さんも、まさにその場所にいました。

ご主人は反省している。

やり直したいと言っている。

それでも苦しい。

それは、心が狭いからではありません。

それだけ深く信じていたからです。

浮気で壊れるのは、夫婦関係だけではありません。

「この人なら大丈夫」という当たり前だった安心。

「この家庭は続いていく」という未来の感覚。

そうした見えない土台が、一緒に崩れてしまうことがあります。

だから傷つく。

だから簡単には許せない。

それはとても自然なことなのだと思います。

今すぐ答えを出せなくてもいい。

離婚を決めなくてもいい。

許すと決めなくてもいい。

まずは、自分がどれだけ傷ついたのかを認めること。

そして、その傷を抱えた自分を責めないこと。

回復は、そこから始まるのかもしれません。

許せないのは弱いからではない。

それだけ深く信じていた証なのかもしれません。

※「マリの相談室」は、実際によくある悩みや感情をもとに構成した、こいこと。編集部による創作相談企画です。

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