編集部の会議テーブル。
恋愛記事の企画会議だったはずなのに、なぜか話題は「好き」という言葉そのものになっていた。
きっかけはミユのひと言だった。
好きと言われないと冷める?

ミユ:ねえみんな。好きって言われなくなったら冷めることってある?
ナナ:急に重い球投げてきたな。
ミカコ:会議中にする話じゃないわね。
ソウタ:あると思う。
ミユ:早い。
ソウタ:だって好きな人から何も言われなくなったら寂しくない?
ナナ:まあ気持ちは分かる。
ミユ:私も少し分かるかも。最初はいっぱい言ってくれたのに、だんだん言わなくなると不安になる。
ミカコ:面白いのはさ。好きと言われないから冷めるのか。それとも不安になるから冷めるのか。そこは別問題よね。
ミユ:あー。確かに。
ミサキ:私は分かんない。
全員:え?
ミサキ:好きなら分かるでしょ。
ナナ:出た。
ソウタ:出ましたね。
ミユ:いや分かんないよ!人の心見えないじゃん。
ミサキ:見えないけど行動で分かるじゃない。
ミカコ:この人だけ別の競技してるわね。
ナナ:ミサキ基準で話し始めると読者が置いていかれるから。
ミサキ:えー。
気が付くと全員の視線がミサキに集まっていた。
そしてソウタが静かに口を開く。
ソウタ:ちなみに僕は好きなら言うかな。
ミサキ:なんで?
ソウタ:好きだから。
ミサキ:それは知ってる。
ミカコ:会話になってないわね。
好きと言われないと冷めるのか。
それとも別の理由なのか。
座談会は少しずつ本題へ進んでいった。

好きと言われないと不安になる人は多い

ナナ:でもさ。
ナナ:好きって言葉、そんなに大事かな?
ミユ:え、大事じゃない?
ミユ:言われたら普通に嬉しいし。
ミサキ:嬉しいのは分かる。
ミサキ:でも言われないだけで冷めるのはよく分からない。
ミカコ:ミサキはそうでしょうね。
ミサキ:なによ。
ミカコ:好きって言葉より行動を見てそうだから。
ミサキ:見るわよ。
ミサキ:忙しいのに会いに来るとか。
ミサキ:連絡くれるとか。
ミサキ:そっちの方が信用できるじゃない。
ソウタ:でもさ。
ソウタ:好きって言葉って、お守りみたいなところない?
ナナ:お守り?
ソウタ:うん。
ソウタ:なくても生きていけるけど。
ソウタ:持ってると安心するみたいな。
ミユ:あ、それ分かる!
ミユ:すごく分かる!
ミカコ:なるほどね。
ミカコ:好きと言われないと冷めるというより。
ミカコ:安心できなくなって気持ちが疲れる。
ミカコ:そっちの方が近そう。
ナナ:あー。
ナナ:それはあるかも。
ミサキ:つまり。好きと言われないから冷めるんじゃなくて。
ミサキ:好きかどうか分からなくなって疲れる。
ミユ:それだ。
ミユ:私が言いたかったの。
ミサキ:自分で言いなさいよ。
ナナ:じゃあ次は。好意の返報性の逆はあるのか?
ナナ:そこを掘ってみましょう。
「好きと言われると好きになる」の逆はある?

ミカコ:ところで今回のテーマって。
ミカコ:好意の返報性の逆はあるのか、って話でもあるわよね。
ミユ:好きって言われると好きになる、の逆?
ナナ:好きって言われないと好きじゃなくなる、みたいな?
ミカコ:そう。
ミカコ:でも私は少し違うと思う。
ミサキ:どう違うの?
ミカコ:好きじゃなくなるんじゃなくて、大切にされてる実感が減るの。
ナナ:あー。
ミユ:分かる。
ミユ:なんか一人で好きでいる感じになる。
ソウタ:それ寂しいね。
ミユ:そうなの。
ミユ:別に毎日言ってほしいわけじゃないんだけど。
ミユ:たまには欲しい。
ナナ:分かるよ。
ナナ:好きって言葉そのものというより。ちゃんと大事に思ってるよって確認したいんだよね。
ミサキ:でもさ。
ミサキ:毎週会ってる。
ミサキ:連絡も来る。
ミサキ:困った時も助けてくれる。
ミサキ:それでも不安なの?
ミユ:・・・ちょっと。
ナナ:ちょっとなんだ。
ミユ:だって言葉も欲しいじゃん!
ソウタ:欲しいよね。
ソウタ:花に水あげてるときに「元気?」って話しかけたくなるのと同じじゃない?
ミカコ:急にソウタがソウタになったわね。
ナナ:例えは分からないけど言いたいことは分かる。
ミサキ:私は話しかけないわ。
ソウタ:ミサキさんはそうだと思った。
ミカコ:結局さ。
ミカコ:好意の返報性の逆というより、愛情表現不足の問題なのよ。
ナナ:なるほど。
ミカコ:好きが減ったというより。
ミカコ:安心が減った。
ミユ:それだ。
ミユ:今日ずっとそれを言いたかった。
ナナ:ミカコが全部言語化してくれたな。
ミサキ:じゃあ次。
ミサキ:行動があれば言葉はいらないのか。
ミサキ:そこが気になる。
行動があれば言葉はいらない?

ミサキ:じゃあ逆に聞くけど。行動がちゃんとあるなら言葉って必要?
ナナ:私は結構いらない派かも。
ミユ:えー。
ナナ:だってさ。
ナナ:忙しいのに時間作って会ってくれる。
ナナ:困ったら助けてくれる。
ナナ:体調悪い時に心配してくれる。
ナナ:それって結構な愛情表現じゃない?
ミサキ:私はそっち派。
ミサキ:好き好き言いながら何もしない人より信用できる。
ミカコ:それは極端だけどね。
ソウタ:でも好きなら言えばいいのに。
ナナ:お。
ミサキ:また始まった。
ソウタ:だって。
ソウタ:ご飯作ったら「美味しい?」って聞いちゃうでしょ。
ミカコ:聞くかな。
ソウタ:好きも同じじゃない?
ソウタ:行動で伝わる部分はあるけど。
ソウタ:言葉で伝わる部分もあると思うんだ。
ミユ:分かるー!
ミユ:私そっち!
ミユ:行動も嬉しい。
ミユ:でも言葉も嬉しい。
ミユ:両方欲しい!
ナナ:欲張りだな。
ミユ:だって無料じゃん!
ミサキ:たしかに。
ミカコ:ミユの理論が一番現実的かもしれない。
ミカコ:結局さ。
ミカコ:行動派と言葉派の違いじゃなくて、相手に伝わっているかどうかなのよ。
ナナ:なるほど。
ミカコ:私は行動で示してる。
ミカコ:いや私は言葉で伝えてる。
ミカコ:そう思っていても。
ミカコ:相手に届いてなければ意味がない。
ミサキ:それはそうね。
ソウタ:好きって言葉って。
ソウタ:封筒に貼る切手みたいなものかも。
ミユ:どういうこと?
ソウタ:中身は行動。
ソウタ:でも切手がないと届きにくい。
数秒沈黙が流れる。
ナナ:珍しく良いこと言った。
ミサキ:たまにね。
ソウタ:たまにって何だよ。
ミカコ:じゃあ次はもっと厄介な話をしましょうか。
ミカコ:実は「好きと言われないこと」より辛いものがある。
実は「好きと言われないこと」より辛いもの

ミカコ:私はね。
ミカコ:好きと言われないこと自体はそんなに問題じゃないと思うの。
ミユ:そうなの?
ミカコ:問題なのは変化。
ナナ:あー。
ミサキ:分かる。
ミカコ:最初から言わない人なら別にいいのよ。
ミカコ:でも前は言ってた。
ミカコ:前は連絡くれた。
ミカコ:前は会いたがってくれた。
ミカコ:それが減ると気になる。
ミユ:それだー!
ミユ:それなの!
ナナ:落ち着け。
ミユ:だって本当にそうなんだもん。
ミユ:好きって言葉そのものより。
ミユ:前との違いが怖い。
ナナ:人って比較で不安になるからね。
ナナ:昨日まで毎日連絡来てた人が急に来なくなったら気になる。
ナナ:でも最初から週一なら気にならない。
ミサキ:それは恋愛だけじゃないわね。
ミサキ:友達でもそう。
ミカコ:そうそう。
ミカコ:人は絶対値じゃなくて変化を見るのよ。
ソウタ:好きってさ。
ソウタ:毎日聞きたいわけじゃないんだと思う。
ミユ:うん。
ソウタ:でも。
ソウタ:たまに窓を開けて風を入れるみたいに。
ソウタ:確認したくなる時はあるよね。
ミサキ:また始まった。
ナナ:詩人モードだ。
ソウタ:今いいこと言ったのに。
ミユ:でも分かるよ。
ミユ:空気の入れ替えみたいな感じ。
ミカコ:結局さ。
ミカコ:人は好きと言われたいんじゃなくて、愛情が今も変わっていないと確認したいのかもしれない。
その言葉に全員が少し考え込む。
ナナ:それはあるかも。
ミサキ:なるほどね。
ミユ:今日ずっとモヤモヤしてたの、それかもしれない。
ナナ:じゃあ最後に聞こうか。
ナナ:結局、好きって言った方がいいの?
結局、好きって言った方がいいの?

ナナ:じゃあ結論。
ナナ:好きって言った方がいいの?
ソウタ:言った方がいい。
ミサキ:早い。
ソウタ:だって好きなんだから。
ソウタ:言えばいいじゃん。
ミカコ:シンプルすぎるわね。
ソウタ:でも本当にそう思う。
ソウタ:言わなくても伝わることはあるけど。
ソウタ:言った方が伝わることもあるから。
ミユ:私は言われたら普通に嬉しい。
ミユ:何年付き合ってても嬉しいと思う。
ナナ:私もかな。
ナナ:毎日は別にいらないけど。
ナナ:たまには言った方が平和だと思う。
ミサキ:平和。
ナナ:うん。
ナナ:言う側は数秒で終わるじゃん。
ナナ:でも言われた側は数日嬉しかったりする。
ミユ:それは本当にそう。
ミカコ:コスパがいいのよね。
ミサキ:急に経営みたいな話になった。
ミカコ:だってそうでしょ。
ミカコ:数秒で相手が喜ぶなら言えばいい。
ミカコ:合理的よ。
ソウタ:好きって合理的なのかな。
ミカコ:そこじゃない。
全員が笑う。
ナナ:ミサキは?
ミサキ:私はどっちでもいい。
ミユ:出た。
ミサキ:でも。
ミサキ:好きな相手が言葉を大事にする人なら言う。
ミサキ:それだけ。
ナナ:おお。
ミユ:意外と優しい。
ミサキ:意外って何よ。
ミサキ:結局、自分がどうかじゃなくて相手がどうかでしょ。
その言葉に全員が少しだけ納得した顔になる。
ナナ:なるほどね。
ミカコ:今日一番まともなこと言ったかも。
ミサキ:失礼ね。
ソウタ:じゃあ結論は。
ソウタ:好きなら言った方がいい。
ミユ:そして言われたら嬉しい。
ナナ:でも言葉だけじゃなく行動も大事。
ミカコ:そして相手に伝わってなければ意味がない。
ミサキ:珍しく綺麗にまとまったわね。
ナナ:まあでも。
ナナ:好きと言われないと冷めるっていうより。
ナナ:大事にされてる実感がなくなると苦しくなる。
ナナ:そういう話だった気がする。
ミユ:うん。
ミユ:今日ちょっとスッキリしたかも。
ソウタ:好きって言葉は魔法じゃないけど。
ソウタ:たまに唱えると効くんだと思う。
ミサキ:最後まで詩人ね。
ミカコ:でも嫌いじゃないわ。
ナナ:じゃあ最後にまとめようか。

まとめ|好きと言われないと冷めるのではなく、安心が減っていく

ナナ:今日の話をまとめるとさ。
ナナ:好きと言われないから冷める、とは少し違うんだろうね。
ミユ:うん。
ミユ:私は最初そう思ってたけど。
ミユ:話してみたら違った。
ミユ:好きと言われたいんじゃなくて。
ミユ:今も好きでいてくれてるのかなって不安だったのかも。
ミカコ:人は確認したい生き物だからね。
ミカコ:特に恋愛は相手の気持ちが見えないし。
ミサキ:でも確認ばかりしても仕方ないわよ。
ナナ:お。
ミサキ:言葉も大事。
ミサキ:行動も大事。
ミサキ:結局は両方見るしかないじゃない。
ソウタ:好きってさ。
ソウタ:花火みたいなものじゃなくて。
ソウタ:部屋の電気みたいなものかも。
ミユ:また始まった。
ソウタ:いや本当に。
ソウタ:ついてる時は当たり前なんだけど。
ソウタ:消えると急に不安になる。
ナナ:珍しく分かりやすい。
ミカコ:今日は当たりの日ね。
ソウタ:失礼だな。
ミユ:でも本当にそうかも。
ミユ:ずっと好きって言ってほしいわけじゃない。
ミユ:ただ。
ミユ:たまに点灯確認したい。
ナナ:その表現いいな。
ミサキ:じゃあ結論。
ミサキ:好きと言われないと冷めるんじゃない。
ミサキ:好きが見えなくなると不安になるのよ。
その言葉に全員が頷いた。
ナナ:珍しく綺麗に締めたな。
ミカコ:悔しいけど。
ミユ:今日はミサキの勝ちかも。
ソウタ:好きって言葉も。
ソウタ:たまには言った方がいいってことだね。
ナナ:うん。
ナナ:無料だしね。
編集部に笑いが広がった。



