【ミサキ様が通る!】イケメンなのにモテない男に会ってみた

目次

イケメンだけどモテない男に会ってみた

イケメンなのにモテない男性はいる。

もちろん、そんなことくらい知っている。

顔がいいだけで恋愛は無双できる。

そんな単純な世界じゃないことは、わたし自身がよく知っているもの。

……とはいえ。

「実物は見てみたい。」

その気持ちは、ちゃんとあった。

理由?

決まってるじゃない。

記事になりそうだったから。

……最低?

ええ、自覚はあるわ。

でもライターなんて、面白そうな人を見つけたら取材したくなる生き物なのよ。

編集部でイツキが言った。

「友達に、めちゃくちゃイケメンなのに全然モテない人がいるんですよ。」

その瞬間、わたしの中のライター魂が反応した。

恋愛より先にネタへ飛びつくあたり、我ながらどうかと思うけど。

「紹介して。」

即答だった。

イツキが少し目を丸くする。

「え、本当に会うんですか?」

「もちろん。」

「わたし、素材は鮮度が大事だと思ってるの。」

……魚じゃないんだから。

数日後。

駅前のカフェ。

向かいに座った彼を見て、わたしは思わず心の中でつぶやいた。

……普通にイケメンじゃない。

いや、普通どころじゃないわね。

清潔感があって、背も高くて、笑顔も爽やか。

服装も自然。

話し方も落ち着いている。

失礼だけど。

「どこで失敗してるの?」

そんな感想しか出てこなかった。

イツキによると、女性から恋愛対象として見られにくいらしい。

……本当に?

まだ半信半疑だった。

でも、人って十分くらい話しただけじゃ分からない。

第一印象なんて、恋愛では平気で裏切られる。

だから結論は急がない。

わたしはコーヒーカップを持ち上げて笑った。

「今日は少し質問させてもらうわ。」

彼は少し緊張したように笑う。

「もちろんです。」

さて。

イケメンなのにモテない理由。

今日は恋活じゃない。

完全に取材。

……そう言い切れるうちは、たぶんまだ大丈夫ね。

イケメンがモテない理由を聞いてみた

取材前に挨拶するミサキとイケメン。

「じゃあ、聞いてもいい?」

わたしがそう切り出すと、彼は少し苦笑いした。

「たぶん、その質問ですよね。」

「ええ。」

「どうしてモテないの?」

……ずいぶん直球ね、わたし。

でも、こういうのは遠回しに聞くより早い。

彼はコーヒーを一口飲んでから、ゆっくり口を開いた。

「第一印象は、悪くないみたいなんです。」

「へぇ。」

「でも、そのあとが続かなくて。」

「恋愛に発展しない?」

「そうですね。”いい人だよね”で終わることが多いです。」

……なるほど。

それ、どこかで聞いたような話ね。

イケメンなのに、恋愛では伸び悩む。

顔だけでは越えられない壁があるということか。

「自分では原因、何だと思ってるの?」

彼は少し考えてから笑った。

「たぶん、相手に合わせすぎるんです。」

「嫌われたくないので。」

「何でも”いいよ”って言っちゃうし、意見もあまり言わない。」

「女性が楽しんでくれれば、それでいいかなって。」

……ああ。

少しだけ分かった気がした。

「優しすぎるのね。」

「優しいというか、自信がないだけかもしれません。」

その言葉に、わたしは少しだけ驚いた。

この顔で、自信がない?

世の中、本当に面白い。

「外見を褒められることは多いです。」

「でも、それだけなんですよ。」

「中身を好きになってもらえてる感じが、あまりしなくて。」

……その一言は少し刺さった。

顔を見られること。

中身を見てもらえないこと。

それは。

わたしにも、少し覚えがある話だった。

「ふふ。」

思わず笑ってしまった。

彼が不思議そうな顔をする。

「何か変なこと言いました?」

「ううん。」

「むしろ、急に親近感が湧いたのよ。」

「え?」

「その話、もう少し詳しく聞かせてもらえる?」

……どうやら今日は。

思っていたより、面白い記事になりそうだった。

「見た目しか見られていない気がする」──その悩みは、少し分かる

容姿が整っている者ならではの悩みに共感するふたり。

「外見だけ見られてる気がするんです。」

彼は少し照れくさそうに笑った。

「最初は興味を持ってもらえるんです。」

「でも、そのあと急に距離を感じることがあって。」

「”きっと彼女いるよね”って言われたり。」

「”モテるでしょ”って言われたり。」

「そこで会話が終わっちゃうんです。」

私は思わず笑ってしまった。

「ああ、それ。」

「あるわね。」

彼が少し驚いた顔をする。

「ミサキさんもですか?」

「ええ。」

「『彼氏いるでしょ。』」

「『どうせモテるでしょ。』」

「『自分なんか相手にされない。』」

「この三点セットは、もう聞き飽きたわ。」

「……やっぱりあるんですね。」

「あるある。」

「もうスタンプカードがあったら景品もらえるくらい。」

……何の景品よ。

彼が声を出して笑った。

「僕もです。」

「『絶対モテるでしょ。』」

「『彼女いそう。』」

「『理想高そう。』」

「言われるんです。」

「でも実際は全然違う。」

私は腕を組んだ。

「人って、勝手に物語を作るのよね。」

「よく知らない相手なのに。」

「『この人はこういう人。』って。」

彼は静かに頷いた。

「だから最初から諦められることもあります。」

「話しかけてもらえないとか。」

「最初から恋愛対象外にされるとか。」

「そういうの、結構あります。」

「……なるほど。」

私はコーヒーカップを持ち上げた。

「自分で言うのも何だけど。」

「容姿が整ってると、得することもある。」

「でも、その分。」

「勝手に誤解されることも、本当に多いのよ。」

彼は少し安心したように笑った。

「その話を聞けただけで、何か救われます。」

……困るわね。

そんな顔をされると。

今日は取材する側のつもりだったのに。

いつの間にか、お互いの恋愛あるあるを話す座談会みたいになっていた。

悪くない。

こういう予定外の展開は、記事として美味しいのよ。

「イケメンだから好き」じゃない。「イケメンだけ」では足りない。

イケメンだけじゃ足りないと話すミサキ。

「でも。」

彼が少し照れくさそうに笑った。

「今日は少し安心しました。」

「安心?」

「はい。」

「容姿で悩む人って、自分だけじゃないんだなって。」

……その言い方。

ちょっと面白いわね。

「悩み自慢大会なら、わたし負けないわよ。」

「はは。」

「それは勝てる気がしません。」

「でしょう?」

私たちは少し笑った。

不思議だった。

初対面なのに、変な気を遣わない。

話しやすい。

理由はたぶん、お互いに似たような経験をしてきたから。

「ミサキさんは。」

「はい。」

「やっぱり、イケメンが好きなんですか?」

……来たわね。

恋愛記事なら、読者も気になる質問。

私は少し考えるふりをした。

考えるふり。

実際は答えなんて、とっくに決まっている。

「好きよ。」

彼が少し嬉しそうな顔をした。

「でも。」

「イケメンだから好きにはならない。」

彼の表情が少しだけ止まる。

「……え?」

「だって。」

「イケメンなんて、見れば分かるじゃない。」

「そこに驚きはないのよ。」

私は肩をすくめた。

「わたしが言うのも何だけど。」

「容姿が整ってる人って、見慣れてるの。」

「鏡を見るたびにね。」

……はい、今のはちょっと嫌な女だったわね。

でも事実だから仕方ない。

彼も思わず吹き出した。

「そこ、自分で言うんですね。」

「ええ。」

「誰かに言われる前に、自分で言っちゃう主義なの。」

「だから。」

「わたしが惹かれるのは、顔じゃない。」

「この人、面白い。」

「もっと話してみたい。」

「何考えてるんだろう。」

そう思わせてくれる人。

そこから恋愛が始まる。

「なるほど……。」

彼は静かに頷いた。

「じゃあ僕は、今日は面白かったですか?」

私はコーヒーカップを置いた。

「ええ。」

「記事には十分なるくらいには。」

「……恋愛じゃなくて?」

「今は、記事の方が勝ってるわね。」

正直者である。

こういうところで期待を持たせるのは、趣味じゃない。

でも。

彼は少し残念そうに笑いながらも、どこか嬉しそうだった。

その笑顔を見て、私は思った。

やっぱり、この人は悪い人じゃない。

でも。

それと恋は、また別の話なのよ。

イケメンは恋愛の正解じゃない

駅へと向かう途中、今回の記事のタイトルを考えるミサキ。

店を出ると、もう夕方だった。

思っていたより長く話していたらしい。

「今日はありがとうございました。」

彼が頭を下げる。

「こちらこそ。」

「すごく面白かったわ。」

「……面白かった、ですか。」

「ええ。」

「記事にしたいくらい。」

「いや、そのために来たんでしたね。」

彼が笑う。

悪くない笑顔。

たぶん、この人はこれからも少しずつ魅力が増していく人なんだろう。

別れ際。

彼なりに勇気を出したように言った。

「もし良かったら……またお会いできませんか?」

来た。

そうよね。

そうなるわよね。

わたしは少し考える。

そして笑った。

「もちろん。」

彼の表情が少し明るくなる。

「記事の続編を作る時は、またお願いするわ。」

「……ああ。」

一瞬だけ期待した顔。

次の瞬間には、苦笑いに変わっていた。

「そういうことですね。」

「そういうこと。」

私たちは笑って別れた。

帰り道。

スマホのメモを開く。

タイトル候補。

『イケメンなのにモテない男に会ってみた。』

悪くない。

今日一番分かったこと。

イケメンだからモテるわけじゃない。

美人だから恋愛が簡単なわけでもない。

そして。

わたしが言うのも何だけど。

イケメンって、実はあまり刺さらないのよね。

顔は入口。

でも。

恋が始まる理由は、そこじゃない。

少なくとも、わたしはそう思っている。

……さて。

この記事。

どんなタイトルなら、一番クリックされるかしら♡

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次