「関係ない」と言った帰り道。
誰の気持ちも、まだ名前を持っていなかった。

スマホを見るアカリ、少し離れて歩くシュウ。

六月の夕方。

大学からの帰り道。

コンビニでアイスを買ったアカリとシュウは、いつものように並んで歩いていた。

少し前。

ハルキは大学の友人に誘われ、人生で初めての合コンへ参加することになった。

恋愛経験が多いわけではないハルキは、不安になって編集部でユウカ、ナナ、ケンジに相談。

「無理に盛り上げようとしなくていい。」

「自然体で楽しめばいい。」

そんなアドバイスを胸に合コンへ向かった。

そこで偶然再会したのは、こいこと。編集部で一度だけ顔を合わせたことのあるツムギ。

恋愛よりも「好きという感情を知りたい」という少し不思議な大学生だった。

二人はギターという共通の趣味で意気投合し、連絡先を交換。

恋が始まったわけではない。

でも、新しい縁が一つ生まれた夜だった。

一方その頃。

アカリは別の男性から告白を受けていた。

何度かデートを重ねたものの、恋愛感情は芽生えず、断ることを選んだ。

そして今日は、その少し後の話。

夕暮れの歩道。

アカリはアイスを食べながら、何気ない調子で口を開いた。

アカリ:そういえばさ。

シュウ:ん?

アカリ:ハルキ、この前合コン行ったらしいよ。

目次

アカリもデートしてたよね

アイスを食べながら歩くアカリとシュウ。

アカリ:それにしてもさ。

シュウ:ん?

アカリ:うちらがいるのに、他の女の子とも遊びたいもんなのかな。

シュウ:あはは。

シュウ:その言い方、彼女みたい。

アカリ:違う違う(笑)

アカリ:なんとなく言っただけ。

シュウ:でもアカリだって、この前デートしてたじゃん。

アカリ:あれは……友達に紹介されたから。

シュウ:出会い探してたんでしょ?

アカリ:まあ、そうだけど。

シュウ:じゃあハルキも同じじゃない?

アカリ:……そうなんだけどさ。

シュウ:しかも告白までされたんでしょ?

アカリ:うん。

アカリは少しだけ苦笑いした。

アカリ:でも断った。

シュウ:いい人だったんでしょ?

アカリ:うん。

アカリ:優しかったし、一緒にいて楽しかった。

アカリ:でも、なんか違ったんだよね。

シュウ:「違う」って何なんだろうね。

アカリ:分かんない。

アカリ:説明できるなら苦労しないよ。

シュウ:恋愛って難しいね。

アカリ:うん。

アカリ:相手に悪いことしたなって、今でも思うし。

シュウ:でも、気持ちがないのに付き合う方がつらいよ。

アカリ:それはそうなんだけどね。

シュウ:アカリらしいよ。

アカリ:何それ(笑)

シュウ:ちゃんと悩むところ。

アカリ:だって、傷つけたいわけじゃなかったもん。

シュウ:知ってる。

二人は少しだけ黙って歩く。

夕方の風が吹き、アイスが少しずつ溶け始めていた。

シュウ:じゃあさ。

アカリ:ん?

シュウ:ハルキが合コン行くの、嫌だった?

ハルキが誰かと付き合っても平気?

ハルキに彼女ができても気にしないのかアカリにきくシュウ。

アカリ:……別に嫌じゃないよ。

シュウ:ふーん。

アカリ:何、その反応。

シュウ:いや。

シュウ:ハルキが合コンで彼女できても平気なんだなって。

アカリ:平気だよ。

アカリ:だって私には関係ないし。

シュウ:そっか。

シュウは少しだけ考えるように前を向いた。

シュウ:じゃあさ。

アカリ:ん?

シュウ:もし私の友達が、ハルキと付き合うことになったら?

アカリ:え?

アカリ:そんな人いるの?

シュウ:どうだろ。

シュウ:例えばの話。

アカリ:なんだ。

アカリ:本人たちがいいなら、それでいいんじゃない?

シュウ:ふーん。

シュウ:じゃあ。

シュウ:アカリの友達だったら?

アカリ:……。

アカリ:それも同じじゃない?

アカリ:本人たちが付き合いたいなら、私が何か言うことじゃないし。

シュウ:そっか。

アカリ:だから何?

シュウ:いや。

シュウ:ちょっと気になっただけ。

シュウはそう言って笑った。

二人はしばらく無言で歩く。

コンビニの前を通り過ぎ、信号が青に変わる。

アカリ:ねぇ。

シュウ:ん?

アカリ:……やっぱいいや。

シュウ:ふふ。

シュウは理由を聞かなかった。

夕暮れの風だけが、二人の間を静かに通り抜けていった。

それでも、何となく気になる

スマホを見つめるアカリ。ハルキに連絡してみるか迷っている。

駅前の交差点。

青信号で足を止めるシュウ。

シュウ:じゃあね。

アカリ:うん。また明日。

シュウは駅の方へ。

アカリは住宅街へ。

いつもの帰り道。

少し歩いたところで、アカリはスマートフォンを取り出した。

何となくトーク一覧を開く。

一番上には、ハルキとのグループトーク。

その下には、ハルキとの個別のトーク画面。

最後のやり取りは、数日前。

アカリは画面を開き、少しだけ眺める。

何か送ろうとして。

やめた。

スマートフォンをポケットへしまう。

アカリ:……。

少し歩く。

アカリ:関係ないし。

そうつぶやいて、小さく笑う。

でも。

その足取りは、さっきまでより少しだけゆっくりだった。

夕暮れの風が、静かに吹き抜ける。

アカリは空を見上げると、そのまま家へ向かって歩き出した。

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