こいこと。には、恋多き女がいる。
ナナ?ノンノン。
ミサキ?ノンノンノン。
——正解はこいこと。編集部員のユウカだ。
明るくて、サバサバしてて、距離感も絶妙。
いわゆる“モテる女”。
そして実際——
彼氏が途切れたことがない。
ミユ:ねえユウカさん、また彼氏できたでしょ?
ユウカ:え、なんで分かるの笑
ミユ:分かるよ、その顔
ナナ:ちょっと待ちなさいよ
ナナ:前の彼氏どうしたの
ユウカ:あー、別れた別れた
ミユ:軽っ!
ミカコ:で、今回どれくらい?
ユウカ:まだ1ヶ月くらいかな
ナナ:……ほんとあんた、恋の回転早いわね
恋はある。
むしろ、ずっとある。
でも——
なぜか、長くは続かない。
その理由を、まだ誰も知らない。
ユウカという女
ユウカは、ミユより少し年上で。
ナナやミカコよりは、少し若い。
ちょうど真ん中くらいの立ち位置。
でも、その距離感を感じさせないくらい——
誰とでも自然にフラットに話す。
ミユ:ユウカさんってさ、ほんと距離感うまいよね
ユウカ:え、そう?普通だと思うけど
ミカコ:普通じゃないのよ、それが
ナナ:あんた、踏み込みすぎないギリギリ攻めるの上手いのよ
ユウカ:なにそれ笑
ミユ:なんかさ、近いのに嫌じゃないんだよね
ミユ:だから気づいたら仲良くなってる感じ
ユウカ:あー、それはあるかも
ユウカ:自分から距離詰めるの、そんな抵抗ないし
それが、ユウカの強さだった。
恋が始まるまでが、早い。
そして、自然。
ミカコ:だからモテるのよ
ミユ:ほんとそれ
ナナ:しかもさ、変に媚びないじゃん
ナナ:あれで甘え上手だったら無双してるわよ
ユウカ:してるってば笑
冗談みたいに笑うけど。
実際、近いものはある。
彼氏が途切れないのは、偶然じゃない。
ちゃんと“理由があるモテ方”をしている。
——ただし。
その恋は、長く続かない。
ミユ:でもさ、なんで毎回短いの?
ナナ:そうそう、それ気になってた
ミカコ:いいとこで終わってる感じするのよね
ユウカ:あー……
ユウカ:なんでだろね
その答えは。
まだ、ユウカの中にしかない。
居酒屋での本音トーク

場所を変えて、夜。
編集部近くの居酒屋。
仕事終わりの空気と、お酒の軽さが混ざる。
さっきまでの会話より、少しだけ距離が近い。
ミユ:ねえねえ、さっきの続き聞かせてよ
ミユ:なんで毎回続かないのかってやつ
ナナ:そうよ、そこ一番大事なとこでしょ
ミカコ:はぐらかさないでちゃんと答えなさいよ
ユウカ:えー、そんなちゃんとした理由ないって笑
ナナ:あるわよ
ナナ:ないなら、ここまでパターン化しない
ミユ:確かに
ミユ:毎回同じ感じなんでしょ?
ユウカ:……まぁ、そうかもね
グラスの氷が、カランと鳴る。
少しだけ、間ができる。
ミカコ:じゃあさ、どのタイミングで終わるの
ユウカ:うーん……
ユウカ:なんか、いい感じになってきたなってとき
ミユ:一番いいとこじゃん
ナナ:普通そこからでしょ
ユウカ:だよね
ユウカ:でもさ
ユウカ:そこから先に進みそうになると、急にダメになるの
ミユ:ダメって?
ユウカ:なんか……無理ってなる
ミカコ:曖昧すぎ
ナナ:もうちょい具体的に
ユウカ:えー……
ユウカ:なんていうかさ
ユウカ:距離が近くなりすぎると、ちょっと怖くなる
その一言で。
場の空気が、少しだけ変わる。
ミユ:……怖い?
ユウカ:うん
ユウカ:なんかさ、このままいったらさ
ユウカ:ちゃんと好きになっちゃうなって思うじゃん
ナナ:うん
ユウカ:そうするとさ
ユウカ:あ、やばいってなるの

それって、どんな気持ちなの?
ミユ:ちょっと待って
ミユ:それってさ、どういう怖さなの?
ミユ:嫌いになるとかじゃないんだよね?
ユウカ:うん、全然嫌いじゃない
ユウカ:むしろ、好き
ミカコ:じゃあ何が怖いの
ユウカ:……なんだろ
ユウカ:ちゃんと好きになりそうなとき
ユウカ:なんかさ、急に現実になる感じがするの
ミユ:現実?
ユウカ:うん
ユウカ:それまでは楽しいだけじゃん
ユウカ:会って、笑って、ちょっとドキドキして
ユウカ:でもさ
ユウカ:そこから先ってさ
ユウカ:ちゃんと向き合うことになるじゃん
ミカコ:……ああ
ユウカ:相手のことも、自分のことも
ユウカ:なんかそれが急に怖くなるの
ミユ:えー……
ユウカ:あとさ
ユウカ:大事になりそうって思うと
ユウカ:失ったときのこと考えちゃうんだよね
ミユ:うわ……それしんどい
ユウカ:でしょ
ユウカ:だったら、そこまで行く前に終わらせた方が楽って思っちゃう
ミカコ:完全に防御ね
ユウカ:うん、多分そう
ユウカ:傷つく前に、終わらせる感じ
好きだからこそ、踏み込めない。
近づくほど、怖くなる。
その感覚は——
単なる“恋の気まぐれ”じゃなかった。
それ、わたしも分かる
ナナ:……あー、それね
ナナ:分かるわ
ミユ:え、ナナさんも?
ナナ:全く同じじゃないけど、近い感覚はある
ミカコ:へえ、意外
ナナ:意外って何よ
ナナ:わたしだって、昔はそういう時期あったわよ
ミユ:どういうとき?
ナナ:うまくいきそうなときほど、不安になるの
ナナ:このまま続いたらどうなるんだろうって
ユウカ:それそれ
ユウカ:急に未来がリアルになる感じ
ナナ:でしょ
ナナ:楽しいだけじゃなくなる瞬間があるのよ
ナナ:ちゃんと向き合うフェーズに入るっていうか
ミカコ:“関係が進む怖さ”ね
ミユ:えー、でもさ
ミユ:それっていいことじゃないの?
ナナ:普通はね
ナナ:でもさ
ナナ:その先にあるものまで見えちゃうと、怖くなる人もいるのよ
ユウカ:そうなの
ユウカ:終わるときのこととか、ダメになるときのこととか
ユウカ:勝手に想像しちゃうの
ミカコ:で、回避する、と
ユウカ:うん
ユウカ:その前に終わらせれば、そこまで傷つかないじゃんって
ミユ:うわ……
ミユ:それってさ、めっちゃ好きになりかけてる証拠じゃん
ナナ:そうなのよ
ナナ:一番好きになりそうなタイミングで、逃げてるの
ミカコ:ある意味、一番もったいないやつね
ユウカ:分かってるって笑
ユウカ:でも、そのときはそれが正解に思えちゃうの
好きだから、怖い。
大事になりそうだから、距離を取る。
それは、弱さなのか。
それとも——
自分を守るための選択なのか。
なぜ、関係が深まると怖くなるのか
ミユ:でもさ、なんでそうなるんだろうね。好きなら近づきたいはずなのに、逆に離れたくなるって
ミカコ:シンプルに言うと、防御反応だと思う。傷つく前に、自分から距離を取ってるんだよ
ユウカ:あー……それはあるかも。相手に嫌われる前に、自分から終わらせる方がまだ楽って思っちゃう
ナナ:主導権を渡したくないのよね。相手に終わらされるくらいなら、自分で終わらせる
ミユ:うわ、それ切ない……
ミカコ:あと、恋が深まると“素の自分”も見せることになるでしょ。そこが怖い人もいる
ユウカ:分かる。楽しいところだけ見せてる時期は平気なの。でも、弱いところとか面倒なところまで見られそうになると、急に怖くなる
ナナ:それ、かなりリアルね
ミユ:でもさ、相手はそこも含めて好きかもしれないじゃん
ユウカ:そうかもしれない。でも、そうじゃなかったらって考えちゃうんだよね
ミカコ:つまり、恋が進むほど確認しなきゃいけないことが増える。信じること、委ねること、弱さを見せること。その全部が怖い
ナナ:で、怖いから軽いうちに終わらせる。まだ笑って話せるうちにね
ユウカ:……言われると、めちゃくちゃそうだわ
ユウカは笑っていた。
でも、その笑い方はさっきより少しだけ静かだった。
ミユ:じゃあさ、ユウカさんが恋に飽きっぽいわけじゃないんだね
ミカコ:むしろ逆かもね。ちゃんと好きになりそうだから怖い
ナナ:軽い女に見えて、実は重くなる前に逃げてるだけ
ユウカ:言い方ひどいけど、否定できない笑
それでも、恋はしたい
ミユ:じゃあさ、このままだとずっと同じこと繰り返さない?
ユウカ:すると思うよ笑
ユウカ:多分、次も同じ感じになる気がする
ナナ:開き直るな
ユウカ:いや、開き直ってるわけじゃないんだけどさ
ユウカ:分かってても、変えられないときってあるじゃん
ミカコ:まぁ、それはそうね
ミユ:でもさ、それでも彼氏は欲しいんでしょ?
ユウカ:欲しいよ
ユウカ:普通に恋したいし、好きな人と一緒にいたい
ミユ:じゃあなんで逃げるの〜
ユウカ:だから、それが分かんないの笑
ユウカ:分かんないけど、怖いものは怖い
好きなのに、怖い。
近づきたいのに、離れたくなる。
その矛盾は、簡単に解決できるものじゃない。
ナナ:まぁでもさ
ナナ:そういう時期ってあるのよ
ナナ:無理に変えようとすると、余計こじれるし
ミカコ:理解してるだけマシじゃない?
ミカコ:自分がどういう動きするか分かってるなら
ユウカ:それはあるかも
ユウカ:「あ、また来た」って思うもん
ミユ:イベントみたいに言うな笑
ユウカ:でもさ
ユウカ:それでも恋はしたいんだよね
ユウカ:ちゃんと好きになりたいし、続く恋もしてみたい
その言葉は、軽いトーンのまま。
でもどこか、本音だった。
ナナ:じゃあそのうち来るでしょ
ナナ:怖さより、好きが勝つタイミング
ミカコ:もしくは、怖くても離れない相手ね
ミユ:うわ、それいいじゃん
ユウカ:ね、それちょっと期待してる笑
恋が途切れない女。
でも、その恋はいつも途中で終わる。
それは、気まぐれでも、飽きっぽさでもなくて——
「近づくほど怖くなる」という、ひとつのかたち。
こいこと。には、いろんな恋がある。
その中のひとつが、ユウカの恋だった。



