優しい人でいたかった。たぶん、自分が嫌われたくなかっただけだ

夜の編集部にて優しさについて考えるリク。

僕は、自分を優しい人間だと思っていました。

こう書くと、少し感じが悪いですね。

訂正します。

自分は比較的、人に優しく接する方だと思っていました。

……あまり変わっていない気もします。

難しい。

最初の三行でもう言葉を選びすぎています。

でも、人の話はできるだけ最後まで聞くようにしています。

頼まれたことも、自分にできる範囲なら引き受ける。

誰かと意見が違っても、なるべく相手の考えを否定しない。

恋愛でも、相手を傷つける言葉は避けてきたつもりです。

実際、「リクは優しい」と言われることは何度かありました。

そのたびに、僕は「そんなことないよ」と答えます。

でも。

心の中では、完全には否定していなかったと思います。

少なくとも、自分は人を傷つける側ではない。

そんなふうに考えていました。

最近。

ふと、嫌なことを思いつきました。

僕は相手を傷つけたくなかったのか。それとも、相手を傷つける人間になりたくなかったのか。

似ています。

かなり似ている。

実際に取る行動も、たぶんほとんど同じです。

言葉を選ぶ。

相手の話を聞く。

強く否定しない。

困っていたら助ける。

でも、理由が少し違う。

前者は相手を見ています。

後者は、自分を見ている。

……。

いや。

本当にそうでしょうか。

相手を傷つけたくないと思うこと自体、自分が嫌な気持ちになりたくないからかもしれない。

逆に、自分が悪い人になりたくないという気持ちがあっても、結果として誰かを助けたなら、それは優しさと呼んでもいい気もする。

待ってください。

まだ導入です。

僕は何をこんなに考えているんでしょう。

ただ。

一度気になってしまいました。

自分が今まで「優しさ」だと思っていたもの。

あれは本当に、全部優しさだったのか。

少し整理して考えてみようと思います。

たぶん。

こういうところが面倒なんだと思います。

目次

まず、「優しい」を整理してみようと思った

こういうとき、僕は一度整理します。

考えていることを並べる。

似ているものを分ける。

言葉の意味を確認する。

そうすると、だいたい少し分かります。

だいたいです。

今回は、分かりませんでした。

まず。

優しさとは何か。

相手の気持ちを考えること。

困っている人を助けること。

人を傷つけないこと。

自分より相手を優先すること。

とりあえず、この四つを考えました。

他にもあると思います。

でも増やすと終わらないので、四つにします。

まず、相手の気持ちを考えること。

これは優しさだと思います。

たぶん。

ただ。

相手の気持ちを考えすぎて、勝手に決めつけることもある。

「きっと傷つくから言わない方がいい」

「今は聞かない方がいい」

「本当のことは知らない方が幸せだ」

それは本当に相手の気持ちを考えているのか。

相手の気持ちを、僕が決めているだけではないのか。

……。

一個目から怪しくなりました。

次。

困っている人を助けること。

これは、かなり優しさっぽい。

道に迷っている人に道を教える。

重い荷物を持つ。

仕事を手伝う。

でも。

頼まれるたびに全部助けていたら、その人は自分でやらなくなるかもしれない。

助けない方が、その人のためになる場合もある。

では、助けないことも優しさ?

……。

二個目も駄目です。

人を傷つけないこと。

これはどうでしょう。

かなり有力です。

でも、気持ちが離れているのに「好きだよ」と言い続けることは、人を傷つけない行動でしょうか。

その瞬間は傷つけない。

ただ、後でもっと傷つくかもしれない。

では、今傷つける方が優しい?

言い方がおかしいですね。

優しさについて考えていたはずなのに、いつの間にか「いつ傷つけるのが最適か」を考えています。

怖い。

最後。

自分より相手を優先すること。

これも優しく見えます。

食べたいものを相手に合わせる。

予定を合わせる。

相手が疲れていたら、自分の話は後にする。

でも、それをずっと続けたら。

僕はたぶん、どこかで不満を持ちます。

「僕ばかり合わせている」

そう思う。

相手は「合わせてほしい」と言っていないかもしれないのに。

勝手に優先して。

勝手に我慢して。

勝手に疲れる。

そして少しだけ相手を悪く思う。

それは、かなり嫌な人です。

……僕ですが。

優しさについて考え始めて十分で、僕はもう優しさが分からなくなりました。

整理すれば分かると思ったんです。

四つに分ければ、少なくとも何か見えると思った。

結果。

全部に「ただし」がつきました。

相手の気持ちを考える。

ただし、決めつけない。

助ける。

ただし、助けない方がいい場合もある。

傷つけない。

ただし、傷つける必要がある場合もある。

相手を優先する。

ただし、自分も大切にする。

もう。

説明書としては最悪です。

たぶん僕は、「優しさ」という言葉を少し簡単に使いすぎていたのかもしれません。

そして。

ここまで考えたところで、昔の自分のことを一つ思い出しました。

僕がずっと「優しかった」と思っていた日のことです。

疲れていたが頼み事を快諾したリク。

断れなかった日のことを、僕は「優しさ」と呼んでいた

以前、知人から急な頼みごとをされたことがあります。

その日は、少し疲れていました。

仕事も残っていた。

家に帰ってからやりたいこともあった。

正直に言えば。

断りたかったです。

でも僕は、こう答えました。

「大丈夫です」

本当は、大丈夫ではありませんでした。

ただ、引き受けられないほどではなかった。

少し無理をすればできる。

少し予定をずらせばいい。

少し休む時間を減らせばいい。

そう考えて、引き受けました。

相手は助かったと言ってくれました。

感謝もされました。

そのとき、僕は少し嬉しかった。

役に立てたから。

困っている人を助けられたから。

たぶん、それは本当です。

でも。

それだけだったのかと聞かれると、少し自信がありません。

「頼まれたら断らないリク」

「困っている人を放っておけないリク」

「優しいリク」

そういう自分でいられたことも、たぶん嬉しかった。

ここで一度、話を整理します。

僕は頼みごとを引き受けた。

相手は助かった。

僕も感謝されて嬉しかった。

誰も困っていない。

なら、別に問題はない。

そう思います。

少なくとも、その時点では。

問題は、そのあとでした。

帰宅してから、僕は少し不機嫌になりました。

疲れていた。

自分の予定が後回しになった。

そして、頭の中でこんなことを考えました。

どうして僕ばかり頼まれるんだろう。

もう少しこちらの都合も考えてほしい。

急すぎる。

断りにくい頼み方だった。

……。

でも。

相手は、僕が断れないことを知っていたわけではありません。

無理なら言ってほしいとも言われていました。

それでも僕は「大丈夫です」と答えた。

相手からすれば。

頼んだ。

引き受けてもらった。

感謝した。

それだけです。

断らなかった僕が、頼み事をしてきた相手に腹を立てていた。

かなり筋が通っていません。

僕はその日、自分を優しいと思っていました。

実際、行動だけ見れば優しかったのかもしれません。

困っている人を助けた。

自分の時間を使った。

見返りも求めなかった。

少なくとも、表面上は。

でも心の中では。

少しくらい、こちらの事情を察してほしい。

少しくらい、申し訳なさそうにしてほしい。

少しくらい、僕が無理をしたことに気づいてほしい。

そう思っていた。

見返りを求めていないつもりで。

かなり細かい見返りを求めています。

それなら最初から断ればよかった。

「今日は難しいです」

その一言で終わった話です。

でも、言えなかった。

相手を困らせたくなかった。

嫌な人だと思われたくなかった。

冷たいと思われたくなかった。

どれが一番大きかったのか。

今でも、はっきりとは分かりません。

たぶん、全部です。

だから余計に面倒です。

人を助けたい気持ちも本当。

嫌われたくない気持ちも本当。

優しい人でいたい気持ちも本当。

そして後から不満を持ったのも本当。

全部、同じ僕の中にありました。

僕はその日、誰かに優しくした。

でも。

自分の気持ちには、あまり優しくなかったのかもしれません。

頼まれごとをこなして帰宅するリク。頼んできた相手に腹を立てている。

相手を傷つけない言葉を、僕は何度も選んだ

恋愛では、もっと分かりやすいかもしれません。

僕は言葉を選びます。

かなり選びます。

自覚はあります。

何かを伝える前に、まず相手がどう受け取るかを考える。

この言い方は強すぎないか。

冷たく聞こえないか。

責めているように感じないか。

できれば誤解されない言葉を選びたい。

できれば傷つけたくない。

だから。

気持ちが少し離れているときも。

「今、ちょっと余裕がなくて」

距離を置きたいときも。

「僕の問題だと思う」

相手との関係に迷っているときも。

「君が悪いわけじゃない」

そういう言葉を使ってきました。

どれも嘘ではありません。

これは大事なので、もう一度書きます。

嘘ではない。

本当に余裕がなかった。

自分の問題もあった。

相手だけが悪いわけでもなかった。

ただ。

嘘ではない言葉が、本当のことを全部伝えているとは限らない。

会いたくないと思っていた。

以前ほど連絡を待っていなかった。

この関係を終わらせることを、少し考えていた。

そういう気持ちもありました。

でも、そこは言わなかった。

言えば傷つくと思ったから。

わざわざ傷つける必要はない。

伝えなくてもいいことはある。

僕はそう考えました。

今も、ある程度はそう思っています。

思っているんですが。

また「ただし」が出てきます。

本当に相手のためだったのか。

会いたくないと言ったときの、相手の顔を見たくなかっただけではないのか。

気持ちが離れたと伝えて、泣かれるのが怖かっただけではないのか。

「ひどい」と言われたくなかっただけではないのか。

僕は相手を傷つけたくなかった。

それは本当です。

でも。

相手が傷つく顔を見たくなかったのは、誰のためだったんだろう。

ここで僕は、かなり考えました。

相手のため。

自分のため。

両方。

たぶん、両方です。

……。

またこれです。

僕は最近、「たぶん両方です」でいろいろな問題を終わらせようとしている気がします。

便利な言葉ですね。

気をつけます。

でも実際、人の気持ちはそんなにきれいに分けられない。

相手を傷つけたくない。

自分も傷つきたくない。

嫌われたくない。

できれば最後まで、優しい人だと思われたい。

全部ある。

そして僕は、その中から一番きれいな理由を選んでいたのかもしれません。

「相手を傷つけたくなかった」

これなら、自分を嫌いにならずに済みます。

でも。

言葉を選び続けた結果、関係を長引かせたこともあります。

相手に期待を持たせたこともある。

僕が曖昧にしたせいで、もっと傷つけたこともあったと思います。

傷つけないようにした。

そして、傷つけた。

説明としては矛盾しています。

でも、実際にありました。

そのとき初めて。

優しい言葉を選ぶことと、優しい行動をすることは、同じではないのかもしれないと思いました。

そしてもう一つ。

あまり考えたくない仮説が出てきました。

嫌われたくない人は。

かなり優しく見えることがあるんじゃないか。

恋人にかける言葉も十分にきをつけるリク。

嫌われたくない人は、優しく見えることがある

ここまで考えていて、一つの仮説が浮かびました。

あくまで仮説です。

まだ自分でも反論できます。

でも、書いてみます。

嫌われたくない人は、優しく見えることがある。

例えば。

頼みごとを断らない。

相手の意見を否定しない。

空気を壊さない。

できるだけ笑っている。

怒らない。

相手に合わせる。

ここだけ読むと、とても優しい人です。

でも。

その理由が全部、「嫌われたくないから」だったら。

それでも優しさと呼んでいいんでしょうか。

ここで、また僕は止まります。

なぜなら。

「違います」とも言い切れないからです。

誰かを助ける。

その結果、相手も助かる。

自分も「ありがとう」と言われて嬉しい。

これは悪いことでしょうか。

違う気がします。

じゃあ。

自分のためにやったことでも、相手が救われたなら、それは優しさなのか。

……。

たぶん、そういう場面もあります。

では逆に。

相手のためだけを思って行動できる人なんて、本当にいるんでしょうか。

誰かを助けると、自分も嬉しい。

恋人が笑うと、自分も嬉しい。

家族が元気だと、自分も安心する。

そこには必ず、自分の感情も混ざっています。

そう考えると。

「自分のため」が入った瞬間に、それは優しさじゃなくなる。

という考え方も、少し極端な気がしてきます。

……。

ここで一度、数字で考えようとしました。

相手のためが70%なら優しさ。

自分のためが60%を超えたら自己防衛。

そんな基準を作れないかと。

もちろん作れませんでした。

当たり前です。

感情を割合で考え始めた時点で、おかしい。

僕は昔から、分からないものを見ると定義したくなります。

分類したくなる。

言葉にしたくなる。

でも、人の気持ちは思ったより整理整頓が苦手らしいです。

引き出しに入れようとしても、全部はみ出してきます。

だから最近は、少しだけ考え方を変えました。

「これは優しさか?」ではなく。

「僕は今、何を怖がっているんだろう。」

そう考えるようにしています。

嫌われること。

期待を裏切ること。

冷たい人だと思われること。

その答えが見つかると、不思議と行動も少し変わります。

断ることもある。

本当のことを言うこともある。

もちろん怖いです。

でも。

優しい人に見られることより。

誠実な人でいたい。

最近は、その気持ちの方が少しだけ大きくなりました。

……と、ここまで書いて気づきました。

優しさについて考えていたはずなのに。

結局、僕はまた「誠実さ」の話をしています。

どうやら僕は。

優しさより、そっちの方が気になっている人間なのかもしれません。

優しさについて考えてみるが考えがまとまらないリク。

僕は、悪い人になりたくなかった

ここまで書いてきて。

少しだけ認めた方がいいことがあります。

僕はたぶん。

悪い人になりたくありませんでした。

もちろん、今もなりたくありません。

でも昔は、それが今よりずっと強かった気がします。

誰かを断る。

期待に応えられない。

恋人を傷つける。

「それは違う」と言う。

どれも必要な場面があります。

頭では分かっていました。

でも。

実際にその場になると、できない。

「もう少し考えよう」

「もう少し待とう」

「今じゃないかもしれない」

そうやって先送りにする。

考えているように見えて。

本当は決断を遅らせていただけのこともありました。

僕は昔から、正しい答えを探す癖があります。

できれば誰も傷つかない方法。

できれば後悔しない方法。

できれば全員が納得する方法。

探せばある気がしていました。

でも。

恋愛でも、人間関係でも。

そんな答えは、ほとんどありません。

誰かが悲しい思いをする。

自分も嫌な気持ちになる。

それでも選ばなければいけない場面があります。

そのとき僕は。

相手を傷つけることより。

「傷つけた人」になることを怖がっていたのかもしれません。

この違いは、僕にとって結構大きかったです。

相手はもう傷ついている。

でも僕は、その事実よりも。

「自分は優しい人でいたい」

という気持ちを守ろうとしていたことがあった。

もちろん、毎回ではありません。

全部でもありません。

でも、ゼロではなかった。

それを認めるのは、少し苦しかったです。

自分は誠実な人間だと思っていました。

優しい人間でありたいとも思っていました。

だからこそ。

その優しさの中に、自己防衛が混ざっていたと気づいたとき。

少しだけ、自分が分からなくなりました。

でも。

最近は、それでいいのかもしれないとも思っています。

人はたぶん。

誰かのためだけでも生きられないし。

自分のためだけでも生きられない。

その間を行ったり来たりしている。

だから。

自分のための気持ちが混ざっていること自体は、悪いことではない。

問題なのは。

それを全部「優しさ」という一つの言葉で片づけてしまうことなんじゃないかと思うんです。

僕は人を傷つけない人になりたかった。でも、人を傷つけずに生きられる人なんて、たぶんいない。

そう考えるようになってから。

少しだけ、断ることができるようになりました。

少しだけ、本当のことも言えるようになりました。

もちろん今でも迷います。

相変わらず考えすぎます。

でも以前よりは。

「優しい人に見えること」より。

「誠実であること」を選びたいと思っています。

……。

ここまで書いて、最初の問いを思い出しました。

結局。

優しさって、何なんでしょうね。

高齢者の荷物を持つリク。

結局、優しさが何なのかは分からない

ここまで書いてきたので。

最後に、分かったことを整理しようと思います。

一つ目。

優しさには、自分のための気持ちが混ざることがある。

二つ目。

だからといって、その優しさが全部嘘になるわけでもない。

三つ目は……。

少し考えました。

でも、やめます。

たぶんここで無理に答えを作ると、この文章ごと嘘になる気がしました。

結局。

僕は優しさを定義できませんでした。

整理もできなかった。

途中で何度も自分の考えを否定して。

「いや、それだけじゃないな」と立ち止まって。

最初より、むしろ分からなくなっています。

でも。

一つだけ、前より信じられることがあります。

優しさと自己防衛は、たぶん同じ行動をすることがある。

誰かを助ける。

言葉を選ぶ。

頼みを断らない。

笑って受け止める。

その行動だけでは、理由は分かりません。

相手のためかもしれない。

自分のためかもしれない。

たぶん、その両方でもある。

だから僕は最近、「優しい人になろう」と考えるのを少しやめました。

代わりに思うのは。

その場だけ優しく見えることより。

あとで振り返ったときに、誠実だったと思えるかどうかです。

もちろん失敗します。

断れない日もあります。

言葉を選びすぎる日もあります。

考えすぎて、何も言えなくなる日もあります。

たぶん、この先もなくならないと思います。

それでも。

自分が何を怖がっているのか。

何を守ろうとしているのか。

そこだけは、ごまかさないようにしたい。

もし今、誰かに。

「リクって優しいよね」

そう言われたら。

昔の僕なら、笑って。

「そんなことないよ」

それで終わっていたと思います。

今の僕は、たぶん少し考えます。

そして心の中で、自分に聞くと思います。

「その優しさは、誰のためだった?」

きっと、その答えは毎回違います。

だから面倒です。

でも。

だから、人を好きになることも。

人と生きることも、簡単じゃないんだと思います。

夜道を歩くリク。優しさについて正確な答えは出なかった。
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