こいこと。編集部。
午後。
珍しく、リクが少し納得いかない顔をしていた。
ミカコ:どうしたの。
リク:いや、最近ちょっと思ったことがあって。
ミカコ:恋愛?
リク:恋愛というか人間関係全般ですね。
リク:人にはすごく厳しいのに、自分にはびっくりするくらい甘い人っていません?
ミカコ:いる。
ミカコ:そして本人はだいたい気付いてない。
リク:そうなんですよ。
リク:遅刻した人には厳しいのに、自分が遅刻した時は事情を説明する。
リク:人のミスには怒るのに、自分のミスは仕方なかったことになる。
ミカコ:あるあるだね。
リク:でも不思議なんです。
リク:本人は本気で正しいと思っていることも多いじゃないですか。
すると、隣でお茶を飲んでいたワニオが静かに顔を上げた。
ワニオ:人間は自分の失敗には事情をつけます。
ワニオ:他人の失敗には評価をつけます。
リク:おお。
ミカコ:今日は最初から刺してくるね。
ワニオ:自分の場合は、寝不足だった。
ワニオ:忙しかった。
ワニオ:運が悪かった。
ワニオ:そういう説明ができます。
リク:確かに。
ワニオ:しかし他人の場合は、その事情が見えません。
ワニオ:そのため「だらしない」「能力が低い」という評価になりやすい。
ミカコ:耳が痛い人いっぱいいそう。
リク:でも確かに、それだけじゃ説明できない人もいますよね。
リク:明らかに人には厳しいのに、自分だけ特別扱いしている人とか。
ワニオ:はい。
ワニオ:人に厳しく自分に甘い人には、いくつか共通した構造があります。
ミカコ:なんか今日も嫌な真実が出てきそうだね。
ワニオ:観察結果です。
リク:というわけで今回は、
理論担当:リク
観察担当:ワニオ
現実コメント:ミカコ
この三人で、
人に厳しく自分に甘い人について分析していきます。

人に厳しく自分に甘い人はなぜ生まれるのか
自分の事情は見える。他人の事情は見えない
リク:まず気になるんですが、人に厳しく自分に甘い人って最初からそうなんでしょうか。
ミカコ:性格の問題ってより、人間の癖な気もする。
ワニオ:はい。
ワニオ:実はこれは、多くの人が多少は持っている傾向です。
リク:え、みんなですか。
ワニオ:ええ。
ワニオ:人間は自分の事情を知っています。
ワニオ:しかし他人の事情は知りません。
ミカコ:確かに。
ワニオ:例えば遅刻。
ワニオ:自分が遅刻した場合は、寝不足だった、電車が遅れた、急な連絡が来たなど理由を知っています。
リク:うん。
ワニオ:しかし他人が遅刻した場合は結果しか見えません。
ワニオ:すると「だらしない人」という評価になりやすい。
ミカコ:なるほどね。
ワニオ:自分の失敗には物語があります。
ワニオ:他人の失敗には結果しかありません。
リク:それはかなり分かりやすいです。
ワニオ:人間は常に自分視点で世界を見ています。
ワニオ:そのため放っておくと、自分に有利な判定になりやすい。
ミカコ:つまり少しなら誰でもある。
ワニオ:はい。
ワニオ:問題はその傾向が極端になった時です。
「自分は例外」が増えると厄介になる
リク:極端になるとどうなるんでしょう。
ワニオ:ルールが消えます。
ミカコ:いきなり怖いこと言うね。
ワニオ:例えば。
ワニオ:人には「努力しろ」と言う。
ワニオ:しかし自分は疲れているから休む。
ワニオ:人には「時間を守れ」と言う。
ワニオ:しかし自分は忙しかったから仕方ない。
リク:ありますね。
ワニオ:一つひとつは理解できます。
ワニオ:問題は、すべてに例外が発生することです。
ミカコ:自分だけ特別扱いになるんだ。
ワニオ:はい。
ワニオ:そして本人は特別扱いしている自覚がないことも多い。
リク:なぜですか。
ワニオ:自分の事情を本当に大変だと思っているからです。
ミカコ:悪意じゃない場合もあるんだね。
ワニオ:ええ。
ワニオ:むしろ本人は正しいことを言っているつもりです。
ワニオ:ただし、周囲から見るとこうなります。
ワニオ:ルールではなく、その人の気分で判定が変わっている。
リク:だから反発されるのか。
ワニオ:はい。
ワニオ:人は厳しさそのものより、不公平さに強く反応します。
ミカコ:確かに。
ミカコ:厳しい上司より、基準がブレる上司のほうが嫌われるかも。
ワニオ:その通りです。
ワニオ:人間は罰よりも、不公平を嫌います。
実は自己肯定感が低い場合もある

厳しさで自分を守る人
リク:ここまで聞くと、人に厳しく自分に甘い人って単純に自己中心的な人に見えますね。
ミカコ:実際そういう人もいるとは思う。
ワニオ:います。
ワニオ:しかし、それだけではありません。
リク:というと?
ワニオ:実は自己肯定感が低い場合があります。
ミカコ:え。
ミカコ:逆じゃない?
ワニオ:そう思われがちです。
ワニオ:しかし、自信がない人ほど他人を評価したがることがあります。
リク:なぜですか。
ワニオ:比較すると安心できるからです。
ワニオ:自分より下を見つける。
ワニオ:誰かの欠点を探す。
ワニオ:そうすることで、自分の不安を一時的に軽くできます。
ミカコ:なるほど。
ミカコ:他人を下げることで、自分を保ってるのか。
ワニオ:はい。
ワニオ:もちろん本人にその自覚はありません。
ワニオ:むしろ「正しいことを言っている」と思っています。
リク:だから指摘が多くなるんですね。
ワニオ:ええ。
ワニオ:他人への厳しさが、実は自分の不安の裏返しである場合があります。
本当に自信がある人は意外と寛容

リク:じゃあ逆に、本当に自信がある人はどうなんでしょう。
ミカコ:確かに。
ミカコ:厳しくなるのかな。
ワニオ:必ずしもそうではありません。
ワニオ:むしろ寛容になることがあります。
リク:寛容。
ワニオ:はい。
ワニオ:自分に価値があると信じている人は、他人と競争する必要がありません。
ワニオ:そのため、人の失敗にも余裕を持てます。
ミカコ:ああ。
ミカコ:たしかに余裕がある人って、あまり人を責めないかも。
ワニオ:ええ。
ワニオ:失敗した人を見て、「そんなこともできないのか」とは考えません。
ワニオ:「何か事情があったのかもしれない」と考える。
リク:最初の話につながりましたね。
ワニオ:はい。
ワニオ:自分の事情を理解してほしい人ほど、他人の事情も想像できるようになります。
ミカコ:逆に言うと。
ワニオ:逆に言うと、自分に余裕がない時ほど人に厳しくなります。
リク:それは経験ある人も多そうです。
ワニオ:人間は疲れると優しさから節約します。
ミカコ:今日また名言っぽいの出たね。
ワニオ:観察結果です。
リク:つまり、人に厳しく自分に甘い人を見る時も、「性格が悪い」で終わらせないほうがいいのかもしれませんね。
ワニオ:はい。
ワニオ:もちろん迷惑な行動は迷惑です。
ワニオ:ただし、その背景には不安や劣等感が隠れていることがあります。
なぜ周囲とトラブルになるのか
ルールが人によって変わるから
リク:でも、人に厳しく自分に甘い人って、なぜあそこまで周囲と衝突するんでしょう。
ミカコ:本人は正しいこと言ってるつもりなのにね。
ワニオ:ルールが変わるからです。
リク:ルール。
ワニオ:はい。
ワニオ:人には厳しい基準。
ワニオ:自分には優しい基準。
ワニオ:つまり判定方法が二つ存在しています。
ミカコ:ダブルスタンダードってやつか。
ワニオ:ええ。
ワニオ:そして人間は厳しさよりも、不公平さに敏感です。
リク:前の話でも出ましたね。
ワニオ:例えば、全員に厳しい上司。
ワニオ:これは嫌われることはあっても、理解はされます。
ミカコ:基準は一応同じだからね。
ワニオ:しかし、自分だけ例外にする上司。
ワニオ:これは不信感を生みます。
リク:なるほど。
ワニオ:スポーツで例えるなら、審判が試合中にルールを変更する状態です。
ミカコ:それは荒れる。
ワニオ:ええ。
ワニオ:人は厳しさに怒るのではなく、公平性の欠如に怒るのです。
本人は「自分が正しい」と思っている
リク:厄介なのは、本人に悪気がないケースですよね。
ミカコ:むしろ善意の人もいる。
ワニオ:はい。
ワニオ:人に厳しく自分に甘い人は、自分を特別扱いしている感覚がない場合があります。
リク:なぜですか。
ワニオ:自分の事情を知っているからです。
ワニオ:そして、その事情は本人にとって本当に大変です。
ミカコ:だから「今回は仕方なかった」が増えるんだ。
ワニオ:ええ。
ワニオ:本人の頭の中では、すべて合理的です。
ワニオ:しかし周囲には、その事情が共有されていません。
リク:だから周りから見ると矛盾に見える。
ワニオ:はい。
ワニオ:本人は「私は正しい」と思っています。
ワニオ:周囲は「ルールが違う」と感じています。
ミカコ:会話が噛み合わないわけだ。
ワニオ:ええ。
ワニオ:議論にならないこともあります。
ワニオ:なぜなら、お互いが別のルールブックを読んでいるからです。
リク:それはかなり分かりやすいですね。
ワニオ:人間関係で起きるトラブルの多くは、価値観の違いではありません。
ワニオ:適用される基準の違いです。
ミカコ:今日のワニオ、地味に刺してくるなあ。
ワニオ:観察結果です。

恋愛で現れるとどうなる?
自分の束縛は愛情。相手の束縛は重い
リク:この特徴って、恋愛にも出るんでしょうか。
ミカコ:むしろ出やすい気がする。
ワニオ:はい。
ワニオ:恋愛は感情が強く動くため、人間の癖が拡大されやすい。
リク:例えばどんな感じですか。
ワニオ:自分の束縛は愛情になります。
ワニオ:相手の束縛は重さになります。
ミカコ:あるあるだ。
ワニオ:自分が「今どこ?」と聞くのは心配だから。
ワニオ:しかし相手が同じことをすると信用されていないと感じる。
リク:基準が違いますね。
ワニオ:はい。
ワニオ:自分の行動には理由があります。
ワニオ:相手の行動には結果しか見えません。
ミカコ:最初の話に戻ってきた。
ワニオ:恋愛は人間の拡大鏡です。
ワニオ:普段の癖がよく見えるようになります。
自分の事情は正当化しやすい
リク:他にもありますか。
ワニオ:たくさんあります。
ワニオ:自分の飲み会は付き合いです。
ワニオ:相手の飲み会は不安要素です。
ミカコ:嫌なほど見たことある。
ワニオ:自分の返信が遅いのは忙しかったから。
ワニオ:相手の返信が遅いのは愛情不足だから。
リク:厳しい。
ワニオ:しかし実際によく起きています。
ミカコ:恋愛相談でも定番だね。
ワニオ:ええ。
ワニオ:人は恋愛になると、自分の事情を過大評価しやすくなります。
ワニオ:なぜなら感情が関わるからです。
リク:だから客観視が難しくなる。
ワニオ:はい。
ワニオ:恋愛の喧嘩の多くは、正しさの衝突ではなく「自分基準の衝突」です。
ミカコ:それは本当にそうかも。
本当に大切なのは「同じ基準」を持つこと
リク:じゃあ恋愛で大事なのは何なんでしょう。
ワニオ:基準の統一です。
ミカコ:シンプルだね。
ワニオ:はい。
ワニオ:自分に許すことを相手にも許す。
ワニオ:相手に求めることを自分にも求める。
ワニオ:それだけで多くの不公平は消えます。
リク:でも意外と難しいですよね。
ワニオ:ええ。
ワニオ:人間は自分の弁護士にはなれます。
ワニオ:しかし他人の弁護士になるのは苦手です。
ミカコ:今日は法廷なんだね。
ワニオ:観察範囲を広げています。
リク:でも確かに、自分を弁護するのと同じくらい相手も弁護できたら、関係はかなり変わりそうです。
ワニオ:はい。
ワニオ:公平とは厳しさではありません。
ワニオ:同じ基準を適用することです。
人に厳しく自分に甘い人との付き合い方

変えようとしない
リク:ここまで聞いていると、周りにいたら結構大変ですね。
ミカコ:正直、疲れると思う。
ワニオ:はい。
リク:こういう人と付き合う時は、どうしたらいいんでしょう。
ワニオ:まず、変えようとしないことです。
ミカコ:いきなりそこなんだ。
ワニオ:ええ。
ワニオ:人は基本的に、自分で気付かない限り変わりません。
リク:たしかに。
ワニオ:特に本人が「自分は正しい」と思っている場合は難しい。
ワニオ:そのため説得や教育を始めると、長期戦になります。
ミカコ:そしてだいたい疲れる。
ワニオ:はい。
ワニオ:人間関係は改善活動ではありません。
リク:おお。
ワニオ:相手を修理しようとすると、自分が消耗します。
境界線を持つ
リク:じゃあ我慢するしかないんでしょうか。
ワニオ:いいえ。
ワニオ:境界線を持ちます。
ミカコ:最近分析室でよく出てくるね。
ワニオ:重要だからです。
ワニオ:相手の不公平さまで引き受けない。
ワニオ:理不尽な要求は断る。
ワニオ:必要以上に説明しない。
リク:戦うんじゃなくて線を引く。
ワニオ:はい。
ワニオ:境界線は壁ではありません。
ワニオ:ここから先は私の責任ではありません、と示す看板です。
ミカコ:その考え方は大事かも。
ワニオ:人に厳しく自分に甘い人は、無意識に他人の領域へ入ってくることがあります。
ワニオ:だからこそ、自分の領域を自分で管理する必要があります。
距離を取るのも選択肢
リク:それでも難しい場合はありますよね。
ミカコ:ある。
ミカコ:何を言っても通じない人もいるし。
ワニオ:はい。
ワニオ:その場合は距離を取るのも選択肢です。
リク:逃げではなく。
ワニオ:管理です。
ミカコ:管理。
ワニオ:ええ。
ワニオ:人間関係は全員と仲良くする競技ではありません。
ワニオ:限られた時間と精神力を、どこへ配分するかという資源管理です。
リク:ワニオらしい表現ですね。
ワニオ:観察結果です。
ワニオ:何度も不公平な扱いを受ける。
ワニオ:何度も消耗する。
ワニオ:それでも関わり続ける必要はありません。
ミカコ:優しい人ほど我慢しちゃうからね。
ワニオ:はい。
ワニオ:距離を取ることは冷たさではありません。
ワニオ:自分を守る技術です。
リク:今日はかなり実践的な話になりましたね。
まとめ:本当に厳しい人は、自分にも同じ基準を適用する
リク:今日は「人に厳しく自分に甘い人」について分析してみました。
リク:最初は単純に性格の問題だと思っていたんですが、それだけではないんですね。
ミカコ:自己肯定感とか不安とか、意外な話も出てきたしね。
ワニオ:はい。
ワニオ:人間は誰でも、自分に有利な判定をしやすい生き物です。
ワニオ:それ自体は珍しいことではありません。
リク:問題は、それが極端になった時なんですね。
ワニオ:ええ。
ワニオ:自分だけ例外が増える。
ワニオ:自分だけ事情が考慮される。
ワニオ:そうなると周囲は不公平を感じます。
ミカコ:そして人間は不公平が嫌い。
ワニオ:はい。
ワニオ:厳しさよりも、不公平のほうが人間関係を壊します。
リク:これは仕事でも恋愛でも同じですね。
ワニオ:同じです。
ワニオ:自分の束縛は愛情。
ワニオ:相手の束縛は重い。
ワニオ:自分の遅刻は事情。
ワニオ:相手の遅刻は怠慢。
ワニオ:そうした基準のズレが、関係を少しずつ削っていきます。
ミカコ:耳が痛い人、多そうだね。
ワニオ:観察対象は常に自分も含みます。
リク:それは大事ですね。
ワニオ:はい。
ワニオ:人に厳しくなること自体は悪くありません。
ワニオ:ルールや基準は必要です。
ワニオ:ただし、その基準を自分だけ免除し始めると話が変わります。
ミカコ:なるほどね。
ワニオ:本当に厳しい人は、人に厳しい人ではありません。
ワニオ:自分にも同じ基準を適用できる人です。
リク:今日の結論ですね。
ワニオ:はい。
ワニオ:正義を持つことは難しくありません。
ワニオ:難しいのは、その正義を自分にも向けることです。
ミカコ:最後だけ急に重いんだよなあ。
ワニオ:観察結果です。
リク:というわけで今回は、
人に厳しく自分に甘い人について分析してみました。
リク:また別のテーマでも、この三人で分析していきましょう。



