ある日の編集部。
リクはノートパソコンを開いたまま、少し考え込んでいた。
ミカコ:何その顔。難しい計算でもしてる?
リク:いえ。今日、電車で高校生くらいの子たちが話していたんです。
ミカコ:盗み聞き?
リク:聞こえてきたんです。
ワニオ:人間観察ではよくあることです。
リク:ワニオさんが言うと急に怪しくなるんですよ。
ミカコ:で、何の話?
リク:クラスにすごく苦手な人がいるらしくて。「マジで無理なんだけど、毎日会うんだよな」って。
ミカコ:ああ。学校あるあるだね。
リク:それを聞いて思ったんです。もしかすると、学校の苦手な人って、職場の苦手な人より逃げにくいんじゃないかって。
ワニオ:学校は人間関係の水槽として、かなり密度が高いです。
ミカコ:学生を水槽に入れるな。
ワニオ:朝になると同じ場所に集められます。同じ教室。同じ廊下。同じ体育館。場合によっては席まで指定されます。
リク:言われてみると、かなり逃げ場が少ないですね。
ミカコ:社会人なら嫌いな人との飲み会を断るとか、部署が違えば関わらないとかできるけどね。
リク:学校だと、苦手なクラスメイトが翌日も普通に教室にいる。
ワニオ:はい。学生は毎朝、人間関係に自動ログインします。
ミカコ:地獄の自動ログインだね。
リク:しかもクラスメイトだけじゃありません。苦手な先輩、後輩、先生。学校にはいろいろな人がいます。
ミカコ:で、「みんな仲良くしましょう」って言われる。
ワニオ:難易度の高いミッションです。
リク:今回はそこを分析してみませんか。
リク:学校にいる苦手な人と、どう付き合えばいいのか。
ミカコ:いいね。仲良くなる方法じゃなくて、付き合い方ね。
ワニオ:重要な違いです。
ワニオ:同じ水槽にいるからといって、全員で仲良く泳ぐ必要はありません。
ミカコ:まだ水槽でいくんだ。
リク:では今回は、学校という少し逃げにくい場所で、苦手な人とどう向き合えばいいのか。三人で分析していきましょう。

学校の苦手な人はなぜこんなにしんどいのか

距離を置きたくても毎日会う
リク:まず考えたいのは、どうして学校の苦手な人って、こんなにしんどく感じるのかです。
ミカコ:単純に会う回数が多いからじゃない?
リク:やっぱりそこは大きいですよね。
ワニオ:人間は苦手な相手を見ると警戒します。
ワニオ:しかし学校では、警戒対象が翌朝また現れます。
ミカコ:言い方。
ワニオ:月曜日に会います。火曜日にも会います。水曜日にもいます。
リク:改めて並べると嫌ですね。
ワニオ:木曜日もいます。
ミカコ:もういいよ。
ワニオ:つまり、気持ちを切り替える時間が少ないのです。
リク:昨日嫌なことがあっても、翌朝には顔を合わせる。
ワニオ:はい。傷が乾く前に同じ場所へ戻ります。
ミカコ:それはしんどいね。
リク:学校では「嫌なこと」より、「嫌なことが続くかもしれない」という緊張が負担になることもある。
ワニオ:人間はまだ起きていないことでも疲れます。
ミカコ:明日また何か言われるかな、とかね。
リク:学校へ行く前から、その人のことを考えてしまう。
ワニオ:本人が目の前にいなくても、頭の中では登校済みです。
ミカコ:勝手に先に来てるんだ。
人間関係が固定されやすい
リク:もう一つ、学校って人間関係が固定されやすいですよね。
ミカコ:クラスが同じなら一年間ほぼ同じメンバーだし。
リク:部活ならもっと長いこともあります。
ワニオ:席替えはあります。
ミカコ:急に学校情報。
ワニオ:しかし人間関係までシャッフルされるとは限りません。
リク:確かに。
ワニオ:苦手な人が三列後ろになっても、苦手な人であることに変わりはありません。
ミカコ:距離だけ三メートルくらい伸びたね。
ワニオ:多少の効果は期待できます。
リク:でも班活動や行事では一緒になる可能性もある。
ミカコ:文化祭、体育祭、修学旅行。学校って意外と共同作業が多いんだよね。
ワニオ:人間関係が苦手な人に対して、学校は定期的に協力イベントを開催します。
ミカコ:容赦ないな。
リク:だから「距離を置けばいい」というアドバイスだけでは難しい場合があるんですね。
ワニオ:はい。距離を置こうとしても、先生が「四人組を作ってください」と言います。
ミカコ:先生、最強。
「みんな仲良く」の圧力もある
リク:それに学校では、仲良くすることが良いことだと教えられます。
ミカコ:まあ、悪いことではないけどね。
リク:もちろんです。ただ、それが苦しくなる人もいると思うんです。
ワニオ:人間が三十人集まって全員仲良しになるなら、世界史の教科書はもう少し薄かったはずです。
ミカコ:規模が急に大きい。
リク:でも言いたいことは分かります。
ワニオ:相性はあります。
ワニオ:話し方が苦手。
ワニオ:考え方が合わない。
ワニオ:一緒にいるとなぜか疲れる。
ワニオ:それだけで十分に距離を取りたくなることはあります。
ミカコ:理由を説明できない場合もあるしね。
リク:でも「同じクラスなんだから仲良くしなきゃ」と考えると、自分を責めてしまう。
ワニオ:苦手な人がいることと、性格が悪いことは別の問題です。
ミカコ:そこは分けた方がいいね。
リク:では、苦手な人を無理に好きになる必要はない?
ワニオ:ありません。
ワニオ:学校は友情のコンプリートゲームではありません。
ミカコ:全員攻略しなくていいんだ。
ワニオ:はい。次はそこを分析しましょう。
苦手な人を好きになる必要はない

「嫌い」という感情まで否定しなくていい
リク:さっきワニオさんが、苦手な人がいることと性格が悪いことは別だと言いましたよね。
ワニオ:はい。
リク:でも実際、「人を嫌いになる自分が嫌だ」と悩む人もいると思うんです。
ミカコ:真面目な人ほど考えそう。
リク:相手にも良いところがあるはずだとか、自分の考え方が狭いんじゃないかとか。
ワニオ:人間は苦手な食べ物に対して、そこまで反省しません。
ミカコ:また食べ物の話?
ワニオ:ピーマンが苦手でも、「私の味覚は未熟なのでは」と一晩悩む人は少ないです。
リク:人間関係だと悩むのに。
ワニオ:はい。不思議です。
ミカコ:まあ、人とピーマンは違うけどね。
ワニオ:かなり違います。
リク:認めるんですね。
ワニオ:しかし相性があるという点では似ています。
ワニオ:誰かを苦手だと感じることは、感情です。
ワニオ:感情は通知のようなものです。
ミカコ:通知?
ワニオ:この人といると疲れます。
ワニオ:この話し方は苦手です。
ワニオ:少し警戒した方が良さそうです。
ワニオ:心がそう通知しています。
リク:じゃあ、無視しない方がいい。
ワニオ:はい。ただし通知が来たからといって、スマートフォンを投げる必要もありません。
ミカコ:相手に攻撃する必要はないってことね。
ワニオ:その通りです。
リク:「嫌いと感じること」と「嫌いだから傷つけること」は別なんですね。
ミカコ:感情は自由。でも行動には責任がある。
ワニオ:非常に人間らしい整理です。
ミカコ:ワニに褒められた。
相手の良いところを探さなくてもいい
リク:よく「苦手な人の良いところを探しましょう」って言いますよね。
ミカコ:あるね。
リク:あれはどう思います?
ワニオ:見つかるなら良いと思います。
ミカコ:見つからなかったら?
ワニオ:捜索を終了します。
ミカコ:早い。
ワニオ:良いところを探し続ける義務はありません。
リク:でも少し冷たくないですか。
ワニオ:リクさん。
リク:はい。
ワニオ:苦手な人の長所を三つ見つけたら、好きになれると思いますか。
リク:……ならない場合もありますね。
ワニオ:はい。
ワニオ:足が速い。
ワニオ:英語が得意。
ワニオ:字が綺麗。
ワニオ:それでも話すと疲れる人はいます。
ミカコ:長所と相性は別だからね。
ワニオ:相手を評価することと、相手と親しくなれることは別です。
リク:なるほど。
ミカコ:「良い人だけど合わない」って普通にあるし。
ワニオ:あります。
ワニオ:相手を悪人にしなければ距離を取れない、ということでもありません。
リク:ああ。それは大事ですね。
ワニオ:嫌いな理由を集めなくてもいいのです。
ワニオ:合わない。
ワニオ:それだけで人間関係の距離を調整する理由にはなります。
目標は「仲良くなること」ではない
リク:では学校で苦手な人がいたら、何を目標にすればいいんでしょう。
ワニオ:問題なく過ごすことです。
ミカコ:ずいぶん現実的。
ワニオ:挨拶はする。
ワニオ:必要な話はする。
ワニオ:班活動では協力する。
ワニオ:そして放課後は別々に帰ります。
リク:それでいい?
ワニオ:十分です。
ミカコ:学校って、友達になるか敵になるかの二択じゃないからね。
リク:その間にかなり広い場所がある。
ワニオ:はい。
ワニオ:人間関係には「知り合い」という非常に便利な棚があります。
ミカコ:棚に入れるんだ。
ワニオ:全員を友達の棚へ入れると、棚が壊れます。
リク:今回も例えは変ですけど、言っていることは分かります。
ワニオ:苦手な人との関係で目指すのは、「仲良く」ではなく「問題なく」でいいのです。
ミカコ:それだけで学校は少し楽になるかもね。
リク:では次は、その「問題なく付き合う」を具体的に考えてみましょう。
苦手なクラスメイトとは「仲良く」ではなく「問題なく」を目指す

必要な場面では普通に接する
リク:では具体的な話です。苦手なクラスメイトとは、どう付き合えばいいんでしょう。
ミカコ:無視するのも感じ悪いしね。
ワニオ:普通に接します。
リク:普通に。
ワニオ:はい。挨拶されたら返す。必要なことは話す。共同作業では協力する。
ミカコ:でも、自分から積極的に仲良くはしない。
ワニオ:その通りです。
リク:意外とシンプルですね。
ワニオ:人間関係を難しくする原因の一つは、態度を二択で考えることです。
リク:二択?
ワニオ:好きだから優しくする。
ワニオ:嫌いだから冷たくする。
ミカコ:ああ。分かりやすいけど子どもっぽいやつ。
ワニオ:しかし第三の選択肢があります。
ワニオ:苦手ですが、普通に接します。
リク:それができると強いですね。
ワニオ:好き嫌いと態度を、完全に連動させる必要はありません。
ミカコ:嫌いな人に笑顔で抱きつけって話じゃない。必要な場面で普通にすればいい。
リク:それなら現実的ですね。
距離は少しずつ調整する
リク:でも、相手から積極的に話しかけてくる場合はどうでしょう。
ミカコ:こっちは苦手なのに、向こうはめっちゃ友達だと思ってるパターンね。
ワニオ:人間関係の温度差です。
リク:ありますね。
ワニオ:その場合、突然ゼロにする必要はありません。
ミカコ:昨日まで一緒に帰ってたのに、今日から完全無視とか?
ワニオ:急ブレーキです。
ワニオ:後続車も驚きます。
リク:人間関係を道路交通にしないでください。
ワニオ:少しずつ調整します。
ワニオ:毎日一緒に帰っていたなら、時々別に帰る。
ワニオ:休み時間を毎回一緒に過ごしていたなら、一人で過ごす時間を作る。
ワニオ:すべての誘いに応じていたなら、断る日を作る。
ミカコ:距離を広げていく感じか。
ワニオ:はい。
ワニオ:人間関係には音量調節があります。
リク:今度は音量。
ワニオ:苦手だからと電源を抜く必要はありません。
ワニオ:少し音量を下げれば快適になる関係もあります。
ミカコ:その例えは結構好き。
リク:距離を置くって、絶縁することではないんですね。
ワニオ:はい。距離は調整できます。
「嫌われないこと」を優先しすぎない
リク:ただ、距離を置いたら嫌われそうで怖いという人もいると思います。
ミカコ:特に学校は噂が早いからね。
リク:「最近あの子付き合い悪くない?」とか。
ワニオ:可能性はあります。
リク:ありますって。
ワニオ:嘘をついても仕方ありません。
ミカコ:まあね。
ワニオ:しかし考える必要があります。
ワニオ:嫌われないために、毎日苦手な人と一緒に過ごす。
ワニオ:これはかなり高額な契約です。
リク:高額。
ワニオ:支払うのは時間と精神力です。
ミカコ:しかも毎月引き落とされる。
ワニオ:はい。解約を検討してください。
リク:急に携帯料金みたいになりましたね。
ワニオ:誰かに嫌われる可能性と、自分が毎日消耗すること。どちらを避けたいか考える必要があります。
ミカコ:全員に嫌われない学校生活なんて、たぶん無理だしね。
リク:嫌われないことを最優先にすると、自分の時間まで相手に合わせることになる。
ワニオ:はい。
ワニオ:学校生活の目的は、全校生徒から好感度100点を獲得することではありません。
ミカコ:卒業条件にないからね。
リク:ではクラスメイト以外はどうでしょう。
リク:次は、先輩や後輩との関係を考えてみましょう。
苦手な先輩・後輩とはどう付き合う?

上下関係があると距離を取りにくい
リク:クラスメイトなら、まだ距離を調整しやすい場合もあります。
ミカコ:問題は先輩とか後輩だね。
リク:特に部活は難しそうです。毎日会ううえに、上下関係もありますから。
ワニオ:学校の人間関係に縦線が追加されます。
ミカコ:縦線。
ワニオ:クラスメイトは基本的に横です。
ワニオ:先輩と後輩には上下があります。
ワニオ:そのため距離を取ろうとすると、「生意気」「感じが悪い」と解釈される場合があります。
リク:単純に「苦手だから関わらない」が難しいんですね。
ミカコ:先輩が苦手でも、練習では指示を聞かなきゃいけないこともあるし。
ワニオ:はい。
ワニオ:その場合は、人間関係と役割を分けて考えます。
リク:役割。
ワニオ:先輩として必要な指示は聞く。
ワニオ:部活のルールは守る。
ワニオ:挨拶もする。
ワニオ:しかし休日まで一緒に遊ぶ必要はありません。
ミカコ:仕事だけする同僚みたいな感じだね。
ワニオ:学生版です。
リク:役割上の関係と、個人的な好意は別に考えていい。
ワニオ:はい。
礼儀と好意は別のもの
ミカコ:でもさ。苦手な先輩に敬語を使うのって、なんか負けた感じがする人もいそう。
リク:嫌いな人に頭を下げたくない、とか。
ワニオ:礼儀は好意の告白ではありません。
ミカコ:それはそう。
ワニオ:敬語を使ったからといって、「あなたが大好きです」という意味にはなりません。
リク:当たり前なんですけど、感情的になると混ざるのかもしれませんね。
ワニオ:はい。
ワニオ:礼儀は自分を守る道具でもあります。
ミカコ:ああ。余計なトラブルを作らないための。
ワニオ:その通りです。
ワニオ:苦手な先輩に必要以上に反抗する。
ワニオ:挨拶をしない。
ワニオ:露骨に嫌な顔をする。
ワニオ:すると本来なかった問題まで追加されます。
リク:自分から戦場を広げてしまう。
ワニオ:はい。敵国を増やす必要はありません。
ミカコ:学校の話なのに戦争始まった。
ワニオ:敬意を払うことと、相手を好きになることは別です。
リク:苦手でも礼儀は守る。それは相手のためだけじゃなく、自分のためでもある。
ミカコ:大人っぽい付き合い方だね。
ワニオ:学生にも使用可能です。
後輩が苦手でも「先輩だから我慢」は違う
リク:逆に、苦手な後輩がいる場合はどうでしょう。
ミカコ:距離近すぎる後輩とか、失礼な後輩とかいるかもね。
ワニオ:います。
リク:ワニオさん、学校生活経験してました?
ワニオ:観察しています。
ミカコ:便利だな、その設定。
ワニオ:先輩になると、「自分が大人にならなければ」と考える人がいます。
リク:面倒を見なきゃ、とか。
ワニオ:はい。しかし先輩は保護者ではありません。
ミカコ:確かに。
ワニオ:何度注意しても失礼な態度を取る。
ワニオ:必要以上に依存してくる。
ワニオ:嫌なことを繰り返す。
ワニオ:その場合まで笑顔で受け入れる必要はありません。
リク:でも先輩として、伝えることは伝える。
ワニオ:はい。
ワニオ:怒鳴る必要はありません。
ワニオ:「それはやめてほしい」と伝えます。
ミカコ:それでも変わらなかったら?
ワニオ:距離を取ります。
リク:やっぱりそこなんですね。
ワニオ:はい。
ワニオ:先輩だからすべて受け止める。
ワニオ:後輩だからすべて我慢する。
ワニオ:どちらも役割を大きくしすぎています。
ミカコ:先輩も後輩も、その前に一人の人間だからね。
ワニオ:上下関係があっても、自分の境界線まで上下する必要はありません。
リク:いい言葉ですね。
ミカコ:今日は水槽から始まったとは思えない。
ワニオ:まだ水槽は捨てていません。
リク:では次は、さらに立場が違う相手です。
リク:苦手な先生とは、どう付き合えばいいのかを考えてみましょう。
苦手な先生とはどう付き合えばいい?

先生にも相性はある
リク:先生が苦手という人も、かなりいると思います。
ミカコ:いるでしょ。話し方が苦手とか、妙に圧が強いとか。
リク:授業は分かりやすいけど性格が合わない、という場合もありそうです。
ワニオ:先生も人間です。
ミカコ:珍しく普通のこと言った。
ワニオ:教師免許を取得しても、人間との相性を消滅させる能力は付与されません。
リク:やっぱりワニオさんでした。
ワニオ:話しやすい先生。
ワニオ:少し緊張する先生。
ワニオ:なぜか苦手な先生。
ワニオ:いて当然です。
ミカコ:先生側にも、たぶん話しやすい生徒と苦手な生徒はいるだろうしね。
リク:そう考えると、先生だから必ず好きにならなければいけないわけではない。
ワニオ:はい。
ワニオ:立場が上の人を苦手だと感じることまで、悪いことにする必要はありません。
ミカコ:ただ、クラスメイトと同じ対応でいいかというと違うよね。
リク:そこが難しいところですね。
正面から戦うことが正解とは限らない
リク:先生と生徒では、どうしても立場が違います。
ミカコ:授業するのも先生だし、部活の顧問だったり、進路に関わったりもする。
ワニオ:大型の動物には、正面から頭突きをしない方が安全です。
ミカコ:先生を大型動物にするな。
リク:でも言いたいことは分かります。
ワニオ:立場に差がある相手と感情だけで衝突すると、自分が不利になる場合があります。
リク:「先生が嫌いだから反抗する」では、問題が余計に大きくなることもある。
ミカコ:正しいこと言ってても、言い方で損することはあるからね。
ワニオ:はい。
ワニオ:例えば納得できないことがあるなら、怒鳴るより質問します。
ワニオ:「どうして自分だけ注意されたんですか」
ワニオ:「このルールはどういう理由なんですか」
ワニオ:感情を投げるのではなく、確認するのです。
リク:相手を攻撃せず、自分が疑問に思っていることを伝える。
ワニオ:はい。
ミカコ:それでも話が通じない先生はいると思うけど。
ワニオ:います。
リク:即答ですね。
ワニオ:人間ですので。
ミカコ:便利だな、人間。
ワニオ:正面から戦わないことは、相手が正しいと認めることではありません。
リク:自分が損をしない方法を選ぶということですね。
ワニオ:その通りです。
「苦手」と「我慢してはいけないこと」は分ける
リク:ただ、ここはきちんと分けておきたいです。
ミカコ:先生が苦手って話と、先生から明らかにひどい扱いを受けてる話は別だからね。
ワニオ:はい。非常に重要です。
リク:繰り返し暴言を言われる。人格を否定される。差別的な扱いを受ける。必要のない身体的な接触がある。
ミカコ:そういう場合に「先生と上手く付き合う方法」を考える必要はない。
ワニオ:耐久力を上げる問題ではありません。
リク:別の先生や保護者、スクールカウンセラーなど、信頼できる大人に相談してください。
ワニオ:できれば、いつ、どこで、何があったのかを記録しておくことも役に立ちます。
ミカコ:一人で先生を説得しようとしなくていいからね。
リク:苦手な人との付き合い方を考えることと、理不尽な扱いを我慢することは違います。
ワニオ:雨の日に傘を差す話と、誰かに水をかけられている話は別です。
ミカコ:同じ濡れるでも全然違う。
リク:前者なら自分で対処できます。でも後者なら、やめてもらう必要がある。
ワニオ:はい。
ワニオ:そして一人で止められないなら、人を呼びます。
ミカコ:そこは遠慮しなくていい。
リク:これは先生だけではありませんね。
リク:クラスメイトや先輩、後輩から嫌がらせを受けている場合も同じです。
ワニオ:その通りです。
ワニオ:次はそこを明確に分けて分析しましょう。
無視・悪口・嫌がらせをされたら「付き合い方」の問題ではない

苦手な人と、傷つけてくる人は分けて考える
リク:ここまで「苦手な人との付き合い方」を考えてきました。
リク:でも、さっきの先生の話と同じで、相手から嫌がらせを受けている場合は話が変わりますよね。
ミカコ:変わる。そこを一緒にしちゃダメ。
ワニオ:はい。
ワニオ:話すと疲れる人。
ワニオ:性格が合わない人。
ワニオ:なんとなく苦手な人。
ワニオ:これらは人間関係の問題です。
リク:では、嫌がらせは?
ワニオ:相手の行動の問題です。
ミカコ:シンプルだけど大事だね。
ワニオ:無視を繰り返す。
ワニオ:悪口を広める。
ワニオ:物を隠す。
ワニオ:SNSで傷つける。
ワニオ:複数人で一人を追い詰める。
ワニオ:これを「相性が悪い」で処理する必要はありません。
リク:苦手な人と上手く付き合えない自分を責める話ではないんですね。
ミカコ:だって相手がやってることの責任まで、自分が背負う必要ないでしょ。
ワニオ:はい。
ワニオ:船に穴を開けられている時に、上手な泳ぎ方を検索する必要はありません。
リク:穴を塞ぐ方が先ですね。
ミカコ:今回は水の比喩が多いな。
ワニオ:水槽から始まりましたので。
「自分にも原因があるかも」と考えすぎない
リク:嫌がらせを受けている人ほど、「自分にも原因があるんじゃないか」と考えることがあります。
ミカコ:何か変なこと言ったかな、とか。
リク:自分がもっと上手く付き合えていたら、こうならなかったんじゃないか、とか。
ワニオ:自分の行動を振り返ることは悪くありません。
ワニオ:しかし原因と責任は分ける必要があります。
リク:原因と責任。
ワニオ:例えば誰かと喧嘩をした。
ワニオ:自分にも言い過ぎた部分があったかもしれません。
ワニオ:それは振り返ることができます。
ワニオ:しかし、その後に相手がSNSで悪口を広めた。
ワニオ:それは相手が選んだ行動です。
ミカコ:「喧嘩したから何をされても仕方ない」にはならない。
ワニオ:はい。
ワニオ:自分に反省する部分があることと、相手の嫌がらせを受け入れることは別です。
リク:これは覚えておいてほしいですね。
ミカコ:全部自分のせいにすると、相手の行動まで正当化しちゃうから。
ワニオ:人間は自分で操作できる原因を探します。
リク:どういうことですか?
ワニオ:「自分が変われば解決する」と考えた方が、世界をコントロールできる気がするからです。
ミカコ:ああ……。
リク:自分のせいだと思う方が、ある意味では安心する?
ワニオ:場合があります。
ワニオ:しかし他人の行動は、完全には操作できません。
ミカコ:そこを認めるのも必要なんだね。
一人で解決しようとしない
リク:では実際に嫌がらせを受けている場合、どうすればいいでしょう。
ワニオ:人を増やします。
ミカコ:人を増やす。
ワニオ:はい。
ワニオ:一対一で解決できない問題なら、一対一をやめます。
リク:なるほど。
ワニオ:担任。
ワニオ:別の先生。
ワニオ:保護者。
ワニオ:スクールカウンセラー。
ワニオ:信頼できる大人。
ワニオ:相談する相手を増やします。
ミカコ:一人に相談してダメだったら?
ワニオ:次の人に相談します。
リク:それでいいんですね。
ワニオ:はい。
ワニオ:最初に相談した人が、必ず正しく対応できるとは限りません。
ミカコ:「気にしすぎじゃない?」で終わらせる大人もいるかもしれない。
ワニオ:その場合、相談を終了するのではありません。
ワニオ:相談相手を変更します。
リク:助けを求めて伝わらなかった時、「自分の悩みは大したことない」と決めなくていい。
ミカコ:相手選びを一回外しただけかもしれないからね。
ワニオ:はい。
ワニオ:鍵が開かない時、家に入ることを諦める人は少ないです。
ワニオ:別の鍵を確認します。
リク:今回はちゃんと分かりやすい例えですね。
ワニオ:ありがとうございます。
ミカコ:褒められてる。
リク:そして可能なら、いつ、どこで、何があったのか記録しておく。
ミカコ:SNSならスクリーンショットも残しておいた方がいいね。
ワニオ:記憶は揺れます。記録は比較的じっとしています。
リク:一人で耐える方法を探すより、状況を外へ伝える。
ワニオ:はい。
ワニオ:嫌がらせを受けている時に必要なのは、付き合い方の工夫ではなく、味方を増やすことです。
ミカコ:そこは遠慮しなくていい。
リク:では最後に、学校の人間関係がどうしてこれほど大きく感じるのか。
リク:そこを分析してみましょう。
学校の人間関係は「世界の全部」に見えやすい

毎日いる場所だから、大きく見える
リク:ここまで分析してきて、もう一つ気になることがあります。
ミカコ:何?
リク:学生の頃って、学校の人間関係がものすごく大きく感じませんでした?
ミカコ:ああ。それはあったかも。
リク:クラスで少し浮いた。
リク:友達と喧嘩した。
リク:先輩に嫌われた。
リク:それだけで、人生全部が上手くいっていないような気持ちになる。
ワニオ:学校にいる時間が長いからです。
ミカコ:単純に?
ワニオ:単純ですが重要です。
ワニオ:朝から夕方まで学校にいます。
ワニオ:部活があれば、さらに長くなります。
ワニオ:そして翌日も同じ場所へ行きます。
リク:自分が長くいる場所ほど、そこで起きることが大きく感じる。
ワニオ:はい。
ワニオ:水槽の中にいると、水槽の壁は見えにくいです。
ミカコ:水槽、戻ってきた。
ワニオ:最初から捨てていません。
リク:つまり、学校の中にいると学校の外が見えにくくなる。
ワニオ:そうです。
ワニオ:毎日いる場所は、実際の大きさ以上に「世界の全部」に見えやすいのです。
「学校なんて狭い世界」は、あまり慰めにならない
ミカコ:でも大人になると分かるよね。
ミカコ:学校って、かなり狭い世界だったなって。
リク:卒業すると会わなくなる人も多いですし。
ワニオ:はい。
ワニオ:しかし学生に「学校なんて狭い世界ですよ」と言っても、あまり慰めにはなりません。
ミカコ:そうなんだよね。
リク:どうしてでしょう。
ワニオ:今、その水槽で泳いでいるからです。
ミカコ:外から「その水槽小さいよ」って言われてもね。
ワニオ:はい。
ワニオ:魚としては、「こちらは今日もここで泳ぐのですが」となります。
リク:確かに。
ワニオ:大人は未来を知っています。
ワニオ:卒業することを知っています。
ワニオ:進学や就職で人間関係が変わることも知っています。
ワニオ:しかし学生本人が生きているのは今日です。
ミカコ:「三年後には気にならないよ」って言われても、明日の教室にはその人がいる。
ワニオ:その通りです。
リク:未来では小さく見える悩みでも、今苦しいなら、その苦しさまで小さいわけではない。
ミカコ:そこは大人側も間違えない方がいいね。
ワニオ:はい。
ワニオ:水槽が小さいことと、水が苦しいことは別です。
ミカコ:今日は水槽を使い切る気だ。
それでも今の人間関係が一生続くわけではない
リク:じゃあ「学校は狭い世界だから気にするな」とは言わない。
リク:でも、学校の外にも世界はある。
ワニオ:はい。両方とも事実です。
ミカコ:今つらいことは否定しない。でも今の関係が永遠だとも思わなくていい。
ワニオ:その通りです。
ワニオ:クラスは変わります。
ワニオ:部活は終わります。
ワニオ:卒業します。
ワニオ:人間関係は思っている以上に動きます。
リク:今、毎日顔を合わせている人とも、数年後には全く会わなくなるかもしれない。
ミカコ:逆に今あまり話してない人と、大人になって仲良くなることもあるしね。
ワニオ:人間関係は固定席ではありません。
リク:学校では席が決まっていますけどね。
ワニオ:比喩の話です。
ミカコ:ワニオが比喩を指摘される側になった。
ワニオ:今いる人たちが、これから出会う人たちの全員ではありません。
リク:それは覚えておいてほしいですね。
ワニオ:同じ教室にいる人は、人生の登場人物ではあります。
ミカコ:うん。
ワニオ:ただし、全員が主要人物とは限りません。
リク:……いいですね。
ミカコ:今日の締め、それでもいいくらい。
ワニオ:では終了しますか。
リク:まだまとめがあります。
ワニオ:そうでした。
ミカコ:余韻を自分で壊した。
リク:では最後に、学校にいる苦手な人とどう付き合えばいいのか。今回の分析をまとめましょう。
まとめ|苦手な人と仲良くなることが正解ではない

リク:では今回の分析をまとめましょう。
ミカコ:学校って、やっぱり人間関係から逃げにくい場所なんだね。
リク:同じクラスなら毎日会います。先輩や後輩なら部活で関わる。先生なら授業を受けることもあります。
ワニオ:人間関係の自動ログインです。
ミカコ:最初の方に聞いた。
ワニオ:重要なので再表示しました。
リク:だからこそ、「嫌なら完全に関わらなければいい」というアドバイスだけでは難しい。
ミカコ:でも、無理に好きになる必要もない。
ワニオ:はい。
ワニオ:苦手な人を好きになる努力より、問題なく付き合う方法を考えます。
リク:挨拶はする。必要な話はする。共同作業なら協力する。
ミカコ:でも放課後まで一緒にいる必要はない。
ワニオ:「仲良くできない」は失敗ではありません。「問題なく過ごせている」なら、それも十分に良い人間関係です。
リク:友達になることだけが、人との付き合い方ではないんですね。
ミカコ:全員友達だったら、それはそれで疲れそう。
ワニオ:誕生日を覚えるだけで一年が終わります。
リク:そこまでしなくていいと思います。
ミカコ:でも、嫌がらせを受けているなら話は別。
リク:はい。無視や悪口、物を隠される、SNSで傷つけられる。そういったことが続いているなら、「自分の付き合い方が悪いのかな」と一人で悩まないでください。
ワニオ:付き合い方を調整する問題ではありません。
ワニオ:味方を増やす問題です。
リク:担任に相談する。別の先生に相談する。保護者やスクールカウンセラーに話す。
ミカコ:一人に伝わらなかったら、別の人に話していい。
ワニオ:相談相手の変更は、相談の失敗ではありません。
リク:一人で耐えることを、学校生活の目標にしなくていいんです。
ミカコ:あと、全員に好かれることもね。
リク:そうですね。
リク:学校にいると、クラスの人間関係が世界の全部に見えることがあります。
ワニオ:水槽の中からは、水槽の外が見えにくいです。
ミカコ:最後まで水槽だった。
ワニオ:しかし水槽の外があることは、知っておいてください。
リク:今つらいなら、「学校なんて狭い世界だから」と無理に小さな悩みにしなくていい。
ミカコ:今苦しいものは、今苦しい。それはそれでいい。
ワニオ:ただし、今の人間関係が一生続くとも決まっていません。
リク:クラスは変わります。部活は終わります。卒業すれば、新しい人にも出会います。
ワニオ:同じ教室にいる人は、人生の登場人物ではあります。
ワニオ:ただし、全員が主要人物とは限りません。
ミカコ:今度こそ綺麗に決まったね。
リク:ですね。
ワニオ:では終了します。
リク:自分で締めるんですね。
ミカコ:まあ、今日はいいんじゃない。
リク:というわけで今回は、学校にいる苦手な人との付き合い方について分析しました。
リク:苦手な人と仲良くできないからといって、学校生活に失敗しているわけではありません。
リク:自分が少し楽に過ごせる距離を探してみてください。



